Studio One 3との連携で
ゼロ・レイテンシー・モニタリングを実現
Studio 192は定評ある同社のDAWソフトStudio One 3と高度な連携が可能で、同ソフトのZ-Mix機能を使用することでゼロ・レイテンシー・モニタリングを実現する。またモニター・コントローラーとしての機能も充実しており、DimやMonoをStudio One 3から直接操作できるほか、8系統あるアナログ出力を活用すれば、複数のモニター・スピーカーの切り替えにも対応。ほかにも内蔵トークバック・マイクやそれぞれ任意のミックスをモニターできるヘッドフォン出力×2系統を備え、さまざまなプロジェクトを行うスタジオのセントラル・ハブとして機能するようデザインされている。パッケージにはStudio One Artistがバンドルされるが、もちろんAVID Pro ToolsなどほかのDAWソフトで使用することも可能だ。
本機はリモート・コントロール可能な8基のXMAXマイク・プリアンプを搭載。30Vのハイボルテージ・パワー・レールにより広大なヘッド・ルームとダイナミック・レンジを実現しているという。トランジスター、レジスター、コンデンサーのみのディスクリート回路(クラスA)で構成されており、一般的なオペアンプから発生するノイズ、色付け、ザラついた質感を取り除いた、透明度の高い音色が得られるそうだ。このマイクプリは、ゲイン、各チャンネルで独立してオン/オフできる48Vファンタム電源、位相反転などをStudio One 3やAPPLE iPadアプリから直接コントロールでき、設定をレコーディングした内容とともにStudio One 3のプロジェクト・ファイルに保存することが可能になっている。
ヘッド・ルームに余裕を感じさせる
素直でナチュラルな録り音
では実際にレコーディングしながら音質をチェックしていこう。入力端子はフロントに2基、リアに6基用意され、入力ゲイン幅は85dBと余裕の値だ。まず無音状態でノイズを確認してみたが、S/Nは全く問題無いレベルだったので、ダイナミック・マイクをつないでアコースティック・ギターを録音してみた。
サウンドはとてもナチュラル。派手さは無く、素直な音色と言える。私はモバイル用として、同社のFireStudio Projectを所有しているが、それよりもさらにナチュラルになった印象だ。個人的にはもう少し色付けのあるサウンドが好みなのだが、中途半端な色付けをされるよりは、この自然な感じの方が好感が持てる。マイクの選択やミキシングで色付けをしていく設計思想だと感じた。
次にコンデンサー・マイクを立ててボーカル録音も試してみたが、音の印象は変わらずにナチュラル。ヘッド・ルームがかなり大きいので簡単にひずまないし、しっかりとした音色で録音することができた。
音質に定評あるFat Channelを
かけ録りにも活用可能
次に操作性のチェックのためにStudio Oneを立ち上げて操作してみた。Studio 192のドライバー・コントロール・ソフト、UC Surfaceをインストールすると、Studio One 3のコンソール画面にマイクプリのゲインやファンタム電源のオン/オフ、位相反転スイッチなどが追加される(画面①)。もちろん本体側でもゲイン・コントロールをはじめとする一連の操作は可能。大ぶりのボリューム・ノブは操作性が良く、ライブ・レコーディングなどスピーディな操作が要求される現場では有利だろう。
Studio One側でのゲイン・コントロールはボリューム・タイプではなく数値を直接入力する形だが、マウスに付属するジョグ・ダイアルなどでゲインの上げ下げが可能。ほかにパンやボリューム・センドのレベルも同様に操作できるので、細かな調整をしたい場合は積極的に使ってもらいたい機能の一つだ。また先述した通り、これらの設定がリコールできるのは、日をまたいだ録音が複数あるツアー時などは非常に便利。前回の公演のマイクプリや位相反転スイッチなどの設定がソング・データとともに立ち上がるので、現場では大変助かるだろう。
もう一つ特筆したいのは、Studio 192の内蔵DSPを使えば、Fat Channelプラグインをリアルタイムでのかけ録りに使える点。これはライブ録音の現場でも役立つ機能で、本機の強みでもある(画面②)。
さらに素晴らしいのは、Fat Channelの動作がコンピューターのCPU/本機のDSPのハイブリッドであることだ。これにより再生はコンピューター側、録音は本機のDSPでプラグインを動作させつつ、同じオーディオをモニターしながらパンチ・インするような操作も可能になった。
Studio 192の機能/音質は大変に魅力的で、コスト・パフォーマンスの高さは特筆すべきものがある。高品位なマイクプリを8基搭載しているので、これからDAW環境を構築したいと考えているミュージシャンのファースト・ステップとしてもお薦めできる一台だ。
製品サイト:http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studio192/
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年2月号より)