高いコスト・パフォーマンスを誇る本格的ドラム用マルチマイク・セット

SAMSONDK-7

米国SAMSON社は1980年設立の音響機器メーカーで、ワイアレス・マイクなどに定評がある。そんな同社が7本組ドラム用マイク・セットを発売した。宅録愛好者やアマチュアのバンドマンたちにとって、マルチマイクによる生ドラム録音は試してみたくても、必要本数とその購入コストに悩むところであろう。そんな需要に福音となる驚きの低価格マイク・セット、その実力はいかに?

収納ケースが付属
7本のマイクを簡単に携帯


近年、アマチュア向け宅録機器のスペックはなかなか高いが、マイクもここ数年で低価格ながら高音質なものが多数発売され、本製品もそのカテゴリーに入るものだ。DK-7は樹脂製ケースに収まっており、携帯性が良さそうだ。ケースを開けるとマイクが整然と並べられ、その内訳はバス・ドラム用Q Kick×1、スネア用Q Snare×1、タム用Q Tom×3、トップ(シンバル)用のC02×2で計7本。ハイハット用マイクは特に用意されてないが、C02でカバーできるだろう。すべてのマイクがコンパクトで軽量なため、非常に取り回しが良さそうだ。順に見ていくと、Q Kickはダイナミック・マイクで狭指向性。SHURE Beta52Aを2回り小型軽量化したような外観だ。Q Snare、Q Tomも共にダイナミック・マイクで狭指向性。この2機種は外観が全く同じであるが、周波数特性カーブは異なる設計になっている。C02はスティック型のコンデンサー・マイクで単一指向性。外観はAKG C451Eに似ており、カプセルもネジ式で取り外し可能となっている。

各マイクともすっきりしたサウンド
的確な指向性でカブリが少ない


さて、早速試聴の準備に移ることにしよう。会場はソニー・ミュージックスタジオで、プリアンプにはNEVE 88Rを使用した。一般的なドラム・セットに各マイクをセッティング。Q Kick、C02はマイク・スタンド対応で、自由なマイク・アレンジが可能でQ Kickはバス・ドラムの正面から中へ突っ込んでのセッティング。そのほかビーター側を狙う場合にも小回りが利きそうだ。Q Snare、Q Tomは専用マイク・ホルダーが固定装備されており、スネアやタムのリムにクリップ装着する。マイク・セッティングを容易かつ迅速に行え、スタンドや設置スペースが十分に確保できない場面での録音やPAには助かる。ただ、クリップ式ホルダーでは打面への角度調節が上下のみで、距離設定も可動幅は狭い。マイク・アレンジにおける制約感は否めないだろう。さて、比較試聴用にも別途マイクを立てておくことにする。バス・ドラムにAUDIO-TECHNICA ATM25、スネアにSHURE SM57、タムにSENNHEISER MD-421、トップにAKG C451EBをそれぞれ同様にセッティングしてみた。実際に音を聴いてみよう。最初の印象は最近のマイクの割に出力レベルが低いというもの。しかしノイズ・フロアは比較的低く、ゲインをかなり上げても気にならない。全体的な音の印象はすっきりしたものだ。また、指向性がシェイプされておりカブリは最小限に抑えられている。Q Kickはバス・ドラム正面の穴から10cm程突っ込んでみた。ATM25に比べさらにアタック感が強く、ロック系キックのピーク/ディップ・ポイントが、EQ無しで得られる。逆に50Hz辺りの重低音は少々不足気味に感じた。Q Snareのキャラクターはかなりすっきりしており、ピークは3〜5kHz辺りにある。SM57に比べハイ上がりの印象で明るい傾向。ただ、胴の深いスネアの鳴りをとらえるには少々難があるかもしれない。Q Tomはタムタムとフロア・タムにセッティング。タムの胴鳴りをカバーする狙いで設計されているのか、200Hz近辺が膨らんでいる。少し過剰な感じはあるが、MD421と異なる個性的なトーンを持ち、“太い”音として積極的な音作りができそうだ。C02はシンバルやハイハットの音色を特徴付ける8〜10kHzが強調され、また100Hzから下に自然なロールオフ・カーブを持っており、トップ用マイクとしては扱いが手軽だ。C451EBに比べ15kHz以上の空気感が少ない気もするが、“ハイフォーカス・カーディオイド”とあるように、トップ・シンバル2枚のカブリはC451EBより少なかった。C02の本キットにおける位置付けはトップ・シンバル、ハイハットなどの金もの用だが、アコギやピアノのステレオ録音など応用範囲は広そうだ。ほかのマイクも同様に、名称にとらわれず自由な発想でいろいろな楽器に試したいものと言える。冒頭でも述べたようにDK-7はアマチュアの生ドラム録りに“福音”となる製品だろう。特にロック/ポップス系バンドのデモ制作、バンドPAなどには真価を発揮するはずだ。何より優秀なコスト・パフォーマンス、取り回しの良い携帯性こそが本製品最大のアピール・ポイントと言えよう。
SAMSON
DK-7
Q Kick:7,100円
Q Snare:5,200円
Q Tom:14,600円(3本)
C02:14,800円(2本)
39,800円(セット)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/【Q Kick/Q Snare/Q Tom】50Hz〜16kHz、【C02】40Hz〜20kHz
■感度/【Q Kick】−62dBV/pa、【Q Snare/Q Tom】−62dBV/pa、【C02】−40dBV/pa
■最大音圧レベル/【Q Kick】1147dB、【Q Snare/Q Tom】133dB、【C02】22dB(A weighted IEC/DIN651)
■外形寸法/【Q Kick】φ51×138mm、【Q Snare/Q Tom】φ38×98mm、【C02】φ22×150mm
■重量/【Q Kick】370g、【Q Snare/Q Tom】150g、【C02】170g