SAMSON Resound VX8.1 レビュー:各スピーカーアレイの角度を調整できるコラム型パワードPAスピーカー

SAMSON Resound VX8.1 レビュー:各スピーカーアレイの角度を調整できるコラム型パワードPAスピーカー

 SAMSON Resound VX8.1(以下VX8.1)は、各スピーカーアレイの振り角度を調整できるパワード・ラインアレイスピーカーである。近年よく見かけるようになったコラム型スピーカーシステムは、特性上横方向の指向性が広く90°以上のものがほとんど。この特性が客席側の壁との不要な反射を招いてしまうこともあり、内側に振りを変えたい場合がある。振りを変えるにはスピーカーを丸ごと移動させなければならず、会場ではオーナーの方にその必要性を理解してもらい、許可を得る必要があった。VX8.1は、そんな私にとっては待ち望んでいた製品。早速細部を見ていきたい。

4段階で角度調整できるスピーカーアレイ×2を備える

 VX8.1を下から見ていこう。最下部はミキサー、パワーアンプを備えた12インチのウーファーで、その上にミッドハイ部の高さを稼ぐためのスペーサーが乗る。もちろんスペーサーにはスピーカーユニットは内蔵されてないが、4本の太い連結ピンを備えており、ポールマウントよりも安定性がありそうだ。内側にはパワーアンプの出力を送るフォーンプラグに似たようなターミナルピンがあり、プラス極とマイナス極が独立している。この部分は正面向きにしか挿せないため、逆極性接続にしてしまうことはないだろう。

 アンプからの出力は、スペーサー上部に仕込まれた角度調整用の金属ピンを経て、上部2つのスピーカーアレイに供給される。最上部のスピーカーアレイは、天井が高めな室内を考慮してか、15°くらいの仰角を持ったモアイ像のような形状だ。水平方向は120°、垂直方向は推定15〜20°くらいをカバーし、遠方減衰が少ないラインアレイのメリットを十分に受けられそう。すなわち、スピーカーに近い席と後方の席との音圧差を少なくできると思う。実際10m弱の距離の差においては、その恩恵を十分に感じることができた。

 さらに2本のスピーカーアレイ部は、それぞれ4段階の角度調整が可能。2本をひねるように反対方向に45°回転させれば、水平200°にわたって音を届けることができる。クリックストップが角度ごとに働くので、振動で角度が意図せずに変わってしまうということはまずないだろう。環境に合わせて適切な向きにできるのはありがたい。抜け防止用のロック機構も、各スピーカーアレイごとに付いている。

 すべてのエンクロージャーは硬いプライウッド製で堅牢なコーティング塗装が施されており、適切な位置に持ち手が作られている。余分な突起もないので、運搬をする機会の多いユーザーも便利だろう。さらに、スピーカーのフロント部の鉄製のメッシュはわずかに内側に引っ込んでいるため、こすれによって塗装がはげ落ちるといったことも少なそうだ。内部にはウレタンフォームが入っていて、スピーカー内に直接雨などが侵入するのを防いでくれる。こういった細部の構成から、とても真面目な作りになっていることが感じられた。

ワイドな指向角に適した音質に補正することも可能

 中央のスピーカーアレイの背面に小さなスリットがあるのも特徴だろう。コラム型のスピーカーの背面にスリットを設けて逆相成分を漏らし、8の字型の指向性を持たせるという手法は古くから行われてきたが、試しにこのスリットをふさいでみたところ、指向性というよりは中央のスピーカーアレイが受け持つ低音域、推定200Hz辺りの背圧(スピーカーの裏から放たれる音のエネルギー)を逃すことで、中低域に対して振動板が楽に動けるようにしているのではと思った。DSPに過度に頼らない設計になっていて、好印象である。出音は高域がはっきりしていて、距離を置いて用いられるPAスピーカーとして扱いやすい音質だと感じた。

