ヤマハ Stagepas 200 レビュー:扱いやすい操作性でセルフ・コントロール可能なポータブルPAシステム

ヤマハ Stagepas 200 レビュー:扱いやすい操作性でセルフ・コントロール可能なポータブルPAシステム

 YAMAHAのポータブルPAシステム、Stagepasシリーズの新製品、Stagepas 200が登場しました。私が2019年12月号でレポートしたStagepas 1Kはラインアレイ・スピーカーを採用していましたが、本機は別売りで専用キャリング・ケースまで用意されるなど、より持ち運びしやすいワンボックス型。ミキサー、パワー・アンプも搭載する“セルフPA機”と言えるでしょう。付属のスラント型ラバー・スタンドを付けるとコロガシ・モニターのようなルックスにもなる本機が、どのような性能を持っているのか見ていきます。

バッテリー・パック付属モデルもラインナップ

 Stagepas 200は、8インチ・ウーファーと1.4インチのダイアフラムを持つ高域ドライバー付きの同軸スピーカー・ユニットが採用されています。水平、垂直それぞれ90°の指向角のため、ユーザーが向きさえ意識すれば均一に音を放射でき、演者がPAも行わなければならない際などに扱いやすいでしょう。クラスDを採用するパワー・アンプは、ウーファーのサイズが8インチということを考えると十分な音量。バスレフ型キャビネットのチューニングも的確で低域もしっかり出ており、本格的な仕上がりを感じます。

 ギャザード仕様のエッジや、堅固さを感じるエンクロージャーなど、作りも良いです。ラバー・スタンドを使って30°、60°と角度を付けた近距離向けの床置きや、35mmのポール・スタンドに取り付ければ中距離向けのセッティングも可能。個人的には、ライブの際に特定の演者に向けたスポットのモニターとして使ってみたいと思いました。

 Stagepas 200には別売りで専用のリチウムイオン・バッテリー・パックが用意されているほか、Stagepas 200BTR(オープン・プライス:市場予想価格107,800円前後)というバッテリーが付属するモデルもラインナップ。最大で10時間の連続稼働が可能で、バッテリー・パック自体の重さも500gほどと軽量です。ストリート・ライブなどを行うミュージシャンにとってはありがたいですね。

多彩なエフェクトを備える5chミキサー

 ミキサー部分を見ていくと、入力はXLR/フォーン・コンボ端子の3系統に加え、バックトラックなどの音源を入力するためのライン入力(TRSフォーン/ステレオ&モノラルに対応)を備えています。ch2/3はHi-Z入力への切り替えスイッチも付いており、エレキギターやベースを直接入力できます。ch1〜3の入力に用意されている48Vファンタム電源は、フォーン端子を挿したときにはかからない安全設計になっているのも好印象です。

リア・パネル。左から、マイク/ライン入力×3(XLR/フォーン・コンボ。ch1は複数台接続する際のリンク入力として、またch2/3はHi-Z入力に対応)、ライン入力、モニター/リンク出力(いずれもTRSフォーン)を備える

リア・パネル。左から、マイク/ライン入力×3(XLR/フォーン・コンボ。ch1は複数台接続する際のリンク入力として、またch2/3はHi-Z入力に対応)、ライン入力、モニター/リンク出力(いずれもTRSフォーン)を備える

 各入力チャンネルにはイラスト付きのEQノブがあり、左に回すとローカット、右に回すと低域&高域がブーストされ楽器向けの特性となります。ローカットは、ノブの回し具合によってロールオフしはじめる周波数が変化する仕様で、ボーカル・マイクの使い方を心得ている人なら十分な性能です。使用するマイクの特性を残し、“下手に設定をいじるな”の良いお手本と言えるでしょう。

