「ZOOM PodTrak P8」製品レビュー:マイク入力/ヘッドフォン出力を各6系統備える配信対応レコーダー

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 ライブ配信やオンライン・セッションが増える中、複数名でのマイク音声収録に特化した最大8トラック同時録音が可能なマルチトラック・レコーダーPodTrak P8がリリースされました。本機とマイクさえあれば初心者でも録音から編集、ジングルのポン出し、リモート収録まで、高音質のポッドキャスト制作ができる画期的なツールです。DAWソフトの環境が既に整っていても、P8を導入する価値はあるのか? その魅力に迫ります!

各入力トラックの音声調整機能が充実
編集ツールで本体内でトリミングや分割が可能

 P8の大きな特長としては、マイク・イン(個別にオン/オフ可能なファンタム電源を搭載)とヘッドフォン・アウトが各6つあり、それらの音声調整機能も充実している点が挙げられます。マイクプリの後段にはリミッター、暗騒音や風雑音を軽減するローカット、コンプレッサー、歯擦音を抑えるディエッサーを搭載。トーンは画面内に表示されるBassとTrebleのスライド・バーで調整します。リミッターの入力レベルは適正値だと液晶内に“Good”と表示され、分かりやすいです。ノイズ・リダクションは無音状態のマイク入力を自動で減衰させ、ノイズを抑える機能。総合的には“マイク録音に特化したコンプやEQが付いている”というイメージで、話し声に限らず歌声やアコースティック・ギターでも、とても使い勝手が良い印象でした。

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本体左上にはマイク入力×6(XLR)と各チャンネルのINPUT SELECTスイッチ、スマートフォン接続端子(TRRS/別売りのBTA-2でBluetooth入力にも対応)が並ぶ。その下には、各種設定が行えるタッチ・スクリーン、サンプルのポン出しができるSOUND PADを9個装備し、さらに下部には各チャンネルに対応したフェーダーが8本スタンバイ。本体右にはスピーカー・アウト(L/R)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)×6系統、さらに再生/停止などのトランスポーズ用ボタンがまとまって配備されている

 コンピューターやスマートフォンとUSB接続し、その場でライブ・ストリーミングが行えるP8は、SDカードを入れ番組用の音声データを作り込むときこそ本領発揮します。フロント・パネル右下のRECキーを押せばワンタッチで録音開始、録音しながら旗印のMARKキーでマーカーを付けつつ、REC/STOPキーで録音を終了。ステレオ・ミックス・ファイルに加えて、各チャンネルの個別ファイル(コンプなどのエフェクトの有無が選択可)も保存できるのがうれしいです。

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本体背面。左から電源スイッチ、電源端子(底面の単3電池×4本やUSBバス電源でも動作)、オーディオI/Oとして接続するほかSDカードのデータ転送にも使用できるUSB Type-C端子、SDHC/SDXCカード・スロット

 P8の編集ツールは、トリミング、分割、フェード・イン/アウト(セッション中でも設定可)、BGMの付加、ラウドネス・ノーマライズを搭載。波形は拡大表示でき、タッチ・スクリーンでスムーズに作業可能です。音声ファイル同士を結合し、BGMやジングルをうまく組み合わせて番組を仕上げましょう。

 

即戦力のプリセットが収録されたサウンドパッド
豊富な入力で楽器や外部音源の配信にも対応

 9個のサウンド・パッドにはそれぞれ4つのバンクが用意され、計36個の音声をアサイン可能。プリセットのジングル(ドラム・フィル、スクラッチ音、拍手、笑い声など)は使えるものばかりです。SDカード内の音源を流して生で歌ったり、収録したインタビューを流したり、エンディング曲をリアルタイムにフェード・インさせたりもできます。再生方法はOne Shot/Pause/Loop/Holdの4パターン。各パッドの音量バランスは瞬時に調整可能です。音質設定やサウンド・パッドの割り当てはSDカード1枚につき1パターンですが、音声ファイルのアイコンの色を設定すると、その色でパッドが光るので便利です。ドラム・キットをアサインしてビートの演奏もできますね!

 

 ch6はUSBオーディオ入力も可能。P8をコンピューターと接続し、オーディオI/Oとして認識させたらINPUTスイッチをUSBに設定して、音源や通話アプリの音声を入力します。通話の場合、フィードバックを防ぐためUSB Mix Minusをオンにしましょう。ドライバー不要なので、コンピューターに接続するだけで“ZOOM P8 Audio”としてさまざまな配信アプリでも認識しました。

 

 7個目のインプットであるスマートフォン接続端子は電話参加ゲストの音声入力も可能ですが、ステレオ・ミニ端子でシンセサイザーなどをつなげてもよいでしょう。USB入力とスマートフォン入力も音質の調整ができ、TrebleとBassを個別にブースト/カット可能。特にBassのブーストは音楽チャンネルを盛り上げるために積極的に使いたいと感じました。

 

 できれば複数名でマイク・インをフル活用したいですが、1人の配信でもP8のスペックを持て余すことは無いでしょう。ch1〜5のセッティング例として、ch1:コンデンサー・マイク(ファンタム電源オン、ボーカル/MC用)、ch2:ルーパーやエフェクターをつないだダイナミック・マイク(コーラス用)、ch3:アコースティック・ギター、ch4/5:シンセサイザーの出力(フォーンをXLRオスに変換して接続)なども考えられます。ミキサー兼オーディオI/Oとして存分に活用したいですね。

 

 各トラックはON AIRキーで瞬時にヘッドフォン端子以外への出力をオフにできるので、進行中のサウンド・チェックにも便利ですね。細か過ぎないデザインと頑丈なフォルムにより、フェーダーやノブの操作性も良いです。DAWに慣れていても初心者でも、P8だけでどこでもオリジナルのポッドキャスティングができてしまうので、効率良く楽しく制作&配信したいすべてのクリエイターにお薦めです!

 

AZUMA HITOMI

【Profile】アナログ・シンセと豆腐と酵素玄米をこよなく愛す、サウンド・クリエイター/シンガー・ソングライター。矢野顕子へのトラック提供やアナログ・シンセ・カルテットHello,Wendy!としても活躍する。

 

 

ZOOM PodTrak P8

オープン・プライス

(市場予想価格:45,000円前後)

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SPECIFICATIONS
▪入出力:マイク・イン×6(モノラル、XLR)、スマートフォン入力×1(ステレオ、TRRSミニ)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)×6、スピーカー・アウト(L/R、TRSフォーン) ▪ビット/サンプリング・レート:16ビット/44.1kHz固定 ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪記録フォーマット:WAV、44.1kHz、16ビット ▪記録メディア:SDHC/SDXC(別売り) ▪外形寸法:295(W)×61(H)×248(D)mm ▪重量:1.43kg

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13〜10.15、INTEL Core I3以上
▪Windows:Windows 10以降、INTEL Core I3以上
▪共通:USB 3.0/2.0、Type-C
▪iPhone/iPad:iOS 12/13(APPLE Lightning-USBカメラ・アダプタが別途必要)
▪Android:Android OS 7〜10

 

ZOOM PodTrak P8 製品情報

zoomcorp.com

 

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