スッキリしたクセのないサウンドが特徴の低価格コンデンサー・マイク

MARSHALL ELECTRONICSMXL 990

コンデンサー・マイクの低価格化が進んでいる中、反対にある程度値段の張るマイクを購入する人が増えてきているということをよく耳にします。せっかく買うんだから良い物をという考えだと思いますが、そんな中、MARSHALL ELECTRONICSから、なんと11,500円という低価格コンデンサー・マイク、MXL 990が発売されました。低価格のダイナミック・マイクよりもさらに安いくらいの価格でどこまで頑張れるのか? 高いマイクを買おうとしている人も、まずはこのレビューに目を通してみてほしいと思います。

宅録でも扱いやすい
直径20mmのダイアフラムを採用


製品はプラスチック製のケースに本体、それにショックマウントと普通タイプの2種類のマイク・アダプターで構成されています。ケースの中にはウレタン・スポンジが敷き詰められているので、持ち運びの際もよほどのことがない限り問題無いでしょう。本体を手に取ってみると、ずっしりと重量感があり、見た目もきれいなマイクです。高価なマイクに全く負けていない作りで、シャンパン・ゴールドの本体とコネクター部のシルバーの輝きは何とも良い音が出そうな雰囲気です(取りあえず見た目の話ですが)。ショックマウントに関しても、同社の以前のモデルの中には、ちょっと力を入れないと取り付けにくいタイプもありましたが、この製品に付属しているショックマウントはスムーズに取り付けることができました。これだけのパッケージと見た目をすべて収めて、この価格設定というのは信じられない内容だと思います。スペック的にも宅録の人には扱いやすいであろう小さめの直径20mmダイアフラムを採用しており、指向性は単一指向性のみ。最大入力音圧も130dBと、通常使う際には何の問題も無い仕様となっています。もちろんコンデンサー・マイクなので、ファンタム電源が必要なのは言うまでもないでしょう。それでは、一番気になる実際の“音”を聴いてみることにします。

高域と低域の不要部分を抑え
クセが無くナチュラルな音に


まず、パッと聴いたところでは、きれいにまとめられた音だなという印象を受けました。大きく分類すれば、同社製品のほかのマイクと同系列の伝統の音だと言えます。しかし、本機は全帯域にわたってあまりピークが無い感じで、音自体は軽過ぎたり重過ぎたりすることもなく、マイクを使い慣れていない人でもちょうどよい扱いやすい音に仕上がっています。特にコンデンサー・マイクで一番扱いにくい“ボンボン”とした超低域(実際の録音では必要の無い部分)もうまく抑えられており、ウィンド・スクリーンを使わなくても、ボーカル録音時の吹かれによるノイズが気にならなかったほどです。また低価格コンデンサー・マイクによくありがちな、ハイエンドのちりちりとした持ち上がりもこのマイクでは抑えられているので軽い印象もないでしょう。実際に録音してみた印象ですが、ボーカルの場合、先ほども触れたように低域と高域がうまく抑えられているので、何となくマイキングしただけでもうまく録音することができました。ただ、低域が抑えられている分、マイクから離れてしまうと音が軽く感じてしまうので、本機の場合はなるべくオンマイクにセッティングするといいでしょう。他社製のマイクとも比べてみたのですが、その場合もMXL 990はクセがなくナチュラルな印象でした。ほんの若干シビランスが気になるので、ディエッサーなどを用いるとなお良い録音ができるでしょう。次に、アコギを録音してみました。この場合は低域が抑えられている部分が特に有効に作用し、変に低域が持ち上がることなくクリーンな音で録音できました。よくマイキング・テクニックの記事で、サウンド・ホールを狙って録音してはいけないといったことが書いてありますが、ほかのマイクと違いMXL 990ではサウンド・ホールを狙っても、低域が持ち上がらずうまく録音できる場合がありました。あまり鳴らないアコギを持っている人などはチャレンジしてみるといいでしょう。さらに、エレキギターでも試してみましたが、クリーン系のギターではレンジ感やクリア感も含め良い印象でしたが、ディストーション系ではちょっと物足りなさを感じるかもしれません。全体的に言えるのはとてもハッキリ、スッキリした音が録れるということです。ダイナミック・マイクからの移行もスムーズに行えるマイクだと思います。太い音が好きな人にはちょっと物足りないかもしれませんが、録音やミックス・ダウン時に、EQで低音を絞ったりしている人などには最適でしょう。特にオンマイクをお試しあれ!本機は価格では考えられない作りをしているのは事実です。ダイアフラムを包んでいるグリル・カバー(編み目の部分)もきめ細かく作られているし、内部回路的にもFETを使っていたりと、コストを抑えながらも扱いやすいマイクを作りたいという意志が感じられます。とにかく安価なので、2本買ってステレオ録音してみるのもよいでしょう。スッキリとした音が好きな人はぜひ試してほしいマイクです。とにかく、この価格帯の中では一度聴いてみる価値のあるマイクだと思います。
MARSHALL ELECTRONICS
MXL 990
11,500円

SPECIFICATIONS

■作動方式/プレッシャー・グラデュエント・タイプ・コンデンサー
■ダイアフラム/直径20mm、厚さ6μ
■周波数特性/30Hz〜20kHz
■指向性/単一指向性
■入力感度/15mv/Pa
■出力インピーダンス/200Ω
■SN比/80dB以上
■最大入力許容音圧/130dB
■電源/ファンタムDC48V(±4V)
■消費電力/3.0ma以上
■外形寸法/60(φ)×130(H)mm
■重量/400g