「PRESONUS Atom SQ」製品レビュー:ステップ・シーケンスから鍵盤演奏まで対応するMIDIコントローラー

PRESONUSから発売されたMIDIコントローラー「Atom SQ」

 PRESONUSから、自社DAWソフトのStudio One 5にネイティブ対応したMIDIコントローラーAtom SQが登場した。以前発売されたAtomのような4×4タイプのパッド・コントローラーとは違う、ステップ・シーケンサーのような風合い。だが、ステップ・シーケンスを超えた多彩な機能が採用され、ABLETON Liveとの併用にも対応する。もちろん汎用MIDIコントローラーとしても機能するが、Studio OneもLiveも使用する筆者にとって、本機は非常に気になるところ。早速見ていこう。

Studio Oneの純正プラグインが
自動的にアサインされるロータリー・エンコーダー

 本体は最近のテーブルトップ型シンセと同等のサイズ。8個のロータリー・エンコーダー、32個のパッド、さらにピッチ・ベンドにもなる+/−ボタンや、タッチ・ストリップと呼ばれるリボン・コントローラー型パネル、各種情報を表示する液晶画面などがコンパクトにまとまっていて、非常に感覚的で分かりやすい。

トランスポート用ボタンに加えて、エンコーダー・ノブ×8、タッチ・ストリップ、ディスプレイなどを装備。本体下部には、タッチ・センス対応パッドが16個×2列で並び、ステップ・シーケンス、パッド演奏、鍵盤演奏などシーンに応じて使い分けが可能となっている

トランスポート用ボタンに加えて、エンコーダー・ノブ×8、タッチ・ストリップ、ディスプレイなどを装備。本体下部には、タッチ・センス対応パッドが16個×2列で並び、ステップ・シーケンス、パッド演奏、鍵盤演奏などシーンに応じて使い分けが可能となっている

 早速Atom SQをUSBでコンピューターに挿してStudio One 5を開くと、バス・パワー駆動かつドライバー無しで即認識。再生/停止ボタンも同期され、難無く再生できた。打ち込みを始めようと液晶画面を見ると、あらかじめ開いていたStudio One付属のMojitoやImpact XTといったソフト音源が既に画面に反映されている。画面上下にあるボタンでテンポやループ設定、パートのソロ/ミュートなどが可能で、各種パラメーターもデフォルトでロータリー・エンコーダーにアサインされ、設定無しでオシレーターやフィルターが操作できる。しかも、インサートしたStudio One純正エフェクトのパラメーターも自動的にアサイン。まるでさまざまなハードウェアを1台の機材でコントロールしているような操作性だ。他社製のプラグインも手動でアサイン可能となっている。

リア・パネルには、コンピューター接続用のUSB-C端子を搭載し、USBバス・パワーで駆動

リア・パネルには、コンピューター接続用のUSB-C端子を搭載し、USBバス・パワーで駆動

 そして、特筆すべきは、本体下部に備わった16ステップ型×2列のパッド。これが単なるステップ・シーケンサー用ボタンかと思いきや、何とタッチ・センシティブ対応パッドとなっていて、AKAI PROFESSIONAL MPCのようにパッドをたたいた強弱でベロシティが反映される本格的なもの。パッドはMPCシリーズより小ぶりだが、うまくレイアウトされているおかげかとても演奏しやすい。また、パッドの感度に関しては、Set upボタンからメニューで細かく設定できる。

 

 冒頭で“ステップ・シーケンスを超えた多彩な機能”と書いたが、このパッドはStudio Oneのパターン・エディターと連動したステップ・シーケンサー(16ステップ以外にも変更可能)としての使用も可能。先述の通りサンプラー・パッドにもなり、加えてKeyモードでは、パッドの下段が白鍵、上段が黒鍵というふうにLEDがレイアウトされて鍵盤演奏もできる。さらに、Scaleメニューでは、選択したスケール上のノートのみLEDが点灯するようになっている。

コード演奏やアルペジエイター機能を搭載
打ち込み時のパッド配列は4種類から選択可能

 Atom SQの画面左のボタンでEditorモードに切り替えると、打ち込んだMIDIパターンを即座に編集可能。これがとてもよくできている。トランスポーズやベロシティ、パターンの複製、クオンタイズはもちろん、打ち込んだノートを一つ一つずらせるNudge、ノートのタイミングや強弱を微妙にランダマイズするHumanizeもある。その多くの機能が難無くAtom SQからアクセスできるので、まるでハードウェアのシーケンサーやシンセ、リズム・マシンで音作りをしているよう。4小節のフレーズを作ったところ、あっという間に出来上がった。

 

 ステップ・シーケンス、パッドでの打ち込み(Blocksモード)、ピアノ・レイアウトのKeyモード、パッドすべてに32段階のノートを広げたContinuousモードもあり、これら主な4種類の打ち込み方に加え、Atom SQにはコード演奏機能やアルペジエイター機能なども備わっており、これらを織り交ぜるとかなり幅広い作曲やアレンジができそうだ。

 

 そしてAtom SQのもう一つの醍醐味であるABLETON Liveとの連携も試してみた。本音を言うと、試す前はLiveとの親和性はおまけ程度かなと思っていたのだが、これが見事にStudio One 5との連携にも劣らない完成度。Liveのセッションビューでのクリップ/シーンのコントロールなど、Live独特の機能がパッドでコントロールできるのだ。MIDIコントロールも充実。Live付属のシンセOperatorを立ち上げたところ、なんと各オシレーターやエンベロープが、最初からロータリー・エンコーダーにアサインされているではないか……! Drum Rackに関しても同様に8つのパラメーターがアサインされていた。

 

 この完成度、おみそれしました。深堀りすればかなり多様な使い方ができそうなAtom SQ、まだその一端しか見ていない筆者も、これは本格的に導入してみたい。

 

Gonno
【Profile】アシッド&アトモスフェリックなサウンドを手掛けるハウス/テクノ・プロデューサー。名門International Feelなど各国から作品を発表し、ローラン・ガルニエなど著名DJにプレイされる。

 

PRESONUS Atom SQ

オープン・プライス(市場予想価格:26,000円前後)

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SPECIFICATIONS
▪入力:USB-C(USBバス・パワー駆動) ▪外形寸法:362(W)×25(H)×172(D)mm ▪重量:0.91kg

REQUIREMENTS
▪Mac:Mac OS X 13以降(64ビット版のみ)、INTEL Core I3以上のプロセッサー ▪Windows:Windows 10(64ビット版のみ)、INTEL Core I3以上またはAMD A10以上のプロセッサー ▪共通:4GB以上のRAM(8GB以上推奨)、20GB以上のハード・ディスク容量(Studio OneおよびAtom SQ専用コンテンツ)、インターネット接続(インストールおよびアクティベート時)、Universal Control 3.3以降、Studio One 5以降(ネイティブ統合の場合)

 

製品情報

 

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