良質なヘッド・アンプと定番プリセットを備えた2chコンプレッサー

FOCUSRITEPenta

最近、ヘッド・アンプ、EQ、コンプレッサー、ADコンバーターなどが一体化した製品が多数発売されているが、どれも個性が感じられず寂しく思っていた。だがPentaはまさに個性的だ。一言で表現するなら、プリアンプ付きのコンプレッサーと言えるのだろうが、その発想が面白く、アナログ機ながらプリセット・エフェクターになっている。シンプルかつ大胆な製品と言えるだろう。

"ヌケと太さ"が秀でた
ヘッド・アンプ・セクション


2Uサイズのシルバー・カラーのヘアライン・パネルに"Focusrite"の文字が上品に浮かび上がる、なかなかおしゃれな外観。私が本誌6〜7月号でレビューを書かせていただいた同社のVoice MasterやMix Masterと同じ、Platinumレンジのラインナップに属する新製品がこのPentaだ。Voice Masterがボーカルに特化していたのに対して、本機はあらゆるソースに対応し、またMix Masterのようなトータル・コンプ的な機能をも併せ持っている。


まずはヘッド・アンプ部から紹介していこう。フロント・パネルにはマイクや楽器用の入力端子、そしてモノラル仕様のヘッド・アンプを備えている。マイクを入力してチェックしてみたが、さすがに業務用のヘッド・アンプやコンソールで高い実績を誇る同社だけに、ヘッド・アンプの性能は素晴らしい。良い意味で"メーカーの音"を持っている。ヌケが良く、かつ太く質感が良い。この"ヌケと太さ"は意外と両立が難しく、ヌケが良い場合は音が細くなりがちだし、音が太い製品はクリアさに欠ける傾向がある。FOCUSRITEはそれを両立した数少ないメーカーの1つだ。ちなみに以前Voice Masterをチェックした際、私はクラスA動作のヘッド・アンプが気に入ったのだが、Pentaも同じ回路を使用しているとのことだ。 なお、フロント・パネルの入力端子には、ファンタム電源も使用できるXLRタイプのマイク・インプットと、フォーン・タイプのインストゥルメント・インプットを用意。特に後者はハイインピーダンスに対応しているので、ギターやベースを直接入力できる。ただし、これらはモノ仕様なので、左チャンネルのアウトからのみ出力されることになる。


一方、リア・パネルには、2chのライン入出力が備えられている。端子にはフォーン・タイプを採用しており、バランスにもアンバランスにも対応。パネルのスイッチでフロント端子との入力切り替えができるようになっている。なお出力に対しては、Mix Masterでも採用されていたImage Widthコントロールの装備により、ステレオの広がり感を調整することもできる(詳細と活用法は7月号P246〜247を参考にしてほしい)。


また、デジタル・アウトもオプションのADコンバーターを装備することで利用可能。今回お借りしたデモ機にはオプションが付いていなかったためチェックできなかったが、Platinumレンジの他の製品の前例から、本機のクオリティも安心できるものと予測される。なお、このADコンバーターは24ビット/96kHzまで対応し、さらにワード・クロック端子も用意されているので、DAWと組み合わせた際にスレーブでも使用できるなど実践的だ。


幅広いサウンド作りに対応する
16種類のプリセット


では、肝心のコンプレッサー部を見ていこう。これが非常にユニークな発想で作られている。基本的にプリセットを選び、それをモディファイするというスタイルのコンプレッサーなのだが、なかなか使い勝手が良い。アナログ・エフェクターの場合、音は良くても設定が面倒であったり、再現性が低かったりするのだが、本機ではそれらが見事に改善されている。あらかじめ用意された16種類のプリセットが、制作現場で必要とされるほとんどのサウンドをカバーしてくれるため、コンプレッサーの設定に不慣れなユーザーにとっても即戦力になってくれることだろう。しかも瞬時にモディファイできるように、すべてのパラメーターはノブでコントロールできるようになっている。


実際にエレクトリック・ギターをフロント・パネルにインプットして、"ELECTRIC GUITAR"のプリセットを選んでみたが、そのままレコーディングできてしまうほどの、クリスピーなサウンドが得られた。アナログ独特のアタック漏れのある気持ち良い音だ。また、リア・パネルからステレオでドラムをインプットしてプリセットの"LOOP"を選んだ際には、この種の音楽にピッタリのサウンドを簡単に手に入れることができた。本機は積極的なアプローチの方がより本領を発揮してくれそうだ。


加えて、一般的なコンプレッサーに見られるレシオ、アタック、リリース等といったパラメーターでのコントロールのほか、チューブ・シミュレーター回路も装備し、より幅広い音作りが可能。このチューブ・サウンドのオン/オフができる専用ボタンも用意されている。


既に発売されているVoice MasterやMix Masterで好評な機能をそのまま、あるいはその一部をカスタマイズして搭載している部分も多く、新製品ながら実績を感じさせる。コンプレッサーの使いこなしは、プロとアマの差が最も出る部分なので、こうしたプリセットによるアプローチは、この価格帯を狙うユーザーには非常に便利と言えるだろう。



▲リア・パネル。右のデジタル・アウトプット・セクションはオプション(価格未定)


FOCUSRITE
Penta
78,000円(予価)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜85kHz(±3dB)
■ゲイン/0dB〜+60dB(マイク)、−10dB〜+10dB(ライン)
■出力インピーダンス/50Ω(バランス)、75Ω(アンバランス)
■全高調波歪率/0.002%
■ヘッド・ルーム/26dB
■外形寸法/480(W)×88(H)×265(D)mm
■重量/4.5kg