こんにちは!LOBOTIXです。もう季節は夏ですね。暑くなってまいりました。そこで今回お届けするのは、年中お部屋にこもり、DTMにいそしむ私たちでも手軽に涼しくなれる、まるでASMRのようなウォーター・パッド・サウンド!
LFOでノイジーなサウンドを作りFrequency Splitで水の音へ
この音色はダブステップのサブジャンル、カラーベース(Colour Bass)のアーティストであるSharksにインスパイアされてできたパッチです。カラーベースとは、ノイジーなベースとコード・サウンドが合体したようなサウンド・デザインを軸とした、きらびやかなダブステップ。Sharksはそれに加え、水中を思わせるASMRのような心地良いテクスチャーを駆使して独自の世界を作り出しているアーティストです。テクニック的には、“ザー!”というノイズ成分を利用し、レゾネーターやボコーダーなどでコード・サウンドを生成していきます。
今回はBITWIG Bitwig Studioでまずノイズ成分を作り、それをFrequency Splitデバイスで水のようなサウンドに変化させます。最後に、Vocoderデバイスでカラーベース的なきらびやかなコード・サウンドをミックスしていきましょう。
音源にはPolysynthを使います。デフォルトはノコギリ波のサウンドですが、音色の設定はいじりません。Polysynthを読み込んだら、次にLFOモジュレーターを追加してください。これをPolysynthの一番右にあるスピーカー・アイコンが付いたVoice Gainにアサインします。最初にVoice Gainをゼロまで下げて、それからLFOの矢印をクリック。この状態でVoice Gainをドラッグして最大の+1.0まで上げればアサイン完了です。PolysynthをMIDIキーボードなどで鳴らしてみると、LFOの波に合わせて“ふわーんふわーん”と音量変化しているのが分かると思います。
次にLFOをクリックして編集画面を表示し、上から2番目のTiltを右いっぱいまで上げるとアタック感が出てプラック・シンセのような鳴り方になります。そして一番上のRateを上げていきましょう。このツマミの右側に単位を設定するメニューがあるのでHzにして、27辺りまで上げてください。すると“ドゥルルルル!”とマシンガン的な音に。上から3番目のCurveをいじるとさらに鳴り方が変わるので、−50%辺りにしてよりピッチ感をなくします。
さらにRandomモジュレーターを使って、LFOのRateに不規則さを加えていきます。Randomモジュレーターを立ち上げクリックし、編集画面を開いてください。単位をHzにしてRateを8辺りに設定しましょう。そして、Randomの緑の矢印をクリックしてLFOのRateにアサインします。マイナス方向に2.5くらいドラッグするとよいでしょう。
ここまでで元になるサウンドはOKです。“これのどこが水だ!余計暑くなってきたぞLOBOTIX!!”という状態ですが、ここにマジックを加えます。Spectral Suiteの一つであるFrequency Splitの出番です。Polysynthの後ろにこのデバイスを立ち上げて鳴らしてみると周波数分布が4色に分かれています。右にはそれぞれに対応したツマミなどがあり、周波数別に独立したサウンド処理が可能です。
まずは青以外のスピーカー・アイコンをクリックしてミュート。すると青色の周波数だけが鳴っている状態になりますね。次に画面左のパラメーターを調整していきます。左上のSplitsを2.00に、その右にある矢印アイコンを真ん中の両極矢印に設定。最後に左下のNudgeを−0.03辺りにしましょう。音量がかなり小さいので、Toolデバイスを追加してGainを+20dBほど上げておきます。すると細い周波数帯で“トロロロ……”という水漏れのような音になります。
これだとご家庭内の水回りという感じなので動きをつけましょう。Randomモジュレーターを使います。単位はHzにしてRateは25くらいに。アサイン先はFrequency Split画面下部のSpinのさらに右にある斜線のアイコン、Split Bend(2つある斜線アイコンの左側)です。ドラッグして70%くらいでアサインしましょう。
すると小川のせせらぎのようなサウンドになってきました! なおFrequency Splitの左側画面の中央にある白いドットをドラッグするといろんなニュアンスになります。左上の方は水中のコポコポした感じ、下へいくとハッキリしたサウンドになるので、しばし遊んで好きなサウンドを探してみましょう。
VocoderのCarrierにはスーパー・ソウ・サウンドのPolysynthを
次は、ここにVocoderデバイスを加えます。ロボット・ボイスやハーモニー・ボイスを作るのにおなじみのエフェクトですが、カラーベースでも応用できます。このトラックのサウンドは、画面左側のModulatorに入力されています。あとはシンセでコード・サウンドを作り画面右側のCarrierへ入力するのですが、デフォルトではCarrierにBrown NoiseとAudio Receiverが入っています。これらは削除しましょう。
そして、“ひとまず”新しいトラックを作ってPolysynthを立ち上げスーパー・ソウ・サウンドを作ります。左上のオシレーターのセクションにあるOSC1 Unison Voicesを16vに設定し、その上のUnisonツマミを60cents辺りに。そして、右上のFilter TypeでBypassを選べば完成です。
一般的なDAWでは複数トラックを使ってVocoderにルーティングしていきますが、Bitwig Studioではその必要はありません! PolysynthをクリックしたままVocoderの黄色いCarrier内までドラッグ&ドロップします。これだけでOK!
早速コードを演奏してみると、水のテクスチャーにコード・サウンドがミックスされます! Vocoderの左下、Stereoアイコンをクリックして、さらにバンド数やGlobal Bandwidthで好みを探してみましょう。最後にマルチバンド・コンプのXFER RECORDS OTTやReverbなどを加えて雰囲気を出せば、はああああ涼しい……!!
なお、Frequecy Splitの2つの斜線アイコン、BendとPinchでドットの動きをコントロールできるので、オートメーションなどで曲中での表情を変えたりできます。RandomのRateを変えたりしても楽しいので、ぜひいろいろ遊んでみてください。
これでASMR系ウォータ−・パッド・サウンドの完成です。お疲れさまでした! 次回はいよいよ最終回。Bitwig Studioでダブステップを作る際のさまざまな強みを紹介していく予定です。それでは、またお会いしましょう!
LOBOTIX
【Profile】エレクトロニック・ミュージック・アーティスト、VTuber。2018年よりダブステップなどのベース・ミュージックを中心にプロデュース。自身のYouTubeチャンネル、LOBOTIX CHANNELではDTMがより楽しくなるような制作チュートリアルを多数アップしている。ユニークでエッジの効いたサウンド・デザインを分かりやすく解説した動画は、DTM初心者をはじめ国内外の実績あるミュージシャンからも好評。海外プラグイン・メーカーへのプリセット提供や開発にも携わっている。
【Recent work】
『LOUDER E.P.』
LOBOTIX
BITWIG Bitwig Studio
LINE UP
Bitwig Studio:フル・バージョン/ダウンロード版:50,875円|クロスグレード版またはエデュケーション版:34,100円|12カ月アップグレード版:20,900円
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14以降、macOS 12、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
▪Windows:Windows 7(64ビット)、Windows 8(64ビット)、Windows 10(64ビット)、Windows11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
▪Linux:Ubuntu 18.04以降、64ビットDual-Core CPUまたはBetter ×86 CPU(SSE4.1対応)
▪共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インターネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)