多彩なリアル・タイム再生機能が魅力のサンプリング・ユニット

YAMAHASU200

YAMAHAの新製品SU200は、同社のSU700とSU10の中間に位置するサンプリング・ユニット。特徴は、異なるBPMのサンプルをリアル・タイムで同期させる"ループ・トラック・プレイ"と強力なエフェクターだ。また、ACアダプターのほか単三電池6本でも駆動可というライブ派にはもってこいの機能もあり、期待が膨らむところだ。

サンプリングからエディット
再生までを簡単操作で実現


SU200のサイズはB5くらいで、重さは830gと軽い。ボタン類はほぼ単機能であり、液晶にも対話形式で内容が表示されるため、操作に迷うことはほとんどないだろう。


本体の記憶容量は896KB。ハイグレードの44.1kHzモードだと、最大42秒のサンプリングが可能だ。ただし、このモードでは同時発音数がモノラルで2となり、エフェクトやスクラッチも使えなくなるので、通常はサンプリング周波数22.05kHzのスタンダード・モード以下で使うことになるだろう。その際、音質はハイエンドが削られ、折り返しノイズのチリチリした感じが出てしまうのが残念だが、同時発音数はモノラルで6(ステレオ・サンプルを使うと半分)となる。


サンプリング操作そのものや、スタート/エンドの編集、他のサンプルに尺を合わせるタイム・ストレッチなどは、計算にやや時間がかかるものの非常にやりやすい。また、パッドに割り振られたサンプルを再生する際に、GATE/TRIGGER、ONE SHOT/LOOP、NORMAL/REVERSEの切り替えボタンがそれぞれ用意されていて、再生中に切り替えられるのはとても便利。1回取り込んだサンプルにこうしたエディットを施したり、さらに後述のさまざまなエフェクトをかけながら別のパッドにリサンプリングすることも可能だ。


サンプル数はA/B/Cのバンクに各8個、合計24個記憶でき、バンクをボタンで切り替えて、音を途切らせることなくアクセスできる。また、TIMEボタンを押し、つまみの1を回すかTAPボタンを数回タップすると、再生中のサンプルのテンポをリアル・タイムで変えることもできる。


SU200の最も大きな特徴になるのが、ループ・トラック・プレイだ。これは、テンポの異なる複数のパッドのサンプルを強制的に同じBPMに同期させる機能。LOOP TR PLAYボタンを押してから"LOOP"に設定しているパッドを押すと、ディスプレイに表示されたテンポでサンプルが再生される。任意のタイミングでパッドを押しても、スタートがすべて小節頭にそろっているのは見事だ。その際のテンポは−1/+1ボタンでも、TAPボタンでも設定できるし、外部MIDIクロックに同期させることも可能。なお、このループ・トラック・プレイの情報は、バンクごとに記憶される。


実際、リズムもののサンプルで、このループ・トラック・プレイを使うのは面白い。特にハネていないストレートな16ビートでは効果絶大で、エフェクトと組み合わせてどんどんリズムを変化させていけるのはSU200ならではの楽しみだ。


LOOP REMIXやSLICEなど
強力なエフェクトを搭載


SU200には、LOOP REMIX、SLICE、TECH MOD、DIST/LO-FI、DELAY、FILTER(同時使用はこのうち1つ)とSCRATCH(リボン・コントローラーで操作)という7種のエフェクトがある。これらはAUDIO INを含む9つのパッドのうち、最後に押したパッド1つに対して有効だ。エフェクトをかけるパッドを固定したいときには、HOLDボタンを押しながら対象になるパッドを押す。エフェクトのかかり具合は、VOLUMEの横の2つのつまみで操作できるほか、SCRATCHのボタンを押していない場合は、リボン・コントローラーでも同様に操作できる。


これらのエフェクトはいずれも強力だが、特にLOOP REMIXとSLICEはSU200ならではの機能だ(ただしAUDIO INには無効)。まず、LOOP REMIXは、サンプルを分割し並び変えるもので、つまみ1で分割の仕方を、つまみ2でリバース再生の確率の大きさを調整する。これは主にドラム・パターンに変化を付けるためのもので、ストレートな4つ打ちがドラムンベースやファンクっぽい16ビートなどにすぐ変わるのだが、持続音でもノイズでも、どんなサンプルにかけても面白い。


一方、SLICEはサンプルを細かくカットし、ゲート・タイムを調整するもので、つまみ1でパターンが変化し、つまみ2でゲート・タイムを調整する。こちらも、リズムものでも持続音でも、切れのいいリズム・パターンに変化するので楽しい。


以上見てきたように、SU200は非常に個性的なユニットだ。高品質なサンプリングを求めるなら、もっと価格帯が上の製品になるだろうが、エフェクト部の優秀さや、ループ・トラック・プレイの面白さにピンと来る人には欠かせない飛び道具になるだろう。店頭で音質/機能をチェックし、SU200独自の世界を確認することをお薦めする。



YAMAHA
SU200
44,800円

SPECIFICATIONS

■最大同時発音数/6(モノラル・サンプル再生時。サンプリング周波数44.1kHz/モノラル・サンプル再生時は2音)
■最大サンプル数/24サンプル
■サンプリング周波数/44.1/22.05/11.025/1.5125kHz
■内部サンプル・メモリー容量/896KB
■最大サンプリング・タイム/5.5125kHz:モノ=約5分33秒、44.1kHz:モノ=約42秒
■接続端子/ライン・インL/R、マイク・イン、ライン・アウトL/R、ヘッドフォン、MIDI IN
■外部記憶装置/スマート・メディア
■外形寸法/257(W)×62(H)×210(D)mm
■重量/830g