「BOSE AMM112」製品レビュー:多様な設置方法に対応可能な柔軟性を持つ同軸2ウェイ・スピーカー

BOSEから、AMM Multipurposeシリーズのラウド・スピーカー「AMM112」が発売

 BOSE AMM112は、常設または仮設のサウンド・システムで、モニター・スピーカー、メイン・スピーカー、フィル、ディレイ・スピーカーなど、どのような用途に対しても柔軟に使用できるよう、エンクロージャーから設計されたAMM Multipurposeシリーズのラウド・スピーカーです。

キャビネットの回転に応じてカバレージを自動変更
独自のウェーブガイドで一貫したサウンドを提供

 AMM112の指向角は、110°×60°。マルチポジション・エンクロージャーで、本体を回転させるだけで水平/垂直方向のカバレージを簡単に変えることが可能です。またパッシブの同軸2ウェイ方式を採用し、12インチ・ウーファーと3インチ・コンプレッション・ドライバーを搭載。それぞれネオジム・マグネットを共有することで、コンパクトなサイズで迫力のサウンドを再生します。駆動モードはパッシブとバイアンプから選択可能。BOSE独自のウェーブガイドBeamwidth Matching Waveguideを採用し、カバー・エリア全体に一貫したサウンドを提供します。また、同社PowerMatchアンプと併用することで用途に応じたスピーカー・プリセットが使用可能。スピーカーを保護するとともに、最高のパフォーマンスを引き出します。FOHやフィルで使用する場合には、同社の専用サブウーファーSMS118やAMS115と組み合わせることで、より広い帯域を再生することが可能です。

スピコン入力×2を搭載し、その間にはパッシブとバイアンプの切り替えスイッチが備わっている

 デザインはユニット側から見ると前面がラウンドし、形はほぼ正方形に見えます。非常にコンパクトにまとまっている印象です。エンクロージャーは縦置き、横置きに対応。フロア・モニターとしても設置可能で、現場で想定されるスピーカーの設置方法がほぼすべてできるようになっています。横置きでも安定した形でまっすぐ設置できるので、フロント・フィルとしても使いやすいかと思います。また、縦向きにしたときの天地両側にスタンドのポール・マウントが付いているので、どちら側でもスタンドに取り付けられるのもポイントですね。

存在感のある低音と解像度の落ちない高音
ブラケットなどのオプションも多数用意

 それでは音を出してみます。今回はDSP内蔵アンプのBOSE PowerMatch PM8500Nと組み合わせて使用。初めにフロア・モニターとして使用してチェックします。この場合横置きなので、指向角の水平、垂直は、前述とは逆の60°×110°。AMM112はBose Professionalスピーカー・プリセットの使用が推奨されているので、PM8500Nに内蔵されるモニター用プリセットで試しました。まずプリセットEQ“AMM112 Monitor”(モニター用のフルレンジ)に設定。SHURE SM58を使って男性ボーカルで試したところ、低域に存在感があります。高域も奇麗に伸び、音がしっかりと前に張り付いているような印象です。筆者の経験上、同軸スピーカーをモニターとして使用する場合、機種によって高域の抜けが少し物足りない場合があるのでそこを意識的にチェックしましたが、AMM112では全く問題無くしっかりと再生されています。高域まで聴き取りやすくバランスの良いサウンドです。

 

 次にプリセットEQ“AMM112 90-Monitor”(モニター設置の90Hzのハイパス・フィルター)をチェック。フィルター・スロープは−24dB/octで比較的急しゅんな角度でカットされていて、その具合が絶妙に感じます。男声で気になる60〜80Hz辺りがうまくカットされつつもスカスカになることはありません。フィルターの癖は感じさせず、しっかりと声の存在感があります。このモードは、低音が過剰に聴こえる環境や、逆に低音がそれほど必要無い編成で有効活用できそうです。モニターとして使用する場合、同軸であることと独自のウェーブガイド・テクノロジーにより、少し位置が変わってもサウンドの印象がほぼ変わらないというメリットも感じました。

 

 最後に縦置き(指向角110°×60°)のフロント・スピーカー・セッティングを音源でチェック。プリセットEQは“AMM112(FR)”(縦置きのフルレンジ)です。非常に解像度の高いサウンドという印象で、低域から中低域がしっかり再生され、存在感も十分。高音も非常に奇麗で、特に指向角内では全く解像度が落ちることがありません。スピーカーの正面から外れてもバランスの良いサウンドがキープされます。曲によって低域が物足りなく感じる場合は、別途サブウーファーを用意しましょう。音量を上げたときに少し高域が強いと感じた場合は、EQで補正すれば問題無いと思います。

 

 AMM112は、小中規模システムのメイン・スピーカーやフロア・モニター、フィルなど、プロフェッショナルに要求されるさまざまなシチュエーションでの用途に対応した、まさにマルチに使えるスピーカー。常設で使用する際に使うブラケットなどのオプションも多数用意されています。サラウンド・システムや、拡張用のスピーカーとしても使用できますね。

 

専用ブラケットAMM112 U-Bracketを装備した状態。このほかサスペンション・ブラケットやスピーカー・ポール・アダプターといったオプションが別売りで用意されている

 

西川文章
【Profile】大阪を拠点に活動するPA/レコーディング・エンジニア。大小さまざまな会場を回り、豊富な経験を持つ。かきつばたやブラジルなどのプロジェクトで、ギタリストとしても活躍している。

 

BOSE AMM112

319,000円/1台

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SPECIFICATIONS
▪ユニット構成:12インチ径ウーファー+3インチ径コンプレッション・ドライバー ▪周波数特性:70Hz〜18kHz(−3dB) ▪入力インピーダンス:8Ω(パッシブ)、8Ω+8Ω(バイアンプ) ▪許容入力(RMS):300W(パッシブ)、300W(LF)+45W(HF) ▪許容入力(ピーク):2800W(パッシブ)、2800W(LF)+720W(HF) ▪カバレージ:110°(水平)×60°(垂直) ▪後継角度:35° ▪感度:96dB ▪最大SPL:131dB SPL(1m) ▪外径寸法:457(W)×457(H)×383(D)mm ▪重量:22.04kg

製品情報