シンセサイザーの名機MSシリーズが現代版として復活

KORGMS2000R

MS-20をはじめとするKORG MSシリーズは、1978年の発売以来、リーズナブルな価格ながらパッチング・システムを内蔵した本格的なシンセとしてヒットし、現在の中古市場でもいまだ根強い人気を誇っています。その名機が何とデジタル化され、その名も"MS2000"として復活! 何ともミレニアムなネーミングですが、今回紹介するのはそのモジュール版のMS2000Rです。一体どんなものなのか、旧MSシリーズ・ユーザーである私としては非常に気になるところ。では早速チェックしてみたいと思います。

バーチャル・パッチ機能により
自由度の高い音作りが可能


最初に、本機の概要を説明しておきましょう。外観的には、5Uサイズのパネル上にずらりとつまみやボタン類が並び、一見して操作性の良さが感じられます。音源方式は同社ProphecyやZ1などで好評の4ボイスのアナログ・モデリング・シンセシスを採用。2系統のオシレーター、4タイプのフィルター、そしてパッチング機能をシミュレートしたバーチャル・パッチ機能を搭載するなど、自由度の高い音作りを可能にしています。そして、その音色にアナログ・シーケンサーのような時間的な変化を与えるMOD SEQUENCE機能やアルペジエーター、エフェクト、さらに16バンドのボコーダー機能まで内蔵し、まるで昔のMS-20、SQ-10、VC-10を1台にまとめたような豪華な内容となっています。では実際に操作しながら、その内容をチェックしていきましょう。まず"MS-20部分"とも言える音源部ですが、オシレーター部では2つのオシレーターを利用したクロス・モジュレーションやリング・モジュレーション、また波形を変化させるコントロールつまみにより、"いかにもアナログ・シンセ"といった音色から、攻撃的な鋭い音色まで作り出すことができます。フィルターはローパス2種(−24dB/−12dB)、バンドパス(−12dB)、ハイパス(−12dB)の4種類から選ぶことができ、レゾナンスは自己発振も可能です。LFOは2系統で、フリケンシーの幅も広く、積極的な音作りが可能となっています。そしてバーチャル・パッチ機能では、4つのモジュレーション・ソースとデスティネーションをパネル上で即座に選択することができ、複雑なモジュレーションを可能にしています。これらの操作のほとんどは、パネル上のつまみでリアル・タイムに行なうことができます。また、本体下部に並ぶ16個のボタンは、パッチ・セレクトに使用する用途のほか、キーボードとしての役割も果たしており、音色のエディットなどの場合にとても便利です。

音色変化を作るMOD SEQUENCEや
専用機並みのボコーダーも搭載


次に"SQ-10部分"とも言えるMOD SEQUENCE機能を見ていきましょう。本機では最大16ステップのシーケンスをティンバーごとに3基使用することができます。これらのシーケンスは、本体下部に並ぶ16個のつまみで操作することができ、音源部の各パラメーターを自由にアサインすることで、音色に時間的な変化を与えることが可能です。また、6つのパターンを持つアルペジエーターと併用することで、さらに効果的なシーケンス・パターンを作り出すこともできます。なお、このMOD SEQUENCEとアルペジエーターはプログラムごとに設定することができ、外部MIDIクロックとの同期も可能です。テクノ系などで再び人気が高まりつつあるアナログ・シーケンサーですが、本機のこの機能も1度使ったら病みつきになることは間違いありません。続いて"VC-10部分"であるボコーダー機能。これはボイス・モードが"Vocoder"のとき、本機は16バンドのボコーダー(シンセ・プログラムとの併用は不可)として機能するもの。この場合、AUDIO IN 2に入力された音がモジュレーターとなり、キャリアにはオシレーター1が使用できるほか、AUDIO IN 1の外部入力も使用可能。パラメーターも非常に充実しており、子音の調節やエンベロープ・フォロワーの感度調節、フォルマント・シフト機能など、きめの細かい音作りが実現できます。また本体下部に並ぶ16個のつまみで各バンドのレベルや定位を調節できるのも便利。本家VC-10よりも明瞭度が高いのはもちろんですが、単なるオマケ的なものではなく、専用機並みの機能を備えていることは驚きです。そのほかには、エフェクトはコーラス、フランジャー、フェイザーなどのモジュレーション系、ディレイの2系統のほかにEQを装備し、アンプ部ではディストーションも内蔵。また、オーディオ入力も装備しているので、外部の音のフィルタリングやリング・モジュレーションも可能です。なお、冒頭に述べた通り、本機と同等の機能を持つキーボード・タイプのMS2000(99,800円)も同時発売されています。こちらの方は同社の名機800DVを思わせる、木枠付きのナイスなルックスとなっています。このように、とても充実した内容を持った現代版MSシリーズである本機ですが、個人的にはフィルターを独立2系統にしてほしいとか、バーチャル・パッチをもっとパッチングに近い感覚でできる工夫がほしいとか、いろいろと感じたこともあります。しかし、便利なテクノ向き音源という枠にとどまらず、旧MSシリーズ同様音作りの楽しさや可能性を感じさせる作りなっているのはとてもうれしく思いました。また、デジタル化されたことで当然出てくる音の質感こそ違いますが、−24dBのローパスを使用した場合のフィルターのキレなど、往年のアナログ・シンセに負けないほどの実用性を持っています。テクノ系はもちろん、一歩踏み込んだ音作りを楽しみたいすべての人にお薦めできる1台です。
KORG
MS2000R
69,800円

SPECIFICATIONS

■音源方式:アナログ・モデリング・シンセシス
■同時発音数/最大4
■マルチティンバー数/最大2
■プログラム数/128プログラム
■接続端子/OUTPUT L/R、AUDIO IN 1/2、ヘッドフォン、アサイナブル・ペダル、アサイナブル・スイッチ、MIDI IN/OUT/THRU
■外形寸法/482.0(W)×87.1(H)×233.2(D)mm
■重量/2.8kg