「TELEFUNKEN TF11 FET」製品レビュー:AKG C12を意識しCK12式カプセルを搭載したコンデンサー・マイク

TELEFUNKENからコンデンサーマイク「TF11 FET」が発売された

 TELEFUNKENから、AKG C12の質感を目指し、なおかつ気軽に使えるコンデンサー・マイクTF11 FETが登場しました。C12と言えば名機として現在も復刻されるほどのマイクですが、高価で、容易に何にでも使える代物ではないので、筆者もボーカル・レコーディングくらいでしか使用したことがありません。音は好みであるものの、スタジオに何本も常設されるマイクではないですからね。ということで、TF11 FETは発売前から気になっていたので、期待が高まります。早速試してみましょう。

ショック・マウントとスタンド・マウントが付属
粒立ちが良くバランスも良好な音質

 サイズ感はラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイクとしてはコンパクトで、これなら場所を選ばずいろいろな用途で使いやすそうです。重量は545gと、それほど重くないので、ドラムのトップ・マイクとしても難無く使え、スタンドが前に傾くこともありません。

カプセルは、CK12スタイルのTK51Sを採用。CARNHILL製のカスタム・ニッケル・コア・トランスとFETマイク・アンプを組み合わせている。48Vファンタム電源で駆動する

カプセルは、CK12スタイルのTK51Sを採用。CARNHILL製のカスタム・ニッケル・コア・トランスとFETマイク・アンプを組み合わせている。48Vファンタム電源で駆動する

 付属品はマイク・ケース、ノーマルのスタンド・マウント、ショック・マウントです。ショック・マウントとノーマルのスタンド・ホルダーが付いているのはうれしいところで、設置場所によってどちらを使うか選べるのは良いですね。

 

 TF11には、ショック・マウントとスタンド・マウントがそれぞれ付属。マイク・ケースには、TELEFUNKENのロゴが刻印されている

TF11には、ショック・マウントとスタンド・マウントがそれぞれ付属。マイク・ケースには、TELEFUNKENのロゴが刻印されている

  指向性はカーディオイドのみで、カプセルはCK12スタイルのTK51S。最大SPLは135dBなので、よほどの大音量でない限り大丈夫そうです。本体にローカットやPADなどの機能が搭載されていないのも潔いですね。なお、本機はC12を目指して作られていますが、FETタイプです。通常の48Vファンタム電源で気軽に使用できるのはうれしいですね。

 

 まずはドラムのトップ・マイクとして試してみました。高域は奇麗に伸びますが、ギラついた感じはしません。低域は不要な部分が無く、スッキリした音です。感覚的には、EQで補正した後の音とでも言いましょうか。アタック感がよく拾えてバランスが良いですね。AKG C414と比べてみても、それがこもって聴こえるほど。中低域から低域はC414の方が出ますが、この帯域はトップで使う場合、部屋の響きの影響などでカットすることが多い部分。EQをかけずにそのまま録音できるという意味ではTF11 FETは扱いやすいでしょう。

 

 次にタンバリン。もう“そのままでOK!”という音で録音でき、これは使えるなという印象です。ウィンド・チャイムなども抜けがありつつ高域に極端なピークが感じられないので、何も処理せず奇麗に録ることができました。コンデンサー・マイクでは意外と高域がつぶれてしまうこともあるのですが、本機では問題無さそうです。

抜けの良い高域と不要な部分を含まない低域
EQ処理無しでそのまま使える音に

 そのほか、ウクレレにもチャレンジしてみました。ウクレレは録音が難しい部類の楽器ですが、なんとこれもEQ無しでOK。高域の抜けもアタックの反応も全く問題無く、やはり低域の不要なところが無いので扱いやすい音でした。

 

 アコースティック・ギターの場合も同様で、抜けはありつつ低域の膨らみが少ないので、場所を選ばず自宅環境でもスタジオでも扱いやすい音ですね。思いのほか良かったのがベース・アンプ。元音にもよりますが、TF11 FETは低域がなだらかに落ちるのでこもった感じがせず、フレーズの輪郭が見える音を得られました。ディストーション・エレキギターでも、低域の扱いやすさが良い印象。本機とダイナミック・マイクをブレンドして使えば全く問題無いと思います。

 

 ただ、ボーカルはちょっと声色を選ぶかもしれません。低域が充実しているような男性ボーカルでは、抜けが良く、低域を抑えた感じがマッチ。もう少しフラットな声では、抜けは抜群ですが、少し軽く感じ、中低域の色気のある部分が抑えられるので、ここは好みの分かれるところでしょう。

 

 TF11 FETは万能ではないかもしれませんが、全体的に奇麗な傾向の音で、特別な処理をしなくても、ただ録るだけで“最終的にはこう処理をするだろうな”という音が得られました。低域から中低域がスッキリしていますが、実はローエンドまでしっかり音が入っていましたので、音を太くしたい場合にはEQの調整で対応できるでしょう。高域の伸びは硬くなり過ぎず、ハイレートでの録音にも使えるマイクだと思います。

 

 いろいろと試してきましたが、C12と音の傾向は似ているものの、それを意識せずに使うとより楽しめると思います。コンパクトでハンドリングがしやすく、これまでのマイクとは少し思考が違うかもしれませんが、EQなどの処理をすることなく整理された音を実現するTF11 FETは、有用な機種の一つだと言えるでしょう。今回のテストは1本で行いましたが、ぜひステレオ・ペアでそろえたいですね。自宅録音でも扱いやすいと思います。いつもEQを使って低域をカットしている方や、奇麗な音が好きな方にぜひ試していただきたいですね。TF11 FETは、筆者のマイク・コレクションの一つになりそうです。

 

中村文俊
【Profile】レコーディング/ミックス・エンジニア。スガ シカオ、大黒摩季らの作品に携わってきた。ライブDVDのサラウンド・ミックスやゲーム用サウンドのデザインなども行う。

 

TELEFUNKEN TF11 FET

オープン・プライス(市場予想価格:100,000円前後)

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SPECIFICATIONS 
▪形式:FETコンデンサー ▪カプセル:TK51S ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±3dB) ▪出力感度:14mV/Pa(±1dB) ▪SN比:90dB ▪出力インピーダンス:110Ω ▪最大SPL:135dB ▪外径寸法:46(φ)×175(H)mm ▪重量:545g ▪付属品:ショック・マウント、スタンド・マウント、マイク・スリーブ、マイク・ケース

TF11 FETの製品情報

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