トップ・パネル。各入力チャンネルにボリューム、EQノブのほか、ch1〜3にはリバーブ、ディレイ、コーラスを組み合わせて設定できるエフェクト・ノブを備える。ch1〜3共通の48Vファンタム電源スイッチ、ch4/5のBluetoothペアリング用スイッチなども用意。出力は、ボリューム・ノブのほか、用途ごとのシーンから音圧、バランスを調整するMODEノブ、HALL/PLATE/ROOM/ECHOの4種類を備えるリバーブ・ノブ、ハウリングを防ぐFEEDBACK SUPRESSORスイッチを備える。モニター/リンク出力の音量を調節するMONITOR/LINKノブも用意

トップ・パネル。各入力チャンネルにボリューム、EQノブのほか、ch1〜3にはリバーブ、ディレイ、コーラスを組み合わせて設定できるエフェクト・ノブを備える。ch1〜3共通の48Vファンタム電源スイッチ、ch4/5のBluetoothペアリング用スイッチなども用意。出力は、ボリューム・ノブのほか、用途ごとのシーンから音圧、バランスを調整するMODEノブ、HALL/PLATE/ROOM/ECHOの4種類を備えるリバーブ・ノブ、ハウリングを防ぐFEEDBACK SUPRESSORスイッチを備える。モニター/リンク出力の音量を調節するMONITOR/LINKノブも用意

 ch1〜3の入力にはエフェクト・ノブも装備。リバーブ、リバーブ+ディレイ、リバーブ+コーラス、リバーブ+ディレイ+コーラスと、4種類のエフェクトを1つのノブに分割して配置しています。エフェクトの量もそれぞれのノブの位置で強弱を付けられ、1つのノブでコントロールを実現しているのは、デジタル・プロセッシングならではです。

専用アプリで本体よりも詳細な設定が可能

 また、Bluetooth接続でスマートフォンなどのモバイル端末からコントロールできる専用アプリ、Stagepas Controllerも用意されています。EQ、コンプ、ダッキング、そのほかのエフェクトの詳細設定をはじめ、本体ノブだけでは成し得ないディープな操作が可能。ここに書き切れないほどです。もちろん設定を記録できるので、セットアップも短時間で済ませられます。ライブMCでのエフェクトのミュートも手元で完結。複数台使用時にはマストとも言えますね。

専用アプリのStagepas Controller。それぞれの入力チャンネルを一度に表示するミキサー画面のほか、画面のように特定のチャンネルのエフェクトなどを細かく調整することも可能だ

専用アプリのStagepas Controller。それぞれの入力チャンネルを一度に表示するミキサー画面のほか、画面のように特定のチャンネルのエフェクトなどを細かく調整することも可能だ

 今回のレビューでは、ギター/ボーカルとパーカッションのデュオ、辻村マリナ with TAHIに協力してもらいました。ミュージシャン自身によるセルフPAを想定して、あえて使い方をあまり説明せずに試してもらったのですが、問題無く使用でき、直感的で分かりやすい操作性が好評でした。PAが本職ではない私のスタッフも、中で何が行われているかがアプリの操作を通して分かり、自分で聴きながら音を調整できる点に明快さを感じるほどです。PAエンジニアの私も嫉妬してしまうほどの手軽さを持つStagepas 200。これからいろいろな場面で活躍することでしょう。

 

近藤祥昭
【Profile】アナログ・テープを駆使するレコーディング・エンジニアで、PAも行う。これまでに大友良英、カヒミカリィ、非常階段など、さまざまなアーティストを手掛ける。現在GOK SOUNDの移転を準備中。

 

YAMAHA Stagepas 200

オープン・プライス

(市場予想価格:89,100円前後)

YAMAHA Stagepas 200

SPECIFICATIONS
▪スピーカー構成:8インチ・ウーファー+1インチ・コンプレッション・ドライバー ▪内蔵アンプ出力:150W(低域)+30W(高域) ▪周波数特性:60Hz〜20kHz ▪指向角:90°(水平)×90°(垂直) ▪クロスオーバー周波数:2kHz ▪最大SPL:125dB(1m) ▪入力チャンネル:5(モノラル3系統+ステレオ1系統) ▪外形寸法:300(W)×308(H)×301(D)mm ▪重量:12.0kg ▪付属品:電源ケーブル

製品情報

関連記事