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増幅部に真空管を使用したバランスの良いコンデンサー・マイク

SEIDEPC-VT3000

リーズナブルなマイクが近年多く発売されているが、プロ・レベルでも十分に使えるクオリティの製品が多いことにはいつも驚かされる。今回紹介するコンデンサー・マイクのPC-VT3000も10万円を切る価格で、しかも増幅部に真空管を使用しているというから大変興味深いモデルだ。

9段階の指向性選択が可能
安定感抜群のショックマウント


到着した梱包を開けてみると、専用ハード・ケースの中にすべて収まるようにマイク本体、ショックマウント・サスペンション、115V/230V切り替えスイッチ付きの専用電源ユニット、ACケーブル、専用接続ケーブル、説明書がある。ケースはアルミ製の頑丈な作りになっているので、保管する際はもちろん、自宅から持ち出す際に便利でとてもありがたい。セット内容で一番感心したのは付属のショックマウント・サスペンションの作りだ。骨組みとゴムの作りはホルダーよりもひと回り太くガッチリと作られていて、見るからに不安はない。マイクへの取り付けは“挟んでパチン”というタイプではなくマイクのボトムに直接ねじ込む方式で、装着時の安定感は抜群に良い。マイク本体はAKG C12を思わせるような形状で、ゴールドのスクリーン・ネットと文字デザインに目を奪われる。なお、PC-VT3000は電源ユニットにあるノブで9段階の指向性選択が可能だ。また、PC-VTシリーズには3000のほかに2000(78,000円)があり、大きな違いは指向性をマルチにできるか否かだ。PC-VT2000の方は単一指向性の機能だけにすることでさらにコスト・パフォーマンスを高めたモデルで、スクリーン・ネットと文字レタリングの部分がシルバーになっており、筐体の型番は外見で判別可能だ。では、実際に指向性切替が可能なPC-VT3000を試聴していこう(最後にPC-VT2000との聴き比べもしてみたい)。実は僕の元にはメーカーからの詳細データがなかったのだが、生産国や詳細スペックが分からないことで妙な先入観がなくテストに望むことができた。さて、ケーブルのセッティングが済んだらパワーを入れて真空管が安定するまでヒートアップする。ビンテージ・モデルだと最低でも30分は待ちたいところだが、これはすべてが新品であるから10分も待てば使用できる状態に安定した。ただし、実際のテストは回線チェックやボーカリストとの打ち合わせなどもあって30分ほど経過した後に行っている。

近接したセッティングでは
前に出てくる迫力のサウンドを実現


テストに使うマイクプリはNEVE 1073、リミッターはUREI 1176。これらを直結していよいよ音質チェックだ。まず、ノーマルな単一指向にセットして女性ボーカルを録音してみよう。指向性は電源ユニット側で切り替えられるので、マイク側にはスイッチ類は一切無い(ローカット・スイッチと出力レベル切り替えスイッチも無いので必要に応じてプリ側で調節してほしい)。新品だけにS/Nはとても良く、真空管マイクらしい温かみのあるサウンドが出てきた。この真空管独特の質感にはいつも感動するが、サウンドの傾向はC12とNEUMANN U47のオイシイ部分を合わせたような感じである。ただ、キャラクター的にはC12に近く、中低域がやや膨らんだ印象を受けるが、中高域もしっかり出ていてバランスがとても良い。レスポンスが早く、ボーカルの輪郭もぼやけないで気持ちよく自然に表現してれるので驚いた。次に男性ボーカルを試してみたのだが、アタックのある力強い音で録音できた。さらに近接したセッティングでも十分な低音効果が得られ、息の多いささやき系の歌では子音は強調されずにスピーカーから前にグッと出てくるような迫力のあるサウンドだ。アコギでも使用してみたのだが、コード・ストロークだと低音部の倍音が少し濁った感じになるので、若干EQでの処理が必要になるだろう。しかし、ブーミーで嫌な歪みはないので後処理はしやすい。アルペジオやガット・ギターでのソロは繊細な弦のタッチも確実にとらえることができ、すぐ目の前で弾いているようなリアルなサウンドが得られた。指向性の違いによる周波数レスポンスに関しては、双指向性において中低域が強調されているように思えたので、太い音で録音したいときに試してみるとよいだろう。単一指向では左右のレンジが若干広い印象で、狭いブースでは反射音の回り込みには多少気を使った方がよさそうだ。最後に単一指向性のみのPC-VT2000を試聴してみたが、ライン出力はPC-VT3000より5dBほど高い。ダイナミクスの向上も感じられたが、これは恐らく電源ユニットの回路を単一指向性だけにすることでシンプルになり、微妙な差で音質が変わっているのだろう。両者ともTUBE-TECH MP1Aなどの真空管マイクプリとも相性も特に悪くない。使用後、マイク本体の熱をチェックしてみたが、手で触っても熱はほとんど感じられず、すぐにケースにしまっても問題はなさそうだった。スタジオ定番のチューブ・マイクなどと比べると、全体的に多少荒っぽい音になるのが惜しいと思ったが、細部に渡ってとてもしっかりとした奇麗な仕上がりになっている。そのうえ基本的な音質は良く、セールス・ポイントを随所に実感できた本製品に対する僕の好感度は高い。この価格ならペアでそろえておいても損はないだろう。
SEIDE
PC-VT3000
88,000円

SPECIFICATIONS

■ 指向性/単一・双・無指向性
■ 周波数特性/20Hz〜20kHz
■ 出力インピーダンス/≦350Ω
■ 等価ノイズ・レベル/≦18dB
■ 感度/16mV/Pa(−36±2dB)
■ 最大音圧/135dB
■ 外形寸法/48(φ)×220(H)mm
■ 重量/680kg
■ 付属品/電源ユニット、ACケーブル、接続ケーブル、ショックマウント・サスペンション、ハード・ケース