HK AUDIO Polar 8 レビュー:簡易な操作で運用できる小規模PAに最適なコラム型パワードPAシステム

HK AUDIO Polar 8 レビュー:簡易な操作で運用できる小規模PAに最適なコラム型パワードPAシステム

 今回レビューするのは、ドイツの音響機器メーカー、HK AUDIOがリリースした、自立式パワードPAシステム“Polarシリーズ”の最軽量モデル、Polar 8です。

水平120°の指向角で広いエリアをカバー シンプル操作の3chミキサーを内蔵

 HK AUDIOは、なじみの音響機材屋さんが同社のスピーカーを持っていたこともあり、筆者にとっては身近なメーカーです。そんなHK AUDIOのPolar 8ですが、8インチのサブウーファーの上に、2.5インチ・ツィーターを6基備えるラインアレイ型高域スピーカーを差し込むという、ここ最近おなじみになってきたコラム型パワードPAシステム。可搬性が高く設置も楽ですし、なにより倒れたりする危険性が少ないところがいいですよね。最大出力1,200W、クラスD方式のパワー・アンプを内蔵し、周波数レンジは50Hz〜20kHz。指向角が水平120°なので、1台で会場内の広いエリアをカバーできます。

 Bluetooth 5.0に対応しており、Polar 8を2台用意すればBluetooth TWS(True Wireless Stereo)機能により、ステレオでの再生が可能。3chミキサーを内蔵しているので、他にミキサーなどを用意しなくても、これ一台でPAシステムが完結します。シンプルな操作子で非常にわかりやすく、ハウリングしにくい構造になっているので、PA操作に不慣れな人でも安心ですね。

 重量は、サブウーファーが13.8kg、高域スピーカーが3.2kgでトータル19.3kg。高さを上げるためのスペーサーが入っているので、使わない場合はトータル17kgになります。搬送用のバッグが付属していますので、それに入れれば一人でスムーズに搬入出できるでしょう。

 高さは、スペーサーも入れて設置すると202.9cmになります。思ったより背が高い印象です。これだけ高域スピーカーが高く上がれば、人が立っていても後方まで音が届くでしょう。設置はサブウーファーにハイボックスを差し込むだけなので簡単です。また、その接続する端子部分がかなりしっかりした作りになっているので、壊れにくいでしょうし、接続不良なども起きにくいでしょう。見た目のデザインもチープな感じは全くなく、頑丈で高級感があります。

 次にサブウーファー上部のミキサー部分をチェック。3系統の入力が可能で、CH1とCH2の上にマイク/ライン切り替えスイッチ、下にはXLR/TRSフォーン入力用のコンボ端子を装備。コンボ入力なので、マイクやキーボード、アコギなどを接続可能です。マイク/ラインの入力をスイッチで切り替えると、あとはワンノブで音量調整できるので、音響機材に慣れない人でも簡単に操作できますね。

サブウーファー上部に搭載されたミキサー。左から順にCH1/2/3の入力音量を設定するノブが並ぶ。CH1/2にはマイク/ラインの切り替えスイッチとXLR/TRSフォーンのコンボ・ジャック、CH3にはRCAピン入力端子を装備。その横に、Bluetooth接続用/Bluetooth TWS Link用のそれぞれのスイッチがあり、接続準備が整うと点滅、接続されると常時点灯する仕様。その下にはMix Out(XLR)が用意されている。右端には高域スピーカー(Treble)/サブウーファー(Sub)、そしてマスター(Master)の音量を調節するノブを装備。右端最上部のインジケーターは電源がオンになると緑のOn部分が点灯、音量がピークに達した場合は赤のLimit部分が点灯する

サブウーファー上部に搭載されたミキサー。左から順にCH1/2/3の入力音量を設定するノブが並ぶ。CH1/2にはマイク/ラインの切り替えスイッチとXLR/TRSフォーンのコンボ・ジャック、CH3にはRCAピン入力端子を装備。その横に、Bluetooth接続用/Bluetooth TWS Link用のそれぞれのスイッチがあり、接続準備が整うと点滅、接続されると常時点灯する仕様。その下にはMix Out(XLR)が用意されている。右端には高域スピーカー(Treble)/サブウーファー(Sub)、そしてマスター(Master)の音量を調節するノブを装備。右端最上部のインジケーターは電源がオンになると緑のOn部分が点灯、音量がピークに達した場合は赤のLimit部分が点灯する