 ミキサー部についても見ていこう。

サブウーファーの背面にある3chミキサー。INPUT 1はマイク/ラインイン(XLR/TRSフォーンコンボ)で、INPUT 2は、ライン/インストゥルメントイン(XLR/TRSフォーンコンボ、ステレオRCAピン)。さらにその右隣にはBluetooth入力、システム拡張のためのスルー出力(XLR)も用意されている。Bluetooth入力セクションの右には、アレイの向きに合わせて設定することで音質を最適化するCOLUMN SELECTスイッチがあり、右端には4つのEQプリセットを備えるDSP、入力信号や電源を視覚で確認できるSTATUSセクションが用意されていて、SIGNAL/LIMITのインジケーターは通常時は緑に点灯し、リミッターの動作点に近づくと赤に変化する

サブウーファーの背面にある3chミキサー。INPUT 1はマイク/ラインイン(XLR/TRSフォーンコンボ)で、INPUT 2は、ライン/インストゥルメントイン(XLR/TRSフォーンコンボ、ステレオRCAピン)。さらにその右隣にはBluetooth入力、システム拡張のためのスルー出力(XLR)も用意されている。Bluetooth入力セクションの右には、アレイの向きに合わせて設定することで音質を最適化するCOLUMN SELECTスイッチがあり、右端には4つのEQプリセットを備えるDSP、入力信号や電源を視覚で確認できるSTATUSセクションが用意されていて、SIGNAL/LIMITのインジケーターは通常時は緑に点灯し、リミッターの動作点に近づくと赤に変化する

 INPUT 1はライン/マイクの切り替え式になっていて、潔くファンタム電源はない。INPUT 2はライン/インストレベル、すなわちハイインピーダンス対応だが、ギターアンプとして使うならしかるべきプリアンプを使うことが推奨されている。アンプシミュレーターと併せて使うのはありかもしれない。その場合はラインレベルで十分だろう。エレアコも直接接続できるし、今回は試せなかったが、低域がしっかりとしているので、アップライトベースとの相性も良いはず。12インチのウーファーなのでドロドロした不要な低音は出にくいし、中高域が奏者の耳元に届くからピッチが分かりやすく演奏しやすいだろう。さらに、パワーアンプには4種類のEQプリセットが用意されているので、ボタンで選択するだけで好みの音に設定することが可能だ。“MUSIC”はおそらくフラットで、“LIVE ”はややボーカルの帯域が強調される。“SPEECH”は低音域がカットされ、“DJ”は分かりやすく高域と低域が強調される印象だ。

 ほかにはINPUT 3として、レベル可変のBluetooth入力があり、アンテナも付いている。通信距離は30mとの記載があった。また、プリアウトとして、ミックスアウトもしくは増設用のスルー出力として使えるXLR端子も用意されている。さらにその端子の上部には、200°などワイドな指向性で使う際に高域が減ってしまう現象を補正するCOLUMN SELECTスイッチがあり、実際によく機能していた。

 VX8.1は簡易型PAスピーカーに属するのかもしれないが、角度調節機構を備えることでさまざまな環境に対応し、作りもしっかりしている。スピーカーアレイを4つ連ねた16ユニット仕様や、天井の反射を嫌うとき用の逆モアイ型のトップ・スピーカーアレイなどをオプションとして用意してもらえないだろうか?

 

近藤祥昭
【Profile】アナログテープを駆使するレコーディングエンジニアで、PAも行う。これまでに大友良英、カヒミカリィ、非常階段、w.o.d.など、さまざまなアーティストを手掛ける。

 

 

 

SAMSON Resound VX8.1

オープンプライス

(市場予想価格:118,000円前後)

SAMSON Resound VX8.1

SPECIFICATIONS
▪スピーカー構成:12インチウーファー+3.5インチツィーター×8 ▪アンプ:クラスD ▪アンプ出力:700W(350W/サブウーファー、350W/アレイ) ▪周波数特性:60Hz〜20kHz(−3dB)、40Hz〜20kHz(−6dB) ▪最大SPL:125dB ▪水平指向角度:120°(2つのアレイがセンター向きのとき)、200°(2つのアレイを反対方向に45°回転させたとき) ▪消費電力:700W ▪外形寸法:385(W)×1,820(H)×500(D)mm ▪重量:30.4kg

製品情報

SAMSON Resound VX8.1

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