高域は伸びのある明るいサウンド
TR-808系キックの輪郭も鮮明に聴こえる
本シリーズの注目ポイントは、上位機種に採用されていた最大入力ゲイン60dBのOnyxマイク・プリアンプが搭載されていることです。ProFX12V3には7基のOnyxマイクプリが実装。うち2系統はHi-Z入力にも対応しています。ch1〜4にはワンノブ・コンプも用意。内蔵エフェクトもProFX V2シリーズからアップデートされていて、24種類のプログラムを備えたエフェクト・エンジンGigFXや24ビット/192kHzまで対応するUSBオーディオI/Oも内蔵しています。AVID Pro Tools|FirstとTRACTION Waveform OEMのライセンスや23種類のAAXプラグインMusicians CollectionとWaveform用のプラグイン集The DAW Essentialsのライセンスも付属しているなどかなりの充実ぶりです!
早速箱から出して持ってみると、想像よりも軽く感じました。重量は3.6kgなので、第2世代の同じ入力チャンネルを持つモデル、ProFX12V2よりも500g軽いですね。本シリーズならではの戦車級に丈夫な作りは強度を増しており、持ち運びを前提とした小型ミキサーの中では安心感も桁違いにあります。電源コネクター部と電源スイッチ、USBポート以外はすべてフロント・パネルに配置されていますが、乱雑にならず視認性に優れたレイアウトになっている点もさすがです。MUTEスイッチに関しては丸いタイプで、オンにするとボタン自体が赤く点灯します。本番での暗いライブ会場で確認しやすいですし、見た目も格好良いので非常に良いと感じました。
まずは本機を通して2ミックスのマスタリング済み音源を聴いてみます。再生してみると、ダイナミック・レンジが広くてパッド・ストリングスなどは高域に伸びのあるMACKIE.ならではの明るいサウンドを確認できました。さらにROLAND TR-808系キックの輪郭がぼやけることなくはっきりと聴こえてきます。チャンネルEQは高域が12kHz、中域が2.5kHz、低域が80Hzの周波数固定になっています。各帯域のEQカーブが的を射ていて限りなくイメージに近い調整ができました。2ミックスにEQをかけるといろいろなパートに影響を及ぼすので、雑な調整は曲のバランスを破たんさせがちです。しかし、本機のEQは自然にかかりつつ変化も見えやすいので、かなり使い勝手が良いと感じました。
24種類のエフェクトを備えるGigFX
リバーブは滑らかな残響音で密度が高い
次にボーカルと幾つかの楽器を入力して、サウンド・チェックしてみましょう。ちょうど筆者のユニットでのライブ・リハーサルがあったので本機を実践的に試してみました。ボーカルはSHURE SM58を使用し、アコギはSHURE SM57で拾います。まずは各パートの音を単体で聴いていきましょう。
Onyxプリアンプによって、ボーカルとアコギのどちらも音質がクリアかつ低ノイズで非常に驚きました。特にアコギがとても自然なサウンドで、アタック感も心地良いです。プレイヤーの演奏にも良い影響が得られると思います。ボーカルは高域の伸びが素晴らしく、語尾までハッキリと聴こえるのでボーカリストは“非常に歌いやすい”とのことでした。第2世代に搭載されていたプリアンプとはあらためて別物だと感じます。
ユニットで演奏した際の音の混ざり方ですが、低中音域で嫌なピークが出にくいのでミックスしやすいです。第2世代に搭載されていたグラフィックEQはなくなりましたが、各チャンネルのEQですばやくサウンドをまとめることができました。
24種類のエフェクターを内蔵したGigFXに関しては、特にリバーブの精度が上がっていました。リバーブ成分の密度が濃くてザラつきもなくなり、とてもスムーズに残響が聴こえてきます。パラメーターは固定されていますが、11種類の質感とリバーブ・タイムが用意されてるのでさまざまな曲調やテンポに対応できそうです。そのほかのエフェクトには、ディレイ、オーバードライブ、ディストーション、オート・ワウ、フランジャーなども用意されています。ベースやギターはもちろんのこと、ドラムに使っても面白い効果が得られそうです。
最後に、2イン/4アウトで最高24ビット/192kHzに対応しているUSBオーディオI/Oとしての機能もチェックしてみましょう。本機とMacをUSBで接続するだけで、ドライバーをインストールする必要なく認識してくれます。ちなみにWindowsでは、ドライバーのインストールが必要です。DAWソフトから“ProFX”を選ぶと、USB経由での入出力を簡単に行うことができました。DAWからの出力音(USB 1−2)とミキサーからの出力音をブレンドすることができるBLENDシングル・ノブによって、演奏の発音のレイテンシーに悩まされることなくモニタリングできますし、よりシームレスなレコーディング環境も得られそうです。録音されるのはMAINフェーダー直前のステレオ信号。再生時はUSB 3−4をch11/12にアサインできます。
総評としては、非常に良いと思います。本シリーズの中で、入力が6ch、10chのモデルはボリュームがノブ・タイプになっているのですが、ステージ上でギター演奏とミキサー操作も行う筆者としてはノブ・タイプが好みなので、10chモデルのProFX10V3を導入しようかと検討中です。6chのProFX6V3はサブミキサーとしてはもちろんのこと、生配信系YouTuberなどの音声用ミキサーとしても活躍すると思います!
(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年3月号より)