シンバル、アコースティック・ギターの録音に最適なペア・コンデンサー・マイク

RODENT5

読者の皆さま初めまして。OMEGA SOUND小谷と申します。今回初めてNEW PRODUCTSの欄に参加させていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。

今回レポートさせていただくのは、RODE NT5というペンシル・タイプのコンデンサー・マイクです。以前にこの欄で紹介されていたNT4がステレオ・マイクであったのに対して、NT5はマッチング・テストが行われて出荷されているペア・マイクなのでした(2本1組)。スペックはというと、周波数特性が20Hz〜20kHz、指向性が単一のみ、最大SPLが143dBというふうになっております。気になるお値段をご紹介すると、ペアで42,000円であります。……う〜む安いですなあ。ステレオ・マイクと同様に、ペア・マイクというのは一般的にとてもお高いもので、なかなか手が出ないのですが、このお値段ならお手軽です。常にコスト・パフォーマンスの高い製品を世に送り出しているRODEのことですから、このNT5にも非常に期待が持てます。早速チェックしてみましょう。

素直で色付けが少なく
現場で重宝するキャラクター

まずボディを見ると、ローカット・スイッチもPADスイッチも付いておりません。これってどうかなあ……と思いましたが、“余分なものが付いていないのは良いことなのだ、マイクプリの方で処理すればいいのね”と納得することにしました。手に取ってみると、小ぶりながらなかなか高級感のある堅牢な造りで、本当に42,000円かしら?と思える外見です。マイク・ケースもしっかりとしたものが付いていて、取扱説明書にシリカゲルの再生法まで書いてある親切さ。感心であります。

さて、ペンシル・タイプのコンデンサー・マイクといえば、ドラムのオーバーヘッド、あるいはアコ−スティック・ギターの収録に使ってみたくなります。ちょうど、ロック系のバンドでアコ−スティック・ギターの録りがあったので、NT5を使ってみました(マイクプリはFOCUSRITE ISA110を使用)。低音弦を中心にしたフレーズとストロークという演奏でしたが、とても素直で色付けの少ない印象でした。実際には中域(3〜4kHz辺り)にピークのある感じなのですが、やたらと高音の伸びるマイクよりも、原音に忠実な印象で、実際に近距離で聴いたギターに近い音を表現してくれます。きらびやかな響きや空気感には欠けるものの、エッジの効いたガッツのある音で、多少のざらつき感もISA 110のEQで16kHz辺りを2dBくらい持ち上げてやると、スムーズになりました。特に低音弦を使ったフレーズが魅力的で、ピックのこすれる音がとてもいけてる感じというか、ロックっぽい印象です。古くて死んでしまった弦の響きや、普段エレキを主にプレイしていて音量の出ないプレイヤーの演奏もそれなりに収録できそうで、これは現場の人間にはありがたいキャラクターだと言えるでしょう。

コンプやEQの助け無しでも
アタック感の強いシンバル音

さて、翌日はギター・ポップ系のバンドのリズム録りがあったので、ドラムのオーバーヘッドにNT5を使ってみました。普段はFOCUSRITE Green 1にAKG C414B-TL II、というのがうちの定番セッティングなのですが、マイクプリはそのままでNT5を使ってみました。ごくごく普通の位置にNT5を仕込み、Green 1のローカット・スイッチを入れました。フェーダーを立ち上げてみると、非常に映像的な印象というか、黒バックに金色のシンバルがくっきりと浮き出て、しかもその厚みまで手に取るように分かる感じ……これは今までに無い世界観で、とても感心してしまいました。SABIAN製とZILDJIAN製のシンバルの音の違いを、ここまではっきりと表現できるということには本当に驚かされました。ドラム・キットの定位もくっきりしていてクリーンな印象です。タム類の低音感や、キット全体のニュアンスをとらえることについてはC414に譲るとしても、“シンバルを録るのです!!”と言い切った場合、NT5は非常に魅力的なマイクであると思われます。

従来のオーバーヘッド用マイクで、高域にピークのあるものは、きらびやかでシンバルのサスティンを美しく表現しますが、もう少しパワフルなアタック感が欲しいと思うことがあります。例えばラウド系のバンドのミックスをするとき、L/Rに振り切ったバッキング・ギターのレベルを上げていくと、シンバルはそのアタックの部分よりも“シャーン”という余韻のみが生き残ります。コンプやEQの助け無しでガッツのあるシンバルが録れるということはとてもありがたいことなのですな。グラインド・コアやメロコアなどの非常に速いテンポの曲でドラムを収録する場合、シンバルのアタックが弱くなりがちですが、そういうときにもNT5は“お助けマイク”になってくれそうです。

さてその後、ボーカルの録り、シェイカー等振り物の録りにもNT5を試してみましたが、アコースティック・ギターやシンバルについて覚えたほどの突出した感触を得ることはできませんでした。まあ、そこまでをこの価格で求めるというのも欲張りというものかもしれません。個人的にはライド・シンバル、ハイハットにも使ってみたいマイクです。皆さまもぜひ一度お試しを♪

RODE
NT5
42,000円(2本1組)

SPECIFICATIONS

■指向性/カーディオイド
■周波数特性/20Hz〜20kHz
■出力インピーダンス/250Ω
■ダイナミック・レンジ/>128dB
■最大出力/+13.9dBu
■最大SPL/+13.9dBu
■外形寸法/20(φ)×118(H)mm
■重量/1.8kg(マイクのみ100g/1本)