ビンテージ・フィルター系をモデリングしたストンプ・ボックス第4弾

LINE6FM4

もはやミュージシャンやエンジニアにとっては説明の必要がないほどに浸透しているLINE6社の製品。読者の方々でもAmp Farm、Echo Farmといったプラグインをはじめ、Amp Farmのハード版とも言えるPodなど、LINE6製品を試したことのない人の方が少ないのではないでしょうか。そのLINE6が今回送り出してきたのは、DL4、MM4、DM4という同社が誇るプラグインとは別の代表ラインナップであるストンプ・ボックス・シリーズの第4弾です。その名もフィルター・モデラーFM4。同シリーズをすべて所有している筆者としては、早速この注目の新製品をチェックしないわけにはいかないでしょう。

エンジニアにとっての
ストンプ・ボックス・シリーズ


エンジニアにとって、機材とはどんな意味を持つものでしょうか。レコーディングのプロセスにおいて、エンジニアはマイクやレコーダーなど数多くの機材を使い分けて、つまり楽曲のカラーをより一層際立たせるために機材の選定を行います。その中でもエンジニアそれぞれに心のよりどころとでも言うべき、いつも安心感を与えてくれる機材というものがあります。どんな状況でも必要なサウンドのクオリティを維持してくれる機材......例えば筆者にとってのAKG C12やB&Kのマイク、さらにはNEVE 1081マイク・プリアンプ等がそういう部類の機材に入るでしょう。


一方、その機材を使うことによって新しい発見をもたらしてくれる製品も存在します。それが筆者にとっては、LINE6のストンプ・ボックス・シリーズDL4とMM4でした。特に、モジュレーション・モデラーMM4のOPTO TREMOLOは、筆者にミックス時における空間処理の新たな方向性を示してくれたプログラムでした。


ストンプ・ボックス・シリーズは、往年の名機と呼ばれる機材やペダル・エフェクターをモデリングしたデスクトップ/フット・タイプのエフェクターです。もはや入手困難で、しかも安定した動作を求めることも難しくなったひと昔以上前のエフェクターが、現在のモデリング技術によって復活し、また第一線に戻ってくるチャンスを得たことがこのシリーズの最大の功績なのです。


定評あるモデリング技術による
16種類のフィルター系プログラム


今回のフィルター・モデラーFM4にも、これまでのシリーズでその完成度を証明済みのLINE6の高いモデリング技術により、16種類のフィルター系プログラムが収められています。例えばMU-TRON III、OBERHEIM VCF(Voltage Controlled Filter)などの貴重なビンテージ・ワウ、そして最近のZ-VEX Seek Wahなどのペダル・エフェクターから、ELECTRIX Filter FactoryやOBERHEIM Synthesizer Moduleといったシンセ・フィルター、ボコーダー、さらにはKORGやROLANDのギター・シンセまで、今でも人気の高いフィルター系エフェクターを中心にデジタル・モデリングされているのです。特にVCFのモデリングは、オリジナルを大事に使ってきた筆者としては、とてもうれしい限りでした。あの下品なタッチ・ワウがプログラムされていないことこそ残念に思ったものの、ペダル・エフェクターから出てきているとは思えないサンプル&ホールド・フィルターの音色は見事なまでに再現されていました。またギター・シンセのプログラムも、誤動作が無く非常に使いやすい上に、モデリングされた波形も即戦力になる音が収められています。


ミュージシャンだけでなく
エンジニアもミックスで使えるツール


本シリーズでモデリングされる元となったビンテージ・エフェクター群は、不安定さゆえの音色的な利点もあったとはいえ、やはり再現性に欠けることから、録音の時点でかけ録りするか、もしくはミックスで使う場合も音が決まった時点で別トラックに録っておく必要がありました。これらの使い勝手の問題を、ストンプ・ボックス・シリーズは一気に解決してくれたわけです。ほかにもビンテージだから仕方ないと諦めていたノイズの問題も、このモデリング技術によって解決できていると言えるでしょう。ノイズの大小は、エフェクトの使い方をも左右します。特に、FM4にプログラムされているフィルター系のエフェクトは、もともと大胆な使い方を基本としているものなので、このデジタルならではのローノイズを生かして微妙な空間処理を任せることができるのでは、と考えています。その意味で"SPIN CYCLE"というプログラムには非常に可能性を感じました。また同じくギター・シンセのプログラムも、ミックスのときに原音と混ぜて使うことで新しい距離感を作り出すことができるでしょう。


最後に、FM4のもう1つの特徴として、モデリングではなくLINE6のオリジナル・サウンド・エフェクトもプログラムされていることが挙げられます。例えば"COMET TRAILS"は"マウンテン・デュー(カフェイン入り炭酸飲料)を飲み過ぎた結果"の音という具合で、これは今までの開発の途中で思いがけず出会った音のプログラムということだそうですが、非常にユニークなエフェクトです。今後もオリジナリティのあるエフェクトが期待できるでしょう。


新しい機材、それも自分に大いなる刺激を与えてくれる機材に出会うことは、エンジニアだけでなく音楽にかかわる人たちすべてにとって、とても大切なことだと思います。今回のフィルター・モデラーFM4は、筆者にとってだけでなく、これを手にする人たちにとっての大きな一歩を期待させてくれるエフェクターではないでしょうか。



LINE6
FM4
オープン・プライス

SPECIFICATIONS

■入出力端子/アナログ・インL(MONO)/R(フォーン)、アナログ・アウトL(MONO)/R(フォーン)、エクスプレッション・ペダル
■エフェクト・タイプ/16
■ファクトリー・プリセット/20
■ユーザー・プログラマブル・チャンネル/4
■コントロール/Effect Selector、Freq、Q、Speed、Mode、Mix
■外形寸法/260(W)×160(D)×60(H)mm
■重量/1.75kg