「PRESONUS Quantum 2626」製品レビュー:低レイテンシーを追求するThunderbolt接続のオーディオI/O

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 サンプル・レート192kHz/バッファー・サイズ64サンプル時に、入力~出力間のレイテンシーを最小1msに抑えるというThunderboltオーディオI/O=PRESONUS Quantumシリーズ。同社オーディオI/Oのハイエンド・ラインですが、今回新たに比較的リーズナブルな機種としてQuantum 2626が加わったので試してみました。

 

独自のクラスAプリアンプを8基搭載
ライン・アウトからはCVの送出も可能

 Quantum 2626はブラック基調のシックなデザインで、Mac/Windowsをサポート。最高24ビット/192kHzに対応のAD/DAコンバーターを搭載しています。入出力数はアナログ+デジタルで最大26イン/26アウト。フロント・パネルには独自のXMAXクラスAプリアンプを備えたマイク・インが8つあり、うち2つ(ch1/2)はインスト・イン、ほかの6つはライン・インとしても使用可能です。ch1/2は、アウトボードをインサートするためのプリアンプ・アウトおよびリターン・インをリアに装備。左端には48Vファンタム電源供給ボタン(ch1~4とch5~8のそれぞれに一括供給)も備わっているため、コンデンサー・マイクも入力できます。

 

 右側にマイク・インのゲイン・ノブ8つを挟んで、大ぶりのメイン・ノブがスタンバイ。出力レベルを−80~0dBの範囲でコントロールでき、本機をモニター・コントローラーのように扱えます。よく触るパラメーターを物理操作子でコントロールできるのは、うれしいですね。リアにはメイン・アウトL/ R、8つのライン・アウト、2系統のADATイン/アウト(S/MUX 対応)、1系統のS/P DIFコアキシャル・イン/アウトなどを装備。ライン・アウトはDCカップリングに対応し、モジュラー・シンセなどへのCV送出も行えます。

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背面には左からThunderbolt 3.0端子、ワード・クロック・イン/アウト(BNC)、2系統のADATイン/アウト(S/MUX 対応)、S/P DIFイン/アウト(コアキシャル)、MIDI IN、OUT、メイン・アウトL/R、ライン・アウト×8、リターン・イン×2、プリアンプ・アウト×2(以上TRSフォーン)が並ぶ

 さて、本機の使用にあたっては、PRESONUSのユーザー・アカウント・ページからUniversal Controlインストーラーをダウンロードし、コンピューターにインストールしておきます。それからQuantum 2626をコンピューターにThunderbolt接続すると、ヘッドフォン・アウト付近の同期ライトが点灯するのです。私は最初、このライトが点滅してしまい、同期がうまくいかなかったのですが、Universal Control内のオーディオ・ドライバーのバージョンを変えたところ、きちんと同期させることができました。自身のOSによってマッチするバージョンが異なるかと思いますので、最初の設定は注意深く進めた方がよいかもしれません。

 

クリアかつ中低域に押し出しのある音
ダイナミック・レンジが広く大音量に強い

 XMAXプリアンプにマイクをつなぎ、男性ボーカルとドラムを録音して音質をチェックしてみました。全体的にSN比が良く、クリアなサウンドですが、ただ奇麗というだけでなく、中低域の押し出しが特徴的で、密度のある音だと感じます。クリーンながらも芯があるため、どのようなソースにもマッチするでしょう。

 

 また個人的に気に入った点は、プリアンプとしてのダイナミック・レンジが大きいところ。ドラムを録っていてもひずむ気配が無く、余裕のある音が得られます。ドラムは大音量楽器なので、プレイによってはプリアンプのPADを入れなければならないこともあります。ですがオーディオI/Oの内蔵プリにはPADが無いことも多く、ドラム録りに向かなかったり、ソースを選ばなければならないことも少なくありません。XMAXがあれば、ひずみを心配することなく、余裕をもってレコーディングに臨めますね。またADATイン/アウトを備えるため、お好みの外部プリをデジタル接続することで、さらに多チャンネルの録音も可能。ドラムの皮モノをXMAXで、金モノを外部プリで録るようなバリエーションも得られます。


 次にライン・アウト。聴きたい部分にフォーカスしたようなガッツのある音質で、個人的には作業をしていてテンションが上がります。裏を返すと若干派手めな傾向とも言えますが、低域の押し出しがキックやベースのとらえやすさにも貢献しており、筆者が手掛けているようなロックによく合うと感じます。

 

 さて、レイテンシーの低さが特徴の本機ですが、弊社では普段、PRESONUS Studio Oneで32ビット・フロート/96kHzのプロジェクトを128サンプルのバッファー・サイズにて運用し、レコーディングしています。その際の入力レイテンシーは2.14ms。しかし今回Quantum 2626を使った際には1.42msで、約半分になりました。さらに、サンプル・レートを192kHzにしたときは0.71msをたたき出すなど、1msを切る速度を記録。まさに“PRESONUS史上最高速”という触れ込みにいつわり無しといったところです。

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筆者の使用するPRESONUS Studio Oneは、デバイスブロックサイズという欄で、いわゆるバッファー・サイズを設定する。これはQuantum 2626を96kHzで使ったときのオーディオ設定画面。入力音のレイテンシーが1.42msと、普段の環境の半分ほどになった

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192kHz 動作時は入力レイテンシーが0.71msに

 そのほか、Universal Controlと連携するアプリUC Surfaceを使用すると、APPLE iPadやAndroidタブレットなどでQuantum 2626の入出力レベルや周波数アナライズを見ることが可能。私はアナライザーを活用することが多いので、iPadをそれ専用のディスプレイとして使えるのは非常に好印象です。

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iOSやAndroidに対応するアプリUC Surfaceでは、Quantum 2626の入出力レベルや周波数特性を監視可能

 Quantum 2626は、同価格帯のオーディオI/Oの中で至れり尽くせりな製品かと思います。レイテンシーの短縮にフォーカスしているのは、ユーザー目線に寄り添っているからこそでしょう。コスト・パフォーマンスも高く、素晴らしい一台です。

問い合わせ:エムアイセブンジャパン

製品ページ:https://www.mi7.co.jp/products/presonus/quantum/

PRESONUS Quantum 2626

オープン・プライス

(市場予想価格:68,000円前後、7月31日(金)までのイントロ価格:63,455円前後)

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SPECIFICATIONS ▪接続:Thunderbolt 3.0(1.0/2.0 互換) ▪入出力数:アナログ+デジタル26 イン/26アウト ▪ビット/サンプル・レート:最高24ビット/192kHz ▪ダイナミック・レンジ:110dB 以上/マイク・イン、118dB 以上/ライン・イン(いずれもA-weighted、最小ゲイン) ▪周波数特性:20Hz~40kHz/マイク・イン(±0.22dB、ユニティ・ゲイン、96kHz) ▪外形寸法:482.6(W)×44.45(H)×178(D)mm ▪重量:2.7kg

REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.11.6以降 ▪Windows:Windows 10(64ビット) ▪共通:INTEL Core I5プロセッサー以上、4GB以上のRAM(8GB 以上を推奨)、Thunderbolt 1.0、2.0または3.0 端子(コンピューターのマザー・ボードがThunderboltに対応している必要あり)

 

www.snrec.jp

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