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「PRESONUS Quantum」製品レビュー:低レイテンシー化を目指したThunderbolt接続オーディオI/O

PRESONUSQuantum
コンピューター中心の制作システムで最重要な機材の“オーディオ・インターフェース”。安いものは数千円から、上は数百万円までさまざまな種類の機種が存在していて、実際に何を選べば良いのかプロでも悩むところです。そんなオーディオ・インターフェースで重要となってくる“レイテンシー”を極限まで追求したPRESONUSの新製品、Quantumをレビューしたいと思います。

接続方式にThunderboltを採用
DSPをあえて使用せず低レイテンシーに

PRESONUSといえば筆者も愛用しているStudio OneというDAWがありますが、オーディオ・インターフェースのラインナップも充実していて、1万円台のエントリー・モデルからミドル・ユーザー、プロ・ユーザーをターゲットにしたモデルまで多種存在しています。そんな中、DSPをあえて使用せず極限まで低レイテンシーを実現したのがQuantumです。

まずは外観から見ていきましょう。今までのPRESONUS製オーディオ・インターフェースとは大きく変わり、ダークなカラーのフロント・パネルが印象的。スイッチや端子は同社のStudio 192と同じ配置で、フロント・パネルにはHi-Zと48Vファンタム電源供給に対応するXMAXプリアンプ搭載のXLR/フォーン入力端子×2のほか、各種ボタンやノブ、独立した2系統のヘッドフォン・アウトを搭載しています。リア・パネルにはXMAX搭載のXLR/フォーン入力端子×6、メイン・アウト(フォーンL/R)、ライン・アウト×8(フォーン)、クロック入出力(BNC)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、ADAT&S/MUX IN×2とOUT×2(オプティカル)、MIDI IN&OUT、Thunderbolt端子×2を装備。最大26イン/32アウトに対応します。コンピューターとの接続にThunderboltを採用したのもレイテンシーを低くするためでしょう。Mac/Windowsで設定は異なりますが、4台までの増設に対応し、104イン/128アウトの巨大システムの構築が可能となっています。

先述したレイテンシーですが、“アナログ信号が入力されてコンピューターを経由し、出力されるまでの遅延”と理解してもらってよいでしょう(ラウンドトリップとも言います)。なぜそんなにレイテンシーが大事かと言うと、例えば録音時に音の遅れを意識するあまり、前のめりのリズムで演奏してしまうことがあります。すべてのパフォーマンスにかかわってくるレイテンシーは、さまざまな悪影響を及ぼすことがあるのです。

プリアンプは存在感と芯のある音質
ソフトウェア/アプリでリモート操作も可能

続いて、Quantumを使ってレイテンシーを実際に確認してみましょう。筆者の環境でのレイテンシー実測値は5.83msでした(サンプリング・レートが48kHz、バッファー・サイズが128サンプル時)。ちなみに、筆者愛用のオーディオ・インターフェースでは7.15msという値だったので、その速さが一目瞭然(りょうぜん)です。サンプリング・レートを192kHz、バッファー・サイズを最小の16や32サンプルなどにすれば、もっと低レイテンシーになりますが、先述したような設定が現実的でしょう。

入力の要であるマイクプリには、PRESONUSが誇るリコーラブルXMAXプリアンプを8基実装。女性ボーカルを録音してみたところ、スッキリとしながらちゃんと存在感と芯のある音質になっていました。その後のEQやコンプの処理がスムーズにできる癖の無いサウンドです。既にビンテージ系のプリアンプを所有している方はバリエーションとして使い分けしてもよいでしょう。

出音もチェックしてみるとダイナミック・レンジが広く、奥行きが感じられます。高級機にも負けない音質ですね。ブライトなので、音圧のあるジャンルに合っている気がしますが、筆者が試聴したハービー・ハンコックとダフト・パンクのハイレゾ音源も気持ち良く聴けました。アナログ・アウトはメイン・アウトのほかに8つあるので、サブのスピーカーやハードウェアのインサートにも十分に対応できそうです。

