「MACKIE. Element Series」製品レビュー:音質と耐久性を両立した単一指向性ダイナミック&コンデンサー・マイク

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Photo:川村容一

 ミキサーやスピーカーでおなじみのMACKIE.から、単一指向性のマイクが3機種登場しました。同社初となるマイク群の名はElement Series。30年以上ライブおよびレコーディング機材を設計してきた技術を投じ、高品位なサウンドを実現しているとのこと。それでは全機種チェックしていきましょう。

全機種にマイク・ケーブルとホルダーが付属
太い音で接触音を拾いにくいEM-89D

 まずはダイナミック・マイクのEM-89Dから紹介します。ライブでの歌唱をはじめ、レクチャーやテキスト・リーディングといった声の収音に適しているマイクとのこと。楽器の収音も柔軟にこなせるよう作られているそうです。

 

 続いて、EM-91Cは48Vファンタム電源で動作するコンデンサー・マイクです。ラージ・ダイアフラムならではの深みのある低域と、のびやかな高域を実現しているとのこと。ボーカルはもちろん、アコギなどの弦楽器やドラムのオーバー・ヘッド用マイクとして、レコーディングに最適なモデルです。

 

 最後に、EM-USBは最高16ビット/48kHzに対応のUSBオーディオI/Oを内蔵するコンデンサー・マイク。USBケーブルでMac/Windowsとつなぐだけで音の取り込みが可能で、ライブ配信などに最適なモデルです。ミュート・スイッチ、ゲイン・ノブ、ヘッドフォンの音量調節ノブを搭載しています。 

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EM-USB。ミュート・スイッチ、ゲイン・ノブ、ヘッドフォン・ボリューム・ノブを搭載する

 底面にはUSB Type-C 端子と、ヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)を配備。Type-CとType-Aの端子を備えたUSBケーブル2本が付属します。そしてMACKIE.はこれらのマイクを“ 戦車級に頑丈”とうたっていますので、持ち運びも安心。マイク・ケーブルやホルダーなどが付属するので、開封後すぐに使えます。

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EM-USBの底面には、USB-C端子とヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)がスタンバイ

  戦車級という言葉から“もしかしてかなり重い?”と恐る恐る取り出してみましたが、一般的な重量で一安心。デザインは共通してMACKIE.らしいポップな雰囲気ですが、材質から頑丈そうなオーラが漂っています。前述の通り付属品が充実しているので、さくっと使い始められました。

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左からEM-89D、EM-91C、EM-USB。それぞれマイク・ホルダーが付属しているほか、ケースやマイク・ケーブルなども同梱している

  まずEM-89D。握り心地はSENNHEISER E945に似た良いホールド感です。ライブでは重過ぎたり持ちにくいとストレスになりますからね。気になったのは、グリルが取り外せないこと。しかし頑丈さとのトレード・オフだと思いますので、仕方の無いことだとも思います。

 

 SHURE SM58と音色を比較してみましょう。EM-89Dには低域がしっかりしている印象を持ちました。男性の声のローエンドが欲しいときなどは重宝しそうです。場合によってはオンマイクだと低域が強過ぎることがありそうだと感じました。接触音を拾いにくいのも良いですね。ハンドヘルド・マイクはライブ用というイメージがあるかもしれませんが、コンデンサー・マイクに比べて環境音を拾いにくいので、自宅での録音にもお薦めできます。また、SM58のほど低音がロール・オフしていないので、楽器類でも良い結果が得られそうです。

 

周波数特性のバランスが良いEM-91C
クリアな特性で声が聴き取りやすいEM-USB

 次はEM-91Cを試してみます。まず感じたのは、重量がすごく軽いということ。重いコンデンサー・マイクを使うとマイク・スタンドのブームが重さに耐えられずおじぎしてしまうこともありますが、これなら安心です。

 

 コンデンサー・マイクのRODE NT2-Aと比較してみます。EM-91Cは出力が大きいため、マイクプリのゲインをそれほど上げなくても使えます。SN比を考えるとメリットになってきますね。周波数特性のバランスが非常に良いです。NT2-Aと比べると高域がもの足りなく感じますが、その分リップ・ノイズなどは目立ちにくい印象。コンデンサー・マイクの高音がヒリヒリする感じが苦手な方にお薦めできるマイクです。

 

 最後に試すのはEM-USB。個人的には今一番試したいタイプのマイクです。COVID-19の影響もあり、講座を持っている学校は一部の授業がオンデマンド方式になり、自ら動画を撮影することが増えました。コンピューターの内蔵マイクでは聴き取りづらい音になってしまいますから、マイクでの収音は欠かせません。音声を一般的なマイクで収録する場合、マイクプリとオーディオI/Oも必要になります。USBケーブル1本でコンピューターに接続できるUSBマイクは、特に電車通勤の筆者にとっては必須アイテムなのです。

 

 それでは使っていきましょう。MacにUSBケーブルを接続するだけで、Core Audioが認識します(WindowsはASIO)。コンピューターの入力をEM-USBにし、ゲイン・ノブを上げて設定完了。すぐに収録を開始できました。ヘッドフォン出力は、コンピューターからの音声再生用で、マイクの音はダイレクト・モニタリングできません。DAWなどを経由してモニターする必要があります。

 

 授業に使う動画の音声はフィールド・レコーダーZOOMH2Nで録っていたのですが、音質/機能共にこの用途ではEM-USBに軍配が上がりました。声が聴き取りやすいクリアな音色です。ミュート・スイッチが付いているので、会議中に席を外す場合などで便利ですね。付属する卓上スタンドもしっかりとした作りで安定感があります。

 

 どれも実用的な品質に仕上がっていると思いました。初めてのマイクとして薦めやすい価格帯もMACKIE.ならでは。特に自宅での収録に最適なマイクです。

 

西川文章
【Profile】 大阪を拠点に活動するPA/レコーディング・エンジニア。大小さまざまな会場を回り、豊富な経験を持つ。かきつばたやブラジルなどのプロジェクトで、ギタリストとしても活躍している。

 

MACKIE. Element Series EM-89D

オープン・プライス(市場予想価格:8,600円前後)

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▪カプセル:ダイナミック ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:50Hz〜16kHz ▪外形寸法:180(H)×51(φ)mm ▪重量:0.3kg

 

MACKIE. Element Series EM-91C

オープン・プライス(市場予想価格:8,600円前後)

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▪カプセル:コンデンサー ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜18kHz ▪外形寸法:155(H)×48(φ)mm ▪重量:0.21kg

 

MACKIE. Element Series EM-USB

オープン・プライス(市場予想価格:18,300円前後)

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▪カプセル:コンデンサー ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:30Hz〜18kHz ▪外形寸法:180(H)×46(φ)mm ▪重量:0.39kg
REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.10 以上 ▪Windows:7、8.1、10 ▪共通:USB 2.0/3.0 端子

 

製品情報

mackie-jp.com

 

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