個性的なキャラクターの低価格アンプ・シミュレーター

ZOOMGM-200

このところモデリング・エフェクターは、プロ/アマ問わずレコーディングの必需品になってきている。そんな中、個性的なエフェクトで定評のあるZOOMから、ギター・アンプ・シミュレーターGM-200が発売された。早速チェックしてみることにしよう。普段同社の1210を愛用している筆者は、いやが応にも期待が膨らむところだ。

小型軽量ながらも11種類のアンプと
4種類のエフェクトを再現


箱から出して、まず感じるのはその軽さ。他社製品に比べてあまりに軽量のため、一瞬不安に思うほどだ。そしてデザインも同社のデスクトップ機に共通のユニークな形でZOOMらしい。


では、トップ・パネルのつまみ類を順に見ていこう。上段左はAMP SELECTで、ここでFENDER Tweed、Twin Reverb、VOX AC-30、MARSHALL JCM800、900など、11種類のアンプ・モデリングの中から1つを選ぶ。上段中央がEFFECTS。コーラス、トレモロ、エコー(ディレイ)、リバーブの計4種類のエフェクターが用意され、選択からかかり具合の調整まで1つのノブで行う。そして、上段右が接続する再生システムに応じ、出力特性や信号の処理方法を変更するOUTPUT CHARACTER。ここではラジカセなどのオーディオ機器につなげるLINE AUDIO、ダイレクト・レコーディング用のMTR RECORDING、ギター・アンプの間につないで歪み系エフェクターとして使うGUITAR AMPの3種類が用意され、それぞれに3、4個のサウンド・キャラクターが選べる。


中段はギター・アンプでおなじみのGAIN、MASTER LEVELの2ボリューム式。そして下段がTREBLE、MIDDLE、BASSの3ポイント・トーン・コントロールという構成だ。加えて、"ZNR"というZOOM独自のノイズ・リダクションも搭載されている。


例えば、MTRへのダイレクト・レコーディングの作業手順を追ってみよう。まず、アンプのモデルを選び、ゲインで歪み具合を、マスター・レベルで全体の音量を、トーン・コントロールで音色を調整する。もし、このときゲインの上げ過ぎでノイズが増えたら、ノイズ・ゲートをかける。その上でアウトプット・キャラクターを耳で確かめつつ変えてみると言った具合だ。さて、気になる肝心の音の方はどうだろう。


独特の存在感のある音作りで
ベースにもを威力を発揮


FENDER系に関してはTECH21 Sans Ampのクランチーでコンプの効いた性格の音と異なり、どちらかと言うと、バジーなブルース系の音といった印象。ハイ・ゲイン系は単体で聴くと若干安っぽい感じもするが、オケの中ではSans AmpやMARSHALL DRP-1などと比べても、かえって感じが出てる音がする。中でも、British Crunchという名のモデルを軽く歪ませた1960年代〜1970年代っぽい音が気に入った。この設定はベースにも非常に有効で、いわゆるブリテッシュ・ベース的なサウンド(例えば1960年代のジョン・ポール・ジョーンズのベース・サウンドがその代表格)になった。この手の音は他のシミュレーターでありそうでなかったもので、魅力を感じた。また、Metal Panelという真空管スタック・アンプのシミュレーターも思わずヘビメタっぽいリフをキメたくなるような音で、Sans Ampでは得ることのできないタイプのものだ。


これらのアンプの音に、マイキングのニュアンスをアウトプット・キャラクターで足すわけだが、Directのオンマイクの音に対しAirではオフ・マイクのアンビエンスが加わる。ショート・ディレイとも一味違ったニュアンスの奥行き感といった感じだ。さらにWideにすると、2本のマイクでステレオ録音した広がり感を得ることができるのだが、個人的にはこのWideをモノで使った方が自然なアンビエンスの感じという印象を持った。エフェクト類はすべてビンテージ・スタイルで統一されていて、トレモロはFENDER系というよりはVOX系の波形だ。リバーブもアンプ内蔵のスプリング式を意識した音。エコーもテープ・エコーをシミュレートしてあり、例えばブルース・エクスプロージョンのCDで聴けるようなショート・エコーを再現できる。ダイレクト音とエコーのバランスは変えることができないが、むしろ"この手のエフェクトはこのバランスで!"という潔さを感じる。


最後に入出力関係を見てみよう。入力端子にはギター入力用のフォーン端子以外にもCDやMDプレーヤーを接続できるようにライン入力用のMIX IN端子(ステレオ・ミニ・プラグ)を装備。出力端子はステレオ・フォーン端子のほかRCAピン端子も用意されていて、オーディオ・システム以外にも例えばDJセットなどを組み込むこともできる。ステレオ・フォーン端子はそのままヘッドフォン端子として使えるので、深夜にスタジオから持ち帰ったリズム録りのラフ・ミックスに合わせリード・ギターのフレーズを考えるなんていうことも、大げさなセッテイング無しでOKだ。


全体的に見て、操作性、音(ピッキング・ニュアンスの再現も素直)、コスト・パフォーマンスのバランスがとれ、アンプ・シミュレーター初心者から、幾つか持っているが違ったテイストのものを探している人まで試す価値のある製品だ。



ZOOM
GM-200
12,500円

SPECIFICATIONS

■入力/フォーン(アンバランス)×1、ミニ・フォーン(バランス)×1
■出力/RCAピン×1、フォーン(バランス)×1
■サンプリング周波数/40kHz
■A/D変換/20ビット64倍オーバーサンプリング
■D/A変換/20ビット128倍オーバーサンプリング
■外形寸法/215(W)×175(H)×65(D)mm
■重量/600g