 CH3はRCAピン入力端子とBluetooth 5.0対応のチャンネル。CDやスマートフォンなどの音源を接続したり、Bluetoothを接続したりすればワイアレス・ストリーミング再生ができます。3系統のチャンネルを組み合わせてギターの弾き語りや、マイク2本と音源をミックスしてパーティでカラオケ、なんてことも可能です。

サブウーファーはしっかりとした低音 ボーカルの抜けがよい高域スピーカー

 それでは実際に設営して、テストをしていきます。CH3のRCA入力にいつもサウンド・チェックで使用している音源をつなぎ音質をチェックしてみました。第一印象ですが、その低音の量感、質感に驚かされました。8インチのサブウーファーとは思えないほどの、しっかりとした低音が再生されます。キックの低音のアタックの感じもかなり良好ですし、ベースの存在感も十分にあり、輪郭もしっかり聴こえてきます。8インチでこの迫力はすごいと思わされました。

 また、高域スピーカーとのバランス、音のつながりも自然で違和感がありません。それに加え、ボーカルの抜けがすごく良く、この帯域の再生力は特に素晴らしいと言っていいのではないでしょうか。そして、低域から高域までのバランスも良いと感じました。そのあと別の数曲を聴いてみたところ、ハイエンドにほんの少しピーキーなところがあったり、50Hz以下のローエンドは個人的にはもう少し欲しいと思ったりしましたが、このタイプのスピーカーの中ではかなり健闘しているという印象で、全体的にとてもハイレベルなのではないでしょうか。サブウーファーと高域スピーカーの音量は、それぞれ調節できるので、使う環境によっては低音だけを下げられる点も好印象です。Polarシリーズのスピーカーは、ハウリングしにくいためステージの後方に設置しておけばモニター・スピーカーとして兼用できるのもメリットです。また、指向性が広いので1台あれば小さい会場なら十分エリア・カバーできるでしょう。実際に1台のみで鳴らしてみた音質の印象も前述したとおり好感触でした。

 例えばカフェでのシンプルなライブであれば、これ1台でモニター兼用のサウンド・システムになりますし、結婚式のようなパーティ会場であれば2台をステージ奥に置いたり、小さな会場であれば1台だけを設置してマイクと音源を再生したりなど、さまざまな用途に対応可能です。小規模なPAの場合、どうしてもスタッフの数を増やせないことが多いと思いますし、また一人で全部を設営しなければいけない場合も多いと思います。そんなとき、このPolar 8があれば機材の運搬、設営の労力が軽減できるでしょう。使い方もシンプルなので、音響にあまり詳しくない方にも任せられますね。同タイプの製品の中ではかなりしっかりとしたサウンドだと思いますし、そういった意味でも驚きのコスト・パフォーマンスだと思います。

 1台だけで十分に運用できる点も含めて、ちょっとしたイベントやライブ、パーティなどに適した、手軽で簡単にできるPAシステムをお探しの方にはベストな製品です。もちろんプロフェッショナルの方にもお薦めできる性能なので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

 

西川文章
【Profile】大阪を拠点に活動するPA/レコーディングエンジニア。大小さまざまな会場を回り、豊富な経験を持つ。かきつばたやブラジルなどのプロジェクトで、ギタリストとしても活躍している。

 

 

HK AUDIO Polar 8

75,800円

HK AUDIO Polar 8

SPECIFICATIONS
▪最大音圧レベル:118dB(ハーフ・スペース) ▪周波数特性:50Hz〜20kHz(±10dB) ▪アンプ:出力/1,200W(ピーク)、タイプ/クラスD ▪外形寸法(サブウーファー):302(W)×540(H)×390(D)mm ▪外形寸法(高域スピーカー):94(W)×820(H)×98(D)mm ▪重量(トータル):19.3kg

製品情報

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