ワールド系音色を多数収録したProteusシリーズの新型モデル

E-MUPlanet Earth

E-MUの1U音源シリーズは、一体幾つのモデルが発表されただろう?と思わせるほどの新製品ラッシュの印象がある。同社のサンプラーとの連携も相まって、ますますライブラリー環境も良くなってきたこのシリーズだが、やはりコンセプトは"餅は餅屋"なる専用音源化に特徴があると言えよう。では、旧シリーズで言えばProteus/3の後継機に当たるとも言える最新モデルを紹介しよう。

使い勝手が良く
驚くべき音色数とクオリティ


E-MUから今回発売となった本モデル"Planet Earth"はその名が示す通り、いわゆるワールド・ミュージック対応といったところ。世界の民族楽器の数々が、RAM/ROM合わせて実に1,024も収録されている。


では具体的なスペックを見ていくことにしよう。まず特徴的なのは、フロント・パネルにAudityタイプ以降のシリーズ同様の筐体を用いていることだ。見やすい大きめのディスプレイ、メインのノブ、パッチ内のパラメーターにおのおの任意に対応させることのできる4つのノブ、そのノブをA-D、E-H、I-Lの計12個までの3グループを切り替えるためのトグル・スイッチが用意されている。


音源部は4基のレイヤーで構成されており、波形メモリーは通常32MB搭載され、最大拡張時にはサウンドROM装着により合計64MBまで拡張可能だ。既に内蔵されてある音色数だけでも驚くが、音色自体も高音質なサンプリングによるラインナップで、低音楽器、擦弦系、撥弦系、打楽器系、管楽器系、笛系、そしてサイン波、三角波、鋸歯状波、矩形波などのシンセ波形やパーカッション・キットなどにカテゴライズされた"使える"音がたくさんあって使い勝手が良い。


ライブラリーも、Proteusシリーズと共有できるサウンドROMを採用している。またフラッシュ・メモリーより、現行OSであるEOS搭載のE4シリーズで作成したサウンドROMも使えるらしく、ユーザー・バンクとしてこれをモディファイすることもできるようだ。


クラシカルからトリッキーな音作りまで
E-MUならではの独自パラメーター


すっかりおなじみになったE-MU独自のパラメーターといえば、Z-PLANEフィルターとパッチ・コード。その種類たるや、モデル・チェンジを重ねるごとに充実していってるように思う。Z-PLANEといえば、筆者お気に入りのMorpheusが発祥だったように思うが、現在はさらに使いやすくなっている。タイプ別にLPF、HPF、BPF、EQ、VOCALFORMANT、PHASE、FLANGE、RESONANT、WAH、DIST、SFXと、クラシカルな音作りからトリッキーな音作りまで対応する計50種が用意されている。これらと後述するパッチ・コードを併用して、さまざまなモーフィング効果を得ることができる。ただ"Order"と呼称される2〜12までの数値があるのだが、これらはマシン・パワーを必要とするのか、内部で勝手にレイヤリングされているのか、複雑な(=数値12を必要とする)タイプを使用すると発音数が半減するので注意が必要である。


パッチ・コードは、単にLFOやENVとモジュレーション・ソースを接続するだけでなく、E4同様ユニークなパッチ・ソースが増えている。クロックやラグ、クオンタイズやサミングアンプ、ダイオードなど、ほかにも挙げだすときりが無いが、まさに往年のパッチ・シンセサイザーをほうふつさせるものである。


エンベロープに関しては従来のAHDSRに代わり、Attack、Decay、Releaseそれぞれ2基、合計6ステップのレベルとレートで構成されるのも大きな特徴だろう。アサイン構成は従来と同じくフィルター、アンプ、AUXが用意されている。


また、このシリーズの特徴といえばアルペジオ/リフといった、もはやアルペジエイターの域を超えたステップ・シーケンサーだ。今回のシリーズでは、16パートのパターン・シーケンスを同時に再生することができる。これらはファクトリー・プリセットで200パターン、ユーザー・エリアが100パターン組め、選択することが可能だ。さらに、このパターンのデータをMIDI OUTで出力することができるので、別のシンセサイザーや音源ユニットをコントロールすることもできる。


外部MIDIソースとしては、ノート情報や通常よく使われるコントロール情報のほかに、ペダル3種と12個までのコントロール・チェンジ信号を任意にアサインすることができる。また、この12個のコントロール信号は、A-Lまでのノブと連動している。なので、よく使うパラメーターを3つのグループに関連づけてアサインすると非常に使いやすいだろう。ちなみにノブの動きもMIDI出力可能なので、外部の音源に合わせたアサインをすると本機からコントロールも可能である。


その昔、OPCODE Visionというシーケンス・ソフトが上陸したてのころ、筆者もよく使っていたSuperBEATSモードという機能も本機に搭載されたので触れておこう。この機能は、最近のバーチャル・アナログ・シンセに付いているのもちょくちょく目にする。どんなものかというと、リズム・パターンやフレーズなどをあらかじめ鍵盤上にアサインしておき、トリガーできるという仕組みだ。これは、ライブやちょっとしたセッション的な発想をするときに非常に役立つ機能である。


では、実際に使用してみての感想を。まず仕様に関してだが、レイヤーの行き来が煩雑であるのと、せっかくのボタン類とノブをもっと有効利用できればさらにエディットもスムーズなのではないかと感じた。あとダイアル(データ・エントリー・ノブ)の凹みのデザインが指にフィットしないため、エディットしづらいと感じた。また、内部のパラメーターに関しては、素の波形にしてフィルターをどんどんエディットしていくと、発音の際にプチプチというクリック・ノイズが聴こえるのが気になった。とはいえ、この価格帯で音質、パフォーマンス性に優れ、拡張性もあるのでかなり使い勝手のあるモデルと言えるだろう。今後もさらなるバージョン・アップに期待したい。



E-MU
Planet Earth
99,800円

SPECIFICATIONS

■最大同時発音数/64
■MIDI端子/IN、OUT、THRU
■最大出力レベル/+4dB
■周波数特性/20Hz〜20kHz(+2/−1dB)
■ダイナミック・レンジ/90dB以上
■外形寸法/482(W)×44(H)×215(D)mm
■重量/3.1kg