「HERITAGE AUDIO Baby RAM」製品レビュー:電源無しで動作するデスクトップ型のパッシブ・モニター・コントローラー

HERITAGE AUDIOがステレオ2系統の入出力を備えるパッシブ・タイプのモニター・コントローラー、Baby RAMを発売

 全国のサンレコ読者諸兄姉の皆様、こんにちは。レコーディング・エンジニア/サウニストの照内紀雄です。HERITAGE AUDIOがステレオ2系統の入出力を備えるパッシブ・タイプのモニター・コントローラー、Baby RAMを発売。コロナ禍でライブ動画配信の需要が増え、現場でのモニター用に持ち運びしやすいコンパクトなモニター・コントローラーを探していたところだったので、ワクワクしながら試させていただきました。

NEVEをほうふつさせるクラシックなデザイン
モノラル/ミュート/DIM スイッチを搭載

 Baby RAMのファースト・インプレッションは、明らかにNEVEをほうふつさせるクラシックなデザイン。好きな人にとっては、もうこれだけでテンションが上がりそうです。

 

 外形寸法は141(W)×97(H)×199(D)mm、重量は1,328gで、実際に手に取ってみると、コンパクトな大きさの割には重みがあり、ガッチリした堅牢な作りだという印象を受けます。

 

 トップ・パネルを見てみると、中央には大きめのマスター・レベル・ノブを装備し、左上には出力1/出力2の切り替えスイッチ、右上には入力1/入力2の切り替えスイッチ、トップ・パネルの下段には、左からモノラル、ミュート、DIMの各スイッチを搭載しています。

 

 リア・パネルには、アナログ入力L/Rとアナログ出力L/R(いずれもTRSフォーン)を2系統ずつ備え、中央にはバランス/アンバランスの切り替えスイッチを搭載しています。非常にシンプルなので、開封して結線すれば誰でもすぐに使い始められるでしょう。また完全パッシブ仕様のため、電源無しで使えるのが良いですね。

 

 ヘッドフォン・アウトが無いのは非常に惜しいところですが、その辺はおとなしく別途ヘッドフォン・アンプを用意するか、オーディオI/Oに付いているヘッドフォン・アウトを使用するようにしましょう。

4接点/24ステップのロータリー・スイッチを搭載
パッシブ設計により色付けの無いサウンドを実現

 今回のテスト方法ですが、筆者が普段スタジオで使用しているモニター・コントローラーと入れ替えて比較します。リファレンスには、最近筆者がミックスした音源と、普段からよく聴いている楽曲を用意しました。

 

 両者をDAWに取り込んで再生してみると、まず驚かされるのは音の立ち上がりの速さと位相の良さ。特に位相の良さには、目を見張るものがあるでしょう。また中低域の押し出し感が強く、聴いていてテンションが上がります。音が変に散らずにギュッとまとまってくれるため、必要な周波数帯域をしっかりとモニターすることが可能です。

 

 Baby RAMには4接点/24ステップのロータリー・スイッチが搭載されているため、マスター・レベル・ノブにおけるどの目盛りにおいてもステレオ信号の精度はほぼ均等です。ボリュームを変えても音像が変わらない印象なので素晴らしいですね。

 

 Baby RAMを通した音は、率直に“好きか嫌いか”で言うならば、筆者はとても好きです。結局、音楽は“好き嫌い”の世界だと感じているので、この“好き”という感覚はとても大切な要素だと思います。

 

 また、リア・パネルにあるバランス/アンバランス切り替えスイッチでは、例えば入力1にBluetoothレシーバーを接続して、コンピューターやスマートフォンからの音楽を2つのモニター・スピーカーで交互に試聴してみたりすることも可能です。

 

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リア・パネルの左側にはアナログ入力L/R(TRSフォーン)を、右側にはアナログ出力L/R(TRSフォーン)を2系統装備。リア・パネルの中央にはバランス(フロート)/アンバランスの切り替えスイッチを搭載している

 ちなみに普段使っているモニター・コントローラーのCURRENT CSP359とBaby RAMの違いをサウナに例えるなら、前者は機能と音質、共にバランスの良い複合スパ施設で、BabyRAMは最低限必要な設備だけどとても高クオリティなサウナ特化型施設といったところでしょう。

 

 昨今のモニター・コントローラーは多機能モデルが多いと思いますが、Baby RAMはシンプルな分、その音質はお値段以上のクオリティ。ワンランク上のモニター・システムを構築したいと考えるユーザーには非常にお薦めです。たった22,000円でこのサウンド・クオリティが手に入るのであれば、導入しない手は無いでしょう。

 

 そして電源不要ということは、電源系のトラブルが無いということ。機材によっては設置場所の電源環境によってノイズが乗ってしまうこともしばしばあるのですが、Baby RAMならそのような心配は一切不要です。またライブの現場においては、ステージ袖など電源設備があまり整っていない場所に仮設システムを組むことが多いので、電源不要というのは非常に有利でしょう。さらには回路がシンプルなため、トラブル・シューティングも行いやすいでしょうし、音声信号に変な色付けもされないという利点もあります。

 

 ヘッドフォンからモニタリングする方法さえ用意すれば、ライブ配信現場での使用にも非常に向いていると思いますが、取り急ぎBaby RAMは購入しておこうと思います。必ずやその出番がやってくることでしょう。

 

照内紀雄
【Profile】青葉台スタジオ所属のエンジニア。Vaundy、ザ・リーサルウェポンズ、ヒプノシスマイクなどを手掛ける。サウニスト集団SOTの一員としてブログ“Saunaで数えるOneからThousand”を主宰

 

HERITAGE AUDIO Baby RAM

オープン・プライス

(市場予想価格:22,000円前後)

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SPECIFICATIONS
▪入力チャンネル:ステレオL/R×2 ▪出力チャンネル:ステレオL/R×2 ▪アナログ入力:TRSフォーン×4 ▪アナログ出力:TRSフォーン×4 ▪電源:パッシブのため不要 ▪外形寸法:141(W)×97(H)×199(D)mm ▪重量:約1.3kg

製品情報

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