こんにちは。作曲家/ギタリスト/エンジニアの青木征洋です。UNIVERSAL AUDIOのDAW=LUNAを紹介する本連載ですが、今回は以前登場したLUNA Extensionsの続きに加え、音楽制作に適した15個のUADxプラグインが付属する“LUNA Pro Bundle”の中のUAD Instrumentsを主に紹介していきたいと思います。
api VISIONと2500をラインナップするLUNA Extensionsのチャンネルストリップ
前回は3種類のLUNA Extensionsのうち、サミングミキサーとテープレコーダーについてお話ししました。今回はLUNAミキサーのCONSOLEセクションにビルトインするLUNA Extensionsのチャンネルストリップについてです。これにはマイクプリやコンプ、EQ、フィルターといった6種類のエフェクトモジュールからなるapi VISIONと、バスやマスターに使用するコンプのapi 2500が用意されています。
音質については、いずれもUADプラグイン版と同じです。ただし、ほかのDAWであれば毎回プラグイン画面を開閉しなければならないところを、LUNAならミキサー画面上ですべて開きっぱなしにしてアクセスできるため、操作上のストレスが少ないでしょう。また全チャンネルにビルトインするとapiのミキサーでミックスしているような見た目になるので、テンションがちょっとだけ上がります。
また、プラグインなどのデジタルEQはスペクトラムアナライザーを備えているものも多く、これによってミックスは視覚に頼りがちになります。しかし、api VISIONに搭載されているEQなら、大まかな調整であればより早く終わらせることが可能です。“早く終わる”というのは重要ですよね。EQのポイントも固定されているので、考えることもおのずと少なくなります。
ちなみに今回のLUNA Extensionsチャンネルストリップも、前回紹介したサミングミキサーやテープレコーダーと同様にCPUで動作します。最近はUADxプラグインというネイティブ環境で動作するものがリリースされたためそこまでの驚きはないかもしれませんが、LUNAが発表された当時は、同社のオーディオI/OであるapolloシリーズやアクセラレーターのUAD-2 Satelliteに搭載されているDSPを使わずに済むという点に驚いたものです。
なお、これらのLUNA Extensionsがミックスにどの程度の効果をもたらしているかを確認するために、ミキサー画面のMonitor Stripには、LUNA Extensionsだけをすべてバイパスするボタンがあります。一通り作業し終わった後にバイパスしてみると、恐らくかなり衝撃的な音の変わり方をするので、ぜひ試してみてください。ここまでが、LUNA特有の拡張機能LUNA Extensionsの紹介でした。ほかのDAWとの違いが一番分かりやすい部分だと思いますし、UNIVERSAL AUDIOの音楽制作に対する哲学が反映されている部分だとも感じます。
音の厚みを楽しめるソフトシンセUAD Instruments polyMAX Synth
ここからはUAD Instrumentsを紹介します。UADと言えばアナログのアウトボードを忠実にエミュレートしたUADプラグインというイメージが強い方も多いと思いますが、近年はそのモデリング/サンプリング/シンセシス技術を応用したピアノやエレピ、オルガン、シンセといったバーチャルインストゥルメント(ソフト音源)をリリースしています。このUAD Instruments、今でこそUADxプラグインとしてさまざまなDAWでも使えるようになりましたが、発表された当時は“LUNA Instruments”と呼ばれLUNA専用の音源であったため特別感がありました。
UAD InstrumentsはLUNA Extensions同様、一部を除きほとんどが有償ですが、バーチャルインストゥルメンツが有償であることに違和感を抱く人は少ないでしょう。ここでは、LUNA Pro Bundleに含まれているpolyMAX Synthを紹介します。
polyMAX Synthは、1970年代後半から1980年代にかけて活躍したアナログ・ポリフォニックシンセを基にしたバーチャルインストゥルメント。と言っても、僕はシンセについて詳しくありません。取りあえず分かるのは、polyMAX Synthはオシレーターを2基搭載し、エンベロープやLFOの設定のほか、空間系エフェクト処理ができることくらいです。
これだけだとほかのシンセとの違いが伝わらないので、プリセットを触ってみた所感を書いていきましょう。画面左にあるプリセットのブラウジングは直感的で、僕のようにシンセの操作が苦手なユーザーにも優しい作りとなっています。Poly、Bass、Leadといったタグをクリックすると、プリセットを自動的にフィルタリング。タグは複数組み合わせることができるので、プリセットの絞り込みは速いと思います。polymaxはアナログモデリング技術を使用しており、サンプルを読み込むタイプのソフト音源ではないためプリセットの切り替えも一瞬です。
polyMAX Synthは一つの画面にすべての要素が収まっていることと、CC1(コントロールチェンジ1)がモジュレーションホイールまたはビブラートのいずれかにあらかじめアサインされている点が、人によっては使いやすい部分かもしれません。いわゆるモダンで多機能なシンセのように複雑なマクロ設定で独創的な音色を作り出すタイプではなく、クラシックなシンセの特徴である“音の厚みを楽しむ”タイプであると言えるでしょう。
最後にUAD Instrumentsについて。LUNA Pro Bundleに含まれているのはpolyMAX Synthのみですが、それ以外にも魅力的なものが多いので、まずは気軽にデモ版を試してみてください。例えばElectra 88 Vintage KeysやMoog Minimoog Synth、Opal Morphing Synth、そのほかRavel Grand PianoやWaterfall B3 Organなどがあります。これらは機能制限なしで、14日間の使用が可能です(いずれもbeatcloudで販売中)。
今回はLUNA Extensionsの続きとLUNA Pro Bundleに含まれているUAD Instruments、polyMAX Synthをご紹介しました。次回はLUNA Pro Bundleに含まれているUADxプラグインエフェクトについてお伝えしていきたいと思います。また、このバンドルには含まれていない単体で販売されているUADxプラグインについては、後ほど回を改めてお話ししたいと考えています。それでは、また次回!
青木征洋
【Profile】作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』『ベヨネッタ3』『戦国BASARA3』などがある。自身が主宰し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラコンサートではミキシングを務める。
【Recent work】
『salvia』
Nornis
(Altonic Records)
UNIVERSAL AUDIO LUNA
LINE UP
LUNA:無償|LUNA Pro Bundle:58,650円*|LUNA Creator Bundle:88,050円*|LUNA Analog Essentials Bundle:88,050円*|LUNA API Vision Console Emulation Bundle:102,750円*
*いずれもbeatcloud価格
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15/11/12/13以降、Intel Quad Core 17以上のプロセッサー、Thunderbolt1/2/3、16GB 以上のRAM、SSDのシステムディスク推奨、サンプルベースのLUNA Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代)以降のiLok USB Keyでライセンスを管理