SE ELECTRONICS Neom USB レビュー:最高24ビット/192kHzでの録音に対応するUSBコンデンサー・マイク

SE ELECTRONICS Neom USB レビュー:最高24ビット/192kHzでの録音に対応するUSBコンデンサー・マイク

 USB接続のコンデンサー・マイクの普及によって、どこでも手軽に録音やストリーミング配信が行えるようになりました。プラグ&プレイができて携帯可能なコンデンサー・マイクは、その分音質を妥協しているのでは?というイメージもあるかもしれません。しかし、今回リリースされたSE ELECTRONICS Neom USBはその印象を見事に払拭してくれました!

マイクとヘッドフォンの音量を別々に調整できる

 SE ELECTRONICSは、ダイナミック・マイク、コンデンサー・マイク、リボン・マイクにおいて多くのラインナップがあり、すべてのマイク・カプセルを完全にハンドメイドで製造していることで有名なブランドです。使用環境や必要なスペックに応じてモデルを選ぶ楽しさは、お気に入りの楽器を見つけるときのわくわく感にも似ています。繊細で芸術的な職人技が光る“作品としてのマイクロフォン”を生み出すブランドのニュー・アイテムということで、期待が膨らみますね。

 デザインは重厚感があり、マットな質感とブラック&レッドのカラーがアクセントになっています。MUTEスイッチがブランドのロゴ“sE”になっているのもかわいいですね。ツマミは上からMIC GAIN、MIC LEVEL(入力したマイクのモニター音量)、PLAYBACK LEVELとなっており、マイクとヘッドフォンのボリュームがそれぞれ単独で調整できるのでモニター環境が作りやすいです。レベルの視認性にも優れていて、マイクの入力を上げるとMIC GAINのツマミを縁取るLEDが緑から赤へと変化していくのでクリップするのを防げて安心です。PADスイッチやフィルターなどが付いていないシンプルな設計になっていて、USB-C端子はマイク下部に、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)はマイクの裏面に付いています。USB-C to Aケーブルとヘッドフォンのケーブルがごちゃごちゃになる心配もありませんね。

マイクの背面。右下にヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)を備える。マイク下部にはUSB-C出力端子を装備

マイクの背面。右下にヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)を備える。マイク下部にはUSB-C出力端子を装備

 付属の金属製デスクトップ・スタンドは、小さいモニター・スピーカーのスタンド部分のようなシンプル&クールなデザインで、とても好きです。マイクとワンタッチ接続できるマイク・クリップ(一般的なマイク・スタンドへの装着はこれだけあればOK)は、バラして携帯することができます。マイク本体もスタンドも軽量なので、可搬性にも優れるでしょう。

デスクトップ・スタンド、USB-C to Aケーブル(150cm)、マイク・クリップが同梱される

デスクトップ・スタンド、USB-C to Aケーブル(150cm)、マイク・クリップが同梱される

空気感や繊細な奥行き感までをキャプチャー

 まずはボーカルを録音してみました。USB-C to Aのケーブルでマイクをパソコンとつなぎ、APPLE Logic Proで認識させます。最高24ビット/192kHz収録に対応し、レイテンシーの心配も無く瞬時に録音が行えました。第一印象は、ダイレクトに中高域を広くキャッチしてくれて音の立ち上がりが速く、とにかく“歌うのが気持ち良い!”ということ。また、ナチュラルな華やかさを表現できるAKG C214と比べても素直で癖が無く、サウンド作りの自由度が高いです。ボーカルにとって重要な1~6kHzあたりの帯域もEQで抵抗無く持ち上げられるので、オケとのバランスや音楽ジャンルに合わせてEQを調整すれば、ニュアンスを保ったまま抜けの良いボーカル処理ができるでしょう。私の高めの声質には、高域がきらびやかに伸び過ぎてしまうマイクはあまり合わないので、適度な平坦さがちょうどよく使いやすいと感じました。

 続いてアコースティック・ギターの弾き語りを録音してみます。素材の魅力を最大限に、ありのままキャプチャーしてくれるので、いろいろな生楽器を録音してみたくなるマイクだと感じました。感度がとても高いため、マイクの入力ゲインを少し上げるだけで、歌もギターもノイズレスで気持ち良く収録できます。指向性は一般的なカーディオイドですが、適度なフラットさを備えているので、マイクに近付いた際の中低域の強調もとても自然。マイクからの距離に神経質になる必要が無く、演奏に集中できます。リアルタイム配信にとって大切な空気感や繊細な奥行き感を収録してくれるので、リバーブやディレイを使った広げ方もイメージしやすいです。ほかのマイクを複数本立てても音の混ざりが良いので、基準の1本としてNeom USBをチョイスしつつ、キャラクターの濃いマイクと並べて使用するのも良いのではないでしょうか。

 演出されたいやらしさが無く、クリアとウォームのバランスやエッジの効き方、アタック感がとにかくちょうど良いです。扱いやすくブライトな性質は誰からも好かれそうだけれど、ハンドメイドな愛情があるからか、普通過ぎてつまらないということもありません。感度の良さと繊細さを兼ね備えた人気者タイプと言えるでしょう。SE ELECTRONICSのマイク全般に見られる柔軟性、フィードバックの心地良さを、USBマイクでもしっかり感じられることに感動しました。高いSPLへの対応力もありSN比も良いです。よりハイグレードなマイクが選択肢にあったとしても、Neom USBが持つ“ソースに寄り添ってくれるバランス感”に期待して、あえて使用する場面もありそうです。

 Neom USBは、配信用と決めつけるにはもったいないクオリティです。宅録初心者からプロまで、一番身近に置いておく“録音の即戦力”としてもお薦めしたいマイクとなっています。ぜひ皆さんも試してみてくださいね!

 

AZUMA HITOMI
【Profile】 サウンド・クリエイター/シンガー・ソングライター。アナログ・シンセ・カルテットHello,Wendy!でも活躍。現在、埼玉県比企郡小川町にてAZUMA HITOMIのシンセ青空じっけんしつ開講中。

 

SE ELECTRONICS Neom USB

オープン・プライス

(市場予想価格:24,200円前後)

SE ELECTRONICS Neom USB

SPECIFICATIONS
▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪サンプル・レート:44.1、48、88.2、96、176.4、192kHz ▪ビット解像度:24ビット(A/D)、24ビット(D/A) ▪外形寸法:56(W)×174(H)×40(D)mm ▪重量:445g

製品情報