Quantumはリモート・コントロールも可能で、Mac/Windows/APPLE iPadではUC Surface、AndroidデバイスではQMix-UCというソフトウェア/アプリで各種機能の操作が行えます。また、Studio One 3の画面上でプリアンプやミュート、ディマー、トークバックの設定が可能。ただ残念なのが、Studio 192に搭載されていたスピーカーの切り替え機能が無くなっています。今後の対応を期待したいです。

また、Quantumには同社のStudio One Airtist、そしてEVENTIDEやLEXICON、PLUGIN ALLIANCEなどの即戦力となるプラグインが収録されたStudio Magicプラグイン・スイートが付属します。コンピューターさえ持っていれば、すぐに制作できる環境がスタンバイOKとなりますね。

基本でありながら見落としがちな“レイテンシー”に真っ向から勝負に出たQuantum。超低レイテンシーの世界を実感してみてはいかがでしょうか。

▲Quantumのリア・パネル。左から、MIDI IN&OUT、Thunderbolt端子×2、ADAT&S/MUX OUT×2とIN×2(オプティカル)、クロック入出力(BNC)、S/P DIF IN&OUT(コアキシャル)、Main Out(フォーンL/R)、Line Outputs×8(フォーン)、Mic/Line Inputs×6(XLR/フォーン) ▲Quantumのリア・パネル。左から、MIDI IN&OUT、Thunderbolt端子×2、ADAT&S/MUX OUT×2とIN×2(オプティカル)、クロック入出力(BNC)、S/P DIF IN&OUT(コアキシャル)、Main Out(フォーンL/R)、Line Outputs×8(フォーン)、Mic/Line Inputs×6(XLR/フォーン)
▲Studio One 3からQuantumをリモート・コントロールできる。コンソール画面の右端ではトークバック機能のオン/オフ、トークバックのレベル調整、ヘッドフォン・アウトに送るチャンネルの設定、メイン・アウトを−20dBするディマー、メイン・アウトのミュート、メイン・アウトのモノ・ミックスが可能だ。各オーディオ・トラックのコンソールでは48Vファンタム電源のオン/オフ、ゲインの調整、ヘッドフォン・アウトに送るレベルを調整してモニター・ミックスも行える ▲Studio One 3からQuantumをリモート・コントロールできる。コンソール画面の右端ではトークバック機能のオン/オフ、トークバックのレベル調整、ヘッドフォン・アウトに送るチャンネルの設定、メイン・アウトを−20dBするディマー、メイン・アウトのミュート、メイン・アウトのモノ・ミックスが可能だ。各オーディオ・トラックのコンソールでは48Vファンタム電源のオン/オフ、ゲインの調整、ヘッドフォン・アウトに送るレベルを調整してモニター・ミックスも行える
▲無償のソフトウェア/アプリのUC Surface(Mac/Windows/APPLE iPad用)。Quantumの各インプット・チャンネルやメイン・アウト、ヘッドフォン・アウト、トークバックの設定をリモートで行える。AndroidデバイスからはQMix-UCというアプリで操作できる ▲無償のソフトウェア/アプリのUC Surface(Mac/Windows/APPLE iPad用)。Quantumの各インプット・チャンネルやメイン・アウト、ヘッドフォン・アウト、トークバックの設定をリモートで行える。AndroidデバイスからはQMix-UCというアプリで操作できる

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年12月号より)

PRESONUS
Quantum
オープン・プライス(市場予想価格:118,519円前後)
▪接続形式:Thunderbolt 2 ▪オーディオ入出力数:最大26イン/32アウト(アナログ+デジタル) ▪マイクプリ搭載数:8 ▪ビット&サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪最大入力レベル:+10dB(マイク・イン、最小ゲイン) ▪ダイナミック・レンジ:110dB(マイク・イン) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(48kHz時)、20Hz〜40kHz(96kHz時) ▪外形寸法:482.6(W)×44.45(H)×177.8(D)mm ▪重量:2.72kg REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.11.6以降 ▪Windows:Windows 10(64ビット) ▪共通項目:INTEL I5以上のプロセッサー、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)、Thunderbolt 1または2ポート、インターネット接続環境(登録および付属ソフトウェアのダウンロード時に必要)、30GB以上のハード・ディスク容量(7,200RPM以上を推奨)、1,366x768ピクセル以上の解像度を持つモニター