「ROLI Equator2」製品レビュー:MPEによって多彩な音色変化を生み出すソフトウェア・シンセサイザー

ROLIのソフトウェア・シンセサイザー、Equator2が登場

 ROLIのソフトウェア・シンセサイザー、Equator2が登場。前バージョンのEquatorはその多次元なサウンドに多くのトップ・クリエイターたちが驚かされました。同社のMPEデバイスSeaboardに最適化されたEquator2ですが、MPE非対応の他社MIDIデバイスにもフレキシブルに対応するシンセです。

6基のオシレーターを搭載
4種類のサウンド・ソースから音源を選択可能

 Equator2はMac/Windows対応でAU/VSTプラグインとして動作するほか、スタンドアローンでも使用できます。起動してまず目を引くのは、Equatorから一新されたグラフィック・インターフェースです。各セクションごとにパネルの色やノブのデザインに変化が付けられ、どこにどの機能が備わっているのか視覚的に把握できるようになっています。特にステージ上での使用では視認性の良しあしが演奏にも大きく影響するので、うれしいポイントですね。

 

 画面上部にはオシレーターとなるスロットが6基並んでおり、ウェーブテーブル/サンプラー/グラニュラー/ノイズと、4種類あるサウンド・ソースから音源をセレクトできます。ウェーブテーブルではさまざまな合成方式の波形が用意されていて、オリジナルの波形もドラッグ&ドロップで読み込むことが可能。サンプラーとグラニュラーではストリングスやブラス、管楽器、アナログ・シンセなど、セクションごとにサンプルが用意されています。ここでもウェーブテーブル同様に自作サンプルが使用可能なので、オリジナルのサウンドを無限に構築できますね。

 

 オシレーターの下には2基のフィルターが配置されており、十数種のフィルター・タイプを選べます。サウンド・ソースやフィルターのバリエーションは豊富ですが、画面を見る通り、各パラメーターは非常にシンプルな配列となっています。後述するMPE対応デバイスを使用したモジュレーションやLFOなどの動きでサウンドに表情や奥行きを付けるというコンセプトなので、ここのセクションではシンプルに迷うことなく好みのサウンドをセレクトして組み合わせていけます。

通常のMIDIコントローラー用のモードも搭載
MPE非対応デバイスでも表現の自由度が高い

 プリセットもかなり強力で、MPEデバイス用に530個と通常のMIDIデバイス用に848個のプリセットを用意。それぞれにモジュレーション、アーティキュレーションの配置などが最適化されてます。膨大なプリセット数ですが、フィルタリング機能が備わっているためタグのセレクトで目的の音に素早くアクセスが可能です。

 

 サウンドは、劇伴やサントラなどで使えそうな動的なアンビエント系のパッドが豊富に収録されています。それらは複数のサウンド・ソースのレイヤーで構成されており、どれもが奥行きと立体感のあるものばかり。MPEデバイスを使えば非常に多彩な表現ができます。例えばSeaboardを使った場合、Keywave(Seaboardの鍵盤サーフェス)を押してパッド音を鳴らしつつ、Slide(Keywave上の縦の動きによる変化)でノイズやボイス・サンプルを混ぜていき、Press(Keywaveを押し込む圧力による変化)で徐々にビット・クラッシャーによるローファイなサウンドに変異させる……ということが可能です。そしてリリース時にはLift(Keywaveから指を離す速さ)でLFOのかかりが深くなるなど、複雑な演奏をモジュレーション・ホイールを触らずに指1本で行うことができます。

 

 生楽器のサンプルも豊富に収録されており、そのサウンドのクオリティに驚きました。特にピアノやストリングス、ギター、ベース、シタールなどの弦楽器の質感が素晴らしく、非常に丁寧にサンプリングされているのだと感じます。サンプル・ライブラリーとしてもレベルの高い製品となってますね。これもMPEデバイスを使えばGlide(Keywave上での横の動きの変化)でビブラートをかけたり、Strike(Keywaveを弾いたスピードと強さによっての変化)でノイズや倍音を加えたりと生楽器に近いニュアンスで演奏ができました。

 

 画面中央のMOD PANELSでは、MPEのアクションによる音色変化の付け方をカーブで調整できます。通常のMIDIコントローラー用のモードも用意されていて、MPE非対応デバイスでもEquator2ならでは自由度の高い表現が可能です。MOD MATRIXでは、どのパラメーターがどこにアサインされているのかを確認することができます。

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音色変化に欠かせないモジュレーションの設定画面。Equator2はMPEに非対応のMIDIキーボードなどでも使用できるように、VELOCITY、PITCH、MOD WHEEL、AFTERTOUCH、NOTE OFFといった一般的なコントロールでのモジュレーション・ソース設定も行える

MPEのアクションを含めるとモジュレーション設定が複雑になるが、MOD MATRIX画面は見やすく、どのソースがどのパラメーターにアサインされているのか分かりやすい

MPEのアクションを含めるとモジュレーション設定が複雑になるが、MOD MATRIX画面は見やすく、どのソースがどのパラメーターにアサインされているのか分かりやすい

 画面一番下のKEYTRACKINGでは、キー・レンジによってオシレーターやエフェクトのパラメーターに変化を加えることが可能。例えば、低い音はドライなピアノだけが鳴り、高い音になるにつれてシタールの音とリバーブやひずみが増えていくなど、さまざまな面白いアプローチが思い付きそうです。

 

 Equator2はルーティングに関しても自由度の高さが難易度につながることなく、とても分かりやすく構成されています。これから世界中のクリエイターがEquator2を使い、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか非常に楽しみです。

 

阿瀬さとし
【Profile】Kco(vo、ac.g)とのアコトロニカ・ユニット=Cojokでギターとプログラミングを担当。現在Smash Roomに所属し、CMソングや映画サントラの制作、マニピュレーションもこなす。

 

ROLI Equator2

28,000円(通常版)/17,000円(アップグレード版)

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REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.8以降、AU/VSTに準拠、スタンドアローンでも動作可能 ▪Windows:Windows 10、VST に準拠、スタンドアローンでも動作可能 ▪共通:INTELl I5(デュアル・コア、2.5GHz)以上を推奨、4GBのRAM(8GB以上を推奨)、2GBのハード・ディスク空き容量

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