「MXL Revelation Ⅱ」製品レビュー:無指向/単一指向/双指向間を無段階で調節可能な真空管マイク

MXLから真空管を使ったコンデンサーマイク「Revelation II」が発売された

 MXLから、クラシック・チューブの温かみと豊かな中域を持つ真空管マイク、Revelation IIが発売されました。MXLは、ロサンゼルスで30年にわたりプロフェッショナル向けオーディオ/ビデオ製品の開発、生産、ディストリビューションを行ってきたMARSHALL ELECTRONICSのマイクロフォン・ブランドです。スタンダードな設計のマイクを入手しやすい価格帯で発売しているため、なじみのある方も多いのではないでしょうか。筆者も初めて購入したコンデンサー・マイクはMXL V67Gでした。

ELECTRO-HARMONIX EF86管を採用
指向性や位相反転が可能な電源モジュール

 化粧箱を開けるとアルミ製のフライト・ケースが出てきます。その中には、Revelation II本体、電源モジュール、電源モジュール〜マイク間のケーブル、マイク・ケーブル、クロス、サスペンション・ホルダーとサスペンション・ホルダーの予備のゴム、フライト・ケースの鍵が入っています。サスペンション・ホルダーの予備のゴムはありがたいですね。なお、サスペンション・ホルダーのネジ穴は5/8インチになっているので、K&Mなどの3/8インチ・ネジのマイク・スタンドに取り付ける場合には、変換ネジが必要です。

本体はフライト・ケースに収納されている。電源モジュールからマイク間のケーブル、マイク・ケーブル、電源ケーブル、ショック・マウント、ショック・マウント用の予備のゴムが付属している

本体はフライト・ケースに収納されている。電源モジュールからマイク間のケーブル、マイク・ケーブル、電源ケーブル、ショック・マウント、ショック・マウント用の予備のゴムが付属している

 マイク本体のサイズは63.5(φ)×190(L)mmで、重量は907g。真空管マイクの中では割とスタンダードなサイズです。真空管はELECTRO-HARMONIX EF86を採用。本体には−10dBのPADスイッチが付いています。

真空管はELECTRO-HARMONIX EF86を採用。リア側に−10dBのPADスイッチも備える

真空管はELECTRO-HARMONIX EF86を採用。リア側に−10dBのPADスイッチも備える

 サスペンション・ホルダーはマイク本体の底面とネジで固定するタイプで、1kg弱の本体を支えるのに十分な非常にしっかりした作りになっています。マット・ブラックの仕上げも個人的にはポイントが高いです。

 

 電源モジュール〜マイク間のケーブルおよびマイク・ケーブルはMOGAMI製です。MARSHALL ELECTRONICSはアメリカでのMOGAMIの受注窓口もやっているようなのでMOGAMIのケーブルを採用しているのでしょう。

 

 電源モジュールのサイズは120(W)×75(H)×230(D)mm(ゴム足、ノブ除く)で、重量は1.6kgほど。電源モジュールには、指向性を無段階で調節できる可変ノブ、ハイパス・フィルターのスイッチ、位相反転のためのフェイズ・スイッチ、LIFT/GNDスイッチが付いています。

電源モジュールには、無指向性〜単一指向性〜双指向性を無段階で調整できる可変ノブを搭載するほか、ハイパス・フィルターや位相を切り替えるフェイズ・スイッチも備える

電源モジュールには、無指向性〜単一指向性〜双指向性を無段階で調整できる可変ノブを搭載するほか、ハイパス・フィルターや位相を切り替えるフェイズ・スイッチも備える

 Revelation IIの特徴の一つが、指向性を無指向/単一指向/双指向間で調節できる可変ノブです。先述の通り、無段階で調節できるため、無指向と単一指向の中間や双指向と単一指向の中間の単一指向寄りといった細かい設定ができます。これをうまく調整することで、スタジオの部屋鳴りや声/楽器の音の回り込みに変化を付けることができるのです。ただ、可変ノブを回し切ったときと、回し切りから戻すときにブツっという音が出てしまいますので、その際はミキサーやレコーダー側でミュートするなど若干の注意が必要です。

低域の下の方までしっかりと収音
高域をブーストしても耳に痛くない落ち着いた音色

 実際にサウンドをチェックしていきましょう。今回は比較用として、SHURE SM58と真空管マイクNEUMANN M147を用意し、プリアンプはRMEのオーディオ・インターフェースFireface UFX内蔵のものを使用しました。

 

 声を録音してみたところ、自然な感じで高域が伸びるフラットな音質が得られました。M147が2kHz辺りから持ち上がってカラッとする音質なのに対して、Revelation IIは落ち着いた雰囲気。低域も下の方までしっかり録れているので、ボーカリストを選ばず、さまざまな場面で使えそうです。音質の傾向だけで言うとSM58と似た感じなのですが、より分厚いので、音数が多い中でも埋もれなさそうです。

 

 続いてアコースティック・ギターの録音を試してみました。こちらもボーカル同様に落ち着いた雰囲気です。M147がアコギのソロ演奏に向いているような音色であるのに対して、Revelation IIはバッキングにうってつけな音色です。EQ処理で高域をブーストしてもキンキンした嫌な感じにならず、良い空気感が出てきました。こちらも指向性を調節するとアコギの鳴りのとらえ方が変わるので、録りの段階での音作りに役立ちます。

 

 Revelation IIの販売価格は税込で6万円ほどということで、真空管マイクの中では比較的リーズナブルな製品ですが、MXLのマイクの中ではフラッグシップ・モデル的な位置付けの製品だと思われます。MXLからはほかにも手ごろなチューブ・マイクが発売されていますが、MXLの真空管マイクの中で指向性を無段階で切り替えられるのはRevelationIIだけです。そういった面でもかなりお得感がありますね。人や楽器を選ばずさまざまな場面で使えそうな音質なので、初めての真空管マイクとしてもお薦めです。

 

濱本洋平
【Profile】フリーランスでPAやレコーディングを手掛けるエンジニア。これまでに集団行動やSHE IS SUMMER、GARLICBOYS、あっぱ、Vampilliaなど、多くのアーティストのライブや作品に携わる。

 

MXL Revelation Ⅱ

オープン・プライス

(市場予想価格:54,800円前後)

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SPECIFICATIONS 
▪形式:コンデンサー ▪ダイアフラム:デュアル・スパッタ・ゴールド、6μ厚 ▪真空管:EF86 ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪指向性:無指向〜単一指向〜双指向の無段階可変 ▪出力感度:−40dB/Pa ▪インピーダンス:140Ω ▪PAD:−10dB ▪ハイパスフィルター:12dB/oct@125Hz ▪等価ノイズ:−18dB(A-weighted IEC 651) ▪SN比:76dB ▪最大SPL:138dB ▪外径寸法:63.5(φ)×190(L)mm ▪重量:907g ▪付属品:ケーブル(電源モジュール〜マイク間)、マイク・ケーブル、アルミニウム・フライト・ケース、クロス、電源モジュール、サスペンション・ホルダー

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