手軽に録音が可能なコンパクト・フラッシュ使用の8trデジタルMTR

BOSSBR-864

コンピューターを使用したDAWが一般化し、その技術も数年前とは比べものにならないほどハイスピードで進化を続けていますが、その一方で手軽に作業を行える一体型デジタルMTRも宅録機材の定番として根強い人気を誇っています。僕自身も現在はDAWベースで作業しているのですが、発売当時に予約して買ったROLAND VS-880も“あると便利”なのは確かで、いまだに手放せずに所有しています。このような一体型デジタルMTRの大きな魅力としてその機動性が挙げられますが、今回BOSSからコンパクトで電池駆動も可能なデジタルMTR、BR-864が登場しました。早速チェックしていきましょう。

内蔵マイク装備で素早く録音
USBでコンピューターとのやりとりも可能


まずは概要から。同時録音トラック数は2、同時再生トラック数は8となっていますが、各トラックはフレーズや別アレンジのストックを可能にする8本ずつのV(バーチャル)トラックから構成されており、計64(8×8)トラック分録音できることになります。入力端子はRCAピンのライン入力×2のほかにマイク入力、ギター/ベースを直接入力することができるハイインピーダンス入力を装備。出力端子はRCAピンのステレオ・ライン出力のほかにS/P DIFのデジタル・アウト(オプティカル)もあります。本体の大きさを考えれば無駄のない必要十分な入出力だと言えるでしょう。また本体に内蔵マイクが備えられており、外部機器を接続せずに“思いついたら即録音”ができます。さらに電池駆動(単三電池×6本)も可能で場所を選ばず録音ができ、アイディアが浮かんだときのメモ録音などに即座に対応できます。録音メディアにはコンパクト・フラッシュを採用。付属の128MBカードではHiFi(MT2)モードで約65分の録音が可能で、1GBの大容量のカードでは約520分もの長時間録音ができます(モノ・トラック換算)。ハード・ディスクとは違い、作業時でも本体がとても静かなのも特筆すべき点でしょう。またコンパクトな割にダイアルやスライダー、ボタン類などは大きめで、そのパネル上の配置からも一見して操作性の良さがうかがえます。このようなデジタルMTRの場合、データのバックアップ方法が気になるところですが、本機はUSB端子を装備しており、Macintosh/Windowsへのデータ保存や、トラック・データを本体でWAV/AIFFに変換してコンピューターに保存したり、逆にコンピューターから取り込むことも可能となっています。では実際に操作しつつ詳しい機能を見ていきましょう。まずは録音ですが、操作は至って簡単。録音先のトラックと、入力ソース(MIC、GUITAR、LINE)をパネル上のボタンで選択し、RECボタンを押すだけです。またMICとGUITAR両方を選択すると、この2つのソースを任意のトラックへ同時に録音可能です。録音時には同社でおなじみCOSMテクノロジーを駆使したインサート・エフェクトを使用できます。この場合、GUITARを選択するとアンプ・モデリングなどのギター用エフェクトに切り替わり、MICを選択するとコンプやダブリングなどのボーカル用エフェクトになる、といったように入力ソースによってエフェクトも自動的に変化するので、用途に合ったものを即座に見つけ出すことができます。各トラックに独立して備えられたEQはHiとLoの2バンド・シェルビング・タイプを用意し、ループ・エフェクト(センド・エフェクト)はコーラス/ディレイ/ダブリングのいずれかと、リバーブの2系統を選ぶことができます。

オリジナルのドラム・キットを作成する
サンプラー的な機能も装備


本機の特徴的な機能としてリズム・ガイド機能があります。最近は簡単なリズム・ガイドを備えた機種も多いですが、本機はちょっと違います。さまざまなジャンルのドラム・キットが用意され、オリジナル・パターンも作成できるというだけではなく、なんとトラック内に録音した音や、USB端子を使ってコンピューターからインポートしたWAV/AIFFのデータを使ってオリジナルのドラム・キットを作成できるのです。そうして作り上げたパターンを組み合わせ、リズム・アレンジを作ることもできます。これはもうサンプラーとリズム・マシンが内蔵されているようなもので、リズム・ガイドと呼ぶにはもったいないくらいです。個人的に気に入ったのはそのオリジナル・パターンの作成方法。同社の往年の名機Dr.Rhythmシリーズを思わせるマトリクス方式で、ステップ入力がとても簡単に行えます(もちろんリアルタイム入力も可能)。またコンピューターからスタンダードMIDIファイルを読み込み、リズム・パターンを作成することも可能です。使用後の率直な感想としては、無駄を省いてコンパクト・サイズに収めつつも、“こんな機能があったら”という要望にこたえた、まさにかゆいところに手が届く気の利いた一台だと思いました。内蔵マイクや電池駆動という機動性を生かして、ベッド・ルームや屋外など場所を選ばずどこでもレコーディングをすることができるのはとても魅力的です。また、USB端子を使ってコンピューターとの連携も可能で、メモ録音を本格的なレコーディングへと発展させることができる柔軟性も持ち合わせています。これが手元にあれば非常に重宝することは間違いないでしょう。

▲リア・パネル。左からDC IN、電源スイッチ、USB端子、MIDIアウト、フット・スイッチ/エクプレッション・ペダル、S/P DIFデジタル・アウト(オプティカル)、ライン・アウト(RCAピン)、ライン・イン(RCAピン)、MIC(TRSフォーン、XLR)、GUITAR/BASS(フォーン)が並ぶ

BOSS
BR-864
オープン・プライス(市場予想価格/50,000円前後)

SPECIFICATIONS

■サンプリング周波数/44.1kHz
■同時録音トラック数/2
■同時再生トラック数/8
■周波数特性/20Hz〜20kHz(+1/−3dBu)
■外形寸法/322(W)×69(H)×225(D)mm
■重量/1.65kg(電池除く)