フラットでナチュラルな特性が魅力の密閉型2ウェイ・パワード・モニター

NHT PROM-00

モニター・スピーカーとしてはNHT PROは比較的新しいブランドであるが、NHT自体はホーム・オーディオのメーカーとして1986年からの歴史がある。NHT PROには幾つかのラインナップがあるが、今回、比較的小型のパワード・モニター・スピーカーであるM-00を試聴する機会が得られたので、その機能とサウンドの印象をお伝えすることにしよう。

AUTO POWERスイッチなど
ユニークかつ実用的な機能を装備


NHT PRO M-00の外観は全体的につや消し黒の仕上げで、どこに置いても違和感の出にくいモニターの王道的とも言えるデザインだ。サイズもかなり小型でプライベート・スタジオにもフィットしそうである。アルミとFRPを組み合わせた構造のキャビネットは非常に頑丈そうで、たたいてみてもソリッドな感じの反応が返ってくる。エンクロージャーの剛性が相当高そうなので、置く場所についても許容範囲が広いだろう。またスピーカー台などにも苦労しなくて済むはずである。防磁対策もされているようなので、AV機器などとの共存でも問題が出にくそうだ。ユニットはウーファーが115mm、ツィーターは25mmのソフト・ドーム型という構成になっている。ソフト・ドーム・ツィーターはむき出しになっていて、いかにもモニター・スピーカーといった趣だ。アンプやネットワーク構成、クロスオーバー周波数は公表されていないが、出力は75W(RMS)で音圧のピークは111dB SPLとなっている。ニアフィールド・モニターとしての通常の使用範囲では十分な出力と言えるだろう。カタログ・スペック上では周波数特性はかなりフラットな特性を掲げている。エンクロージャーは前述の通りアルミとFRPを組み合わせた構造だが、このクラスとしては珍しく密閉型となっている。密閉型の場合、バスレフに比べて豊かな低音を得るのが難しいとされているが、反面フラットな特性を作りやすいと言える。どちらの方式も一長一短だが、M-00はよりフラットな特性を得ることに重点を置いているようだ。いずれにせよ、その結果は試聴の方に回そう。リア・パネルは比較的すっきりとしたものとなっている。入力はXLR、TRSフォーン、RCAピンという構成になっているので、およそどんなケーブルでも接続可能だ。また、レベルも+4/-10dBが選択できるので、民生用/プロ用を問わずいろいろな機器を接続できるだろう。これらの入力同士はパラになっていて、例えばXLRで入力したものをフォーンで送り出す、といったことも可能だ。これはM-00をパラで使用するときなどにも使える。また、M-00にはユニークな機能が幾つか備えられている。POSITIONスイッチはNF/MF、つまりニアフィールド/ミッドフィールドを切り替えるものだ。これは聴く位置によって高域特性を補正するもので、NFで1m以内、MFで2〜3m離れたリスニング・ポジションを想定している。早い話がニアフィールドのときは相対的に3kHz以上の高域を最大で3dBほどカットして、距離で違いの出る高音の聴こえ方をコントロールしようというものらしい。また、AUTO POWERスイッチは無信号を10分間検出すると自動的に電源がスタンバイ状態になってくれるいうものだ。言ってみればパソコンの省電力機能みたいなものだろう。

密閉型を利用した低域と
スピード感のある高域


次に一番肝心なサウンドについてご報告することとしよう。今回はリファレンスとして定番とも言えるYAMAHA NS-10M Studioを用意した。まず全体的な印象だが、非常にフラットなサウンドだ。取りあえず音にうそはないといった感じである。ピークやディップを無理に抑え込んだ印象もなく、非常にナチュラルである。NS-10M Studioと切り替えても音質ががらりと変わることなく似た傾向のサウンドで、エンクロージャーの小ささを感じさせない鳴りだ。音圧をかなり上げていっても聴感上の歪み感は少なく、クリアなサウンドがキープされる。また、ニアフィールド・モニターで気になる無音時のノイズもほとんど感じられない。定位もツィーターがセンター配置のせいか安定感がある。音域ごとに感想を言わせてもらうと、まず低音が意外と出るのに驚かされる。密閉型だとバスレフのようにローエンドで低域をブーストするということができず、だらだらと減衰した特性になるのが一般的だが、M-00の場合、ある程度量感も確保している。むしろローエンドを密閉型のメリットを生かして伸ばしているようにも思える(低域を補いたい場合はサブウーファーのS-00もラインナップされている)。中域はそつのない感じで、どのようなソースでもナチュラルに鳴ってくれそうだ。高域はNFモードでちょっと派手に感じる瞬間もあったが、エージングすればちょうど良いのかも知れない。スピード感があるサウンドだ。NHT PRO M-00は非常に小型ながらフラットかつナチュラルで、安定感のあるサウンドが特徴だ。設置場所を選ばず値段も手ごろなので、このレベルのサウンドを得るためにそれなりのパワー・アンプとスピーカー・システムを組み合わせるよりも合理的だと言えよう。プリプロ・ルームやハイクオリティなモニターを求める小規模なプライベート・スタジオなど、いろいろな場面で活躍してくれそうなパワード・モニターだ。
NHT PRO
M-00
100,000円(ペア)

SPECIFICATIONS

■ スピーカー構成/115mmペーパー(ウーファー)、25mmソフト・ドーム(ツィーター)
■ アンプ出力/75W(RMS)、150W(ピーク)
■ 残留ノイズ/<20dB SPL(A weighted@1M)
■ THD@90dB SPL/<1.0%(100Hz〜10kHz@1M)
■ 外形寸法/230(H)×145(W)×185(D)mm
■ 重量/6kg(1本)