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SLATE DIGITAL FG-Dynamics レビュー:伝統的なVCAチャンネル・ダイナミクス・セクションを再現したプラグイン

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 8個のエフェクト・スロットを使って数十種類のモジュールを組み合わせ、さまざまなサウンドに対応するチャンネル・ストリップを作れるSLATE DIGITAL Virtual Mix Rack(VMR)。柔軟性に富んだこのシステムに、新しいモジュールのFG-Dynamicsが追加されました。

実機に無い独自の機能を搭載。ハード・ニーとリニアなリリース・カーブを選択可能

 まずはVMRについて説明します。VMRはAPI 500互換モジュール・ラックを模したエフェクトで、モジュールはダイナミクスやEQ、プリアンプ、マイク・モデリングなど計32種類があり、8つを自由に組み合わせ可能です。VMRに収録されているプリセットは大抵6~7つのモジュールの組み合わせでできていて、その種類は豊富。音も秀逸なので、好みのプリセットを選び、それを元にエディットしていく使い方がよいでしょう。画面上部には任意のプリセットをすぐに呼び出せる7つのボタン、Dream Stripもあります。

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FG-DynamicsはVirtual Mix Rack内で使用することができる。モジュールは追加購入分も含め全32種類をラインナップ。プリセットも豊富に用意されており、よく使うプリセットは画面上部にあるDream Stripという場所へ7つまで登録でき、ワン・クリックでロードすることが可能だ

 では、本題のFG-Dynamicsを見てみましょう。パネルには“BRIT 4K DYNAMICS”と書いてあり、SSL SL4000シリーズのチャンネル・モジュールのダイナミクス部分をモデリングしていることが分かります。色はEシリーズですね。FG-DynamicsにはSL4000と同じレシオ、リリース、スレッショルドのノブがあり、アタック・タイムが速くなるFASTボタンがあります。レシオとリリースはSL4000と同じ設定ですが、スレッショルドはSL4000が+10~-20dBなのに対し、FG-Dynamicsは+4~-26dBと6dB低い設定です。確かにSL4000では+10dBでコンプレッションがかかることはなく、+5dB以下にすることが多いので、より実践的な設定に変更したのでしょう。

 FG-Dynamics特有の機能もあり、ニーをハード・タイプにするHARDボタンと、リリースをリニア・タイプにするLINボタンが備わっています。SL4000Eはスレッショルド・レベルを越えた瞬間にコンプレッションされるわけでなく、スレッショルド近辺から設定した圧縮率へなだらかに変化していくソフト・ニー・タイプです。FG-DynamicsではHARDボタンを押すことによりハード・ニー・タイプになり、スレッショルド・レベルを越えた瞬間に決めたレシオでコンプレッションされます。リリースも実機と同じ設定ですが、LINボタンでリリース・カーブをリニアにすることで通常に比べて速いリリースになります。

 ゲート・セクションを見てみましょう。こちらも実機と同じレンジとリリース、スレッショルドのツマミがあり、アタックを速くするFASTボタンと、ゲートとエキスパンダーを切り替えるEXPボタンで構成されていて、FG-Dynamics特有のパラメーターはありません。そして一番下のセクションにはミックス・レベルのMIXノブ、ステレオ動作させるLINKボタン、最終レベルを-24~+24dBで調整できるOUTノブがあります。

音の変化をとらえやすいオート・ゲイン。HARDボタンでハードなコンプレッションが可能

 私はミックスでSSLのE/G/J/Kシリーズのモデリング・プラグインを全チャンネルに入れています。アナログ・コンソールでミックスするような感じを再現し、さらに必要な場合にほかのプラグインを入れていく方法です。プラグイン・メーカーもトラックにより使い分けています。

 ではFG-Dynamicsはどんな印象か、実際に聴いてみましょう。第一印象では実機よりも音の輪郭がはっきりしていると思いました。SSL卓はコンプレッションしていったときに自動でゲインを上げるのですが、コンプレッション量より少し多めに上がります。そのため、コンプレッションでの音の変化というよりも、ゲインが上がることで音が良くなったと感じてしまうことがよくあるのです。FG-Dynamicsのゲインの上がり具合はそれと比べると少なく、コンプレッションでの音の変化を正確にとらえることができると感じました。

 ニーをハードにすると、実機では得られない“パコーン”とハードにかかるコンプレッション・サウンドが得られます。また、リリース・カーブをLINにすると、スレッショルドを下回った瞬間にコンプレッションが開放される感じで、リリースが速くなったような動作です。アタックのFASTは、実機やほかのSSL系プラグインよりも少しアタックが残る感じがします。通常、FASTにするとアタックがほぼ無くなるので私はあまり好きではないのですが、FG-Dynamicsではアタックの輪郭は残るため、使えるモードだと思いました。

 ゲートの動作は非常に実機に近い感じです。ゲートが開く瞬間に発する独特のノイズ感が再現されていて、少しアタック感が足される感じが実機に似ています。ゲートで余分な音を切るというより、アタック感を足すという伝統的な使い方ができるのがうれしいです。

 実機には無いMIXノブでは、ハードにコンプレッションした音を原音に混ぜるパラレル・コンプが簡単にできるのが良いですね。OUTノブは上げるとアナログ感のあるひずみが足されました。フェーダーで上げた音と比べましたが、OUTノブの方が音にハリが出て元気な音になります。これは積極的に音作りの一部として活用した方がいいパラメーターです。

 今回は他社プラグインと音質を比較しながらテストしました。実機のSL4000とも他社プラグインとも少し違う感じがあり、FG-Dynamicsでしかできない音を作れるので、“SSL系プラグインは持っているから要らないや”という感じではなく、“こういうサウンドならFG-Dynamicsだよね”と手が伸びるダイナミクス・プラグインです。

 

森元浩二.
【Profile】prime sound studio formのチーフ・エンジニア。これまでに浜崎あゆみ、AAA、DA PUMPなど、ジャンルを問わず数多くのアーティストの作品に携わる。

 

SLATE DIGITAL FG-Dynamics

20,350円

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REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以降、AAX/AU/VST/VST3に準拠、INTELまたはApple Silicon(Rosetta 2で動作)のプロセッサー
▪Windows:Windows 8以降、AAX Native/VST/VST3に準拠、INTELまたはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上のRAM

製品情報

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