3つのノブによる感覚的なコントロールが可能なコンパクト・マルチエフェクター

ALESISIneko

僕は自宅スタジオのスピーカーもALESIS製品を使っていて結構お世話になっております。デザイン的にALESIS製品ってカッコいいので、楽器屋でいつも触りたくなってしまうんですよね。今回リリースされたこのコンパクトなマルチエフェクターInekoも、オシャレなデザインでグッときます。では気になる中身を紹介していきましょう。

マス目に並ぶエフェクトを選択
3つのノブで感覚的にエディット可能


箱を開けてみて最初の印象は、めちゃめちゃコンパクト!というもの。片手の手のひらでつかめちゃうぐらいの小ささです。本機には電源スイッチが装備されてなく、合理的なコスト・ダウンが海外メーカー製品っぽいですね。本体の表面には表のように縦8、横6で48のマス目があり、マス目の1つ1つに各エフェクターの名前が書き込まれ、縦横のランプでどのエフェクターが起動してるかが一目で分かるようになっています。その表のパネルの下には、エフェクト選択を行うための下方向と右方向に進められる2つのPROGRAMボタン、さらにエディット用のA、B、C、3つのノブ、エフェクトをスルーさせるBYPASSボタンが並んでいるだけ。ややこしいものは一切無く、説明書が要らないぐらい簡単な操作体系になっています。各エフェクトにはエディットできる3つのパラメーターが用意され、マス目のエフェクト名の下にプリントされています。例えば、左1番、上1番のHALL(リバーブ)では、左からMIX、DECAY、COLORという具合。それぞれ順にA、B、Cの各ノブに対応し、それらを感覚的にいじくってリバーブの効きをコントロールすることになります。

リバーブやディレイの効きは良く
ダンス系サウンド向きプログラムも搭載


ではそれぞれのエフェクターを試してみることにしましょう。特に表示はされていませんが、エフェクトの傾向は、縦軸のくくりで6種類に分けられています。左からReverb Effects(第1ブロック)、Delay Effects(第2ブロック)、Pitch Effects(第3ブロック)、Filter Effects(第4ブロック)、MISC. Effects(第5、6ブロック)といった具合です。第1ブロックのReverb EffectsにはHALL、VOCAL、VOCAL PLATE、DRUM ROOM、SPACE、TRASH CAN、GATE、REVERSEが用意されており、どれも大胆な効き方がします。ノブAは原音とエフェクト音のバランスを調整するMIXに対応しているのですが、右に回しきるとほとんど原音が聴こえないぐらいの残響音で、ずーっと遠くに聴こえてしまうようなかかり具合が気持ち良いです。特にREVERSEはリアルタイムで送られてきた信号を無理やり逆にすることになるのでかなり変わった効果が得られ、面白いニュアンスです。第2ブロックのDelay EffectsはほとんどがMIX、DELAY、FDBK(フィードバック)の3つの基本的なパラメーターで構成され無駄が無いって感じです。ディレイ・タイムを試してみたところ最大が700msecぐらいで十分な長さで対応してると思います。フィードバックは上げていくとあるレベルから自己発振して“ビィィィーン”と唸ったりするのでカッコいいです。一度発振したら鳴りっ放しで元に戻らない製品もよくあるのですが、本機はノブを戻せばちゃんとおさまるので、この辺りは重宝しそうです。例えば、簡単なリズムを通してDELAYを左の方に回しショート・ディレイにし、FDBKを右に徐々に上げていくと、すぐに発振し始め、ちょっとグシャーっとして感覚が遠のく感じで鳴り響きます。そして、FDBKを戻すとまたもとのノリに落ち着くという効果が感覚的にできてしまうわけです。第3ブロックのPitch Effectsではフェイズ系やフランジャー系、コーラスなどがあり、Reverb/Delay Effectsに比べ、意外と上品な効き方をするものでした。単純なリズムにかけると、はやりのエレクトロニカっぽい渋目で繊細な音を簡単に作れてしまえそうです。第4ブロックのFilter Effectsもマルチエフェクターにしては十分すぎるぐらいのクオリティがあります。ニュアンスの異なるエフェクトが8種類用意され、ノブをぐりぐり回せば、いわゆるフィルターの醍醐味が十分味わえます。第5、6ブロックは先の4ブロック以外の、これまた使えるエフェクトが多くあります。中でもRMS LIMITERは、“ムチィィ”という感じの効きで、ダフト・パンクのサウンドのような後ろノリのコンプ・サウンドが容易にできました。さらに、GRINDERやFUZZはデイストーションのごとくビリビリ歪んでくれますし、RING MODやVOCODER、レコード・ノイズを出すREC NOISEというものまであります。全体的に昨今のクラブ/ダンス系のサウンド作りをかなり意識したセレクトだと思います。何しろコンパクトで持ち運びは容易なので、DJプレイに持ち込みディスコ・ミキサーに突っ込んでリアルタイムでプレイするなどで重宝するのではないでしょうか。さらにエフェクトの効きは大胆で音楽制作で十分使えそうですね。この価格帯でこれだけ“使える!”エフェクターを内蔵してる製品は無いので、持っておきたい手軽な1台ですよ。また、これまでの機材より感覚的に大胆に操作できる製品だと思います。
ALESIS
Ineko
35,000円

SPECIFICATIONS

■最大入出力レベル/+10dB(7.78Vrms)
■ダイナミックレンジ/95dB
■周波数特性/20Hz〜20kHz(±0.1dB)
■AD/DA/24ビット/44.1kHz
■信号処理レート/28ビット アレシスDSP
■外形寸法/146(W)×140(D)×45(H)mm
■重量/380g