「ZOOM ZDM-1PMP」製品レビュー:ダイナミック・マイクと密閉ダイナミック型ヘッドフォンを含む配信用セット

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 マルチトラック・レコーダーや、レコーダー、ミキサーなど優れた製品を多く作り出しているZOOMから発売されたポッドキャスト用マイク・パックZDM-1PMPを紹介する。

最大音圧レベル135dBのマイクZDM-1
40mmドライバー採用のヘッドフォンZHP-1

 ZDM-1PMPのセット内容は、ダイナミック・マイクのZDM-1、密閉ダイナミック型ヘッドフォンのZHP-1、折りたたみ式マイク・スタンドのTPS-4、ウィンド・スクリーン、2mのマイク・ケーブル(XLR)だ。“巣ごもり”と言われるテレワークに必要なものがセットになっている。またSTEINBERG WaveLab Castのライセンスが無料で付属するので、簡単に音声編集することも可能だ。

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ZDM-1PMPのセット内容。左から3mストレート・ケーブル(片出し)、密閉ダイナミック型ヘッドフォンのZHP- 1、ダイナミック・マイクのZDM-1、折りたたみ式マイク・スタンドのTPS-4、ウィンド・スクリーン、2mのマイク・ケーブル(XLR)

 ZDM-1は超単一指向性で、最大音圧レベルは135dBと大口径ならではのスペック。ウィンド・スクリーンなどが付属しているので、すぐに使用できるだろう。大口径のマイクは見た目から安心感があり、軽量ながらも安定感のあるスタンドにすべてネジ止めされるので、転倒や外れる心配が無い。収納やセットアップに時間が取られないことも良い。

 

 ZHP-1は密閉ダイナミック型のモニター・ヘッドフォンで、40mm(φ)のネオジウム・マグネットのドライバーを採用している。ヘッドフォンの根元にオスのステレオ・ミニ端子が付いていて、3mのストレート・ケーブル(片出し)が付属。着脱式ケーブルは移動時や装着時にも煩雑にならず、良いアイディアだと思った。その先端はステレオ・ミニ・プラグになっており、ステレオ・フォーン変換プラグも付属する。コンピューターやオーディオI/Oなどの用途に合わせて使い分けられるようになっている。

 

 ヘッド・バンドは通常ならば伸び縮みするが、長さは固定で弾力性のある素材により頭の大きさにフィットする。自分は通常ならばヘッド・バンドを伸ばして使うことが多いが、ZHP-1はそのままでも問題無くフィットした。ヘッドフォンはR側が完全に反転するので、DJなど片耳でのモニターが必要なシーンでも簡単にできる。密閉度が高いせいか低音部までよく聴き取れるので、好感が持てた。

 

空調ノイズや吹かれが少なく指向性が広い
左右に動いても音質や音量の変化が無い

 実際に、オンデマンド教材用の音声収録に使用してみた。普段はサイド・アドレス型コンデンサー・マイクをマイク・スタンドに取り付けて収録をしていたが、小型スタンドのTPS-4は場所を取らずに使い勝手が良いことに気付いた。ダイナミック・マイクの特性で空調ノイズもさほど気にならないが、一定の距離を保った方が音圧のばらつきは減るように思えた。大口径のメリットで、指向性はかなり広い。つまり原稿を読むときなどに、左右に動いても音質や音量の変化が感じられないのは驚きだった。オンマイクでも吹かれなどの影響は皆無と言って良く、思い切りオンマイクでも少しシビランスが気になる程度で問題無いと感じた。中高域に少しディップを感じるが、コンプをかけなくてもトークや歌が出っ張らないので良いかもしれない。スピーカーとともに使うわけではないので、ハウリング・マージンは気にする必要が無い。

 

 次にテレワークの会議とオンデマンドの配信授業の作成で使ってみた。リスニング環境が異なるが、悪い印象を持った人は1人も居なかった。マイク入力をUSB変換するインターフェースがあれば、ZDM-1をコンピューターに接続可能。ヘッドセット・マイクでいいのではと思う方も多く居るかもしれないが、声や息の吹かれなどに関してはマイクから離れられることを考えると、ダイナミック・マイクの方が都合良い。TPS-4は、画面への写り込みも少なく、原稿などを近くに置きやすかった。最近は、会議でもパソコンの内蔵マイクやスピーカーをそのまま使っている様子がうかがえる。プロ用機器となると何をそろえていいのか分からないというのが正直なところだろう。音楽を作るならばそのまま録音ができるレコーダー、会議で使用するのであればコンピューターと接続するオーディオ・インターフェースがZOOMから発売されている。用途に合わせて選べば、あとは高音質で配信することが可能だ。安価なので抵抗感は少ないだろう。

 

 最近テレビ番組などでも、イアフォンの小型マイクで劣悪な音が使われているのを数多く見かける。スタジオでの高音質と比べて、訴えかけが伝わりにくいのはお気付きだろうか。音は意外と重要だ。密閉されたヘッドフォンで聴くことで、自分の声がどのように伝わっているかも確認ができる。あらゆるシーンでリモートが一般的になっている昨今、映像に関しては数々の知識を蓄えつつあるが、音質は軽視されている面もあるだろう。そんな中で、このようなリーズナブルなセットを導入し、訴えかけを強めて、相手や視聴者が快適にリスニングできればより良いと感じた。

 

山寺紀康
【Profile】PAをメインに手掛けるサウンド・エンジニア。角松敏生、浜田省吾、久保田利伸、スピッツなどのライブでPAを担当してきた。尚美学園大学の芸術情報学部情報表現学科で准教授を務める。

 

ZOOM ZDM-1PMP

15,000円

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SPECIFICATIONS
●ZDM-1
▪タイプ:ダイナミック型 ▪指向特性:スーパーカーディオイド ▪周波数特性:50Hz〜18kHz ▪感度:−54dBV/Pa (2.0mV) ▪出力インピーダンス:200Ω ▪最小入力インピーダンス:200Ω ▪最大音圧レベル:135dB ▪外形寸法:54(φ)×150(H)mm ▪重量:400g

●ZHP-1
▪形式:密閉ダイナミック型 ▪ドライバー:40mm(ネオジウム・マグネット) ▪感度(1kHz):97+/−1.5dB(1mW) ▪周波数帯域:10Hz〜20kHz ▪最大入力:200mW ▪インピーダンス(1kHz):68Ω ▪ケーブル:3mストレート・ケーブル(片出し) ▪重量:220g

 

製品情報

zoomcorp.com

 

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