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「VIRHARMONIC Bohemian Violin V4」アーティキュレーションを自動切り替えするバイオリン専用ソフト音源

VIRHARMONIC Bohemian Violin V4

フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはチェコ共和国に拠点を置くブランド、VIRHARMONICのバイオリン専用ソフト音源Bohemian Violinの最新版、Bohemian Violin V4です。Mac/Windows対応で、AU/VSTプラグインとして動作します。筆者はCM曲や劇伴の仕事でBohemian Violinを用いた楽曲が採用されることも多く、今では使用頻度がかなり高い音源となっています。前回は2021年5月号で旧バージョンをレビューしていますが、今回のアップデートではどう変わったのでしょうか?

5種類の演奏スタイルを搭載 アップ・ボウ/ダウン・ボウをリアルタイムに確認

 鍵盤を弾くだけでリアルなバイオリン・サウンドを奏でてくれるソフト音源、Bohemian Violin。キー・スイッチに頼ることなく、自動で適切なアーティキュレーションをセレクトしてくれるVIRHARMONICの独自技術“バーチャル・パフォーマー”を搭載していることが特徴です。

 今回のアップデートでは、画面全体のデザインから作曲プロセスに関する細かい部分まで大きく変更されました。まずBohemian Violin V4を立ち上げるとメイン画面が表示されます。

Bohemian Violin V4のメイン画面

Bohemian Violin V4のメイン画面

 画面最上段には“ムード”と呼ばれる5種類の演奏スタイルを搭載。また同中央にあるバイオリンのイラスト内には記号が表示され、アップ・ボウ(上げ弓)/ダウン・ボウ(下げ弓)のどちらで現在演奏しているのかをリアルタイムに確認することができます(画面①)。

画面① Bohemian Violin V4の画面中央にあるバイオリンのイラスト内では、アップ・ボウ(画像左)とダウン・ボウ(同右)の記号がリアルタイムに表示されるため、現在どちらで演奏しているのかも確認することができる

画面① Bohemian Violin V4の画面中央にあるバイオリンのイラスト内では、アップ・ボウ(画像左)とダウン・ボウ(同右)の記号がリアルタイムに表示されるため、現在どちらで演奏しているのかも確認することができる

  画面左下にはリバーブを搭載し、カーソルでドラッグすることでエフェクトのミックス具合を調整可能。一方、同右下にはボリュームがあり、こちらもカーソルでドラッグすることでパーセンテージを変更できます。

 あとは目的に合ったムードを選択して自由に演奏するだけ。適切なアーティキュレーションをバーチャル・パフォーマーが自動選択するので、ベストなバイオリン・サウンドを奏でることができるでしょう。

 ここからは、この“ムード”を詳しく見ていきます。5種類のムードを変えると、バーチャル・パフォーマーが選択するアーティキュレーションや強弱などのアルゴリズムがそれぞれのテーマに沿って最適化されます。

 IMPROVは標準的で幅広い音楽スタイルに対応する奏法を柔軟に導いてくれます。EMOTIVEはダウン・テンポの曲でダイナミクスの緩やかな演奏に最適。ASSERTIVEはアグレッシブかつ力強い演奏で、アップ・テンポの曲向きです。CLASSICALは独奏にぴったり。力強く速いパッセージで弾いたフレーズでもスタッカートなどにならず、レガートでつなげて演奏してくれます。SPRIGHTLYは高速フレーズにもってこいで、弓を跳ねさせる奏法であるスピッカートで演奏します。

 ムードがSPRIGHTLYのときのみ、キー・スイッチでのアーティキュレーション変更は無効となりますが、それ以外のムードでは、演奏中でもキー・スイッチでアーティキュレーションを自由に変更可能です。

 筆者なりの使い方としては、まずIMPROVで気に入ったフレーズをMIDIレコーディング。次に、プレイバックして音楽的に不自然に聴こえる部分はMIDIノートを編集するのではなくムードを変更します。こうすることで、気になる部分が改善されることが多いからです。選択するムードによってバイオリンのニュアンスが大きく変わるので、おのずと演奏フレーズも導かれるように変わっていきます。これもバーチャル・パフォーマーの素晴らしい点だと言えるでしょう。

編成を変更できるPERFORMER MODE 5つのアーティキュレーションを追加

 Bohemian Violin V4になって大きく変わった部分の一つに、エンジンが挙げられます。以前はUVI Workstationを専用エンジンに採用していましたが、Bohemian Violin V4ではプラグイン・デベロッパーのGORILLA ENGINEと共同開発した独自エンジンを使用。これによって、音源ライブラリーの読み込み時間が長いと感じたり、Bohemian Violin起動中にプロジェクト・ファイルを保存すると時間がかかったりするといった点が解決しました。これまではプロジェクトを保存するたびに作業を止めなければいけなかったので、今回のアップデートはかなりうれしく感じます。

 さらにBohemian Violin V4の新機能として、奏者の編成を変更できるというPERFORMER MODEを搭載(画面②)。SOLO、SECOND SOLO、TRIO、CHAMBERといった4つの編成が用意されています。

画面② メイン画面中央にある“PERFORMER MODE”をクリックすると、奏者の編成を変更できる。SOLO、SECOND SOLO、TRIO、CHAMBERといった4つの編成のほか、ポリフォニック演奏が可能なMAESTROモードがオンの場合、TRIO DIVとCHAMBER DIVといった2つの編成が用意されている

画面② メイン画面中央にある“PERFORMER MODE”をクリックすると、奏者の編成を変更できる。SOLO、SECOND SOLO、TRIO、CHAMBERといった4つの編成のほか、ポリフォニック演奏が可能なMAESTROモードがオンの場合、TRIO DIVとCHAMBER DIVといった2つの編成が用意されている

 “SOLO”はメインとなるソロ・バイオリンのサウンド。前バージョンでは弓と弦の擦れる音が生々しくキャプチャーされていましたが、そこが少し抑えられているように感じます。ただし、決してリアルさが損なわれたわけではなく、より楽曲になじみやすい印象です。

 “SECOND SOLO”にすると、マイク・ポジションが若干オフ気味となり、定位もLch寄りのSOLOと逆で、少しRchに寄って鳴ります。これで1st、2ndバイオリンを左右両翼配置したようなアレンジが可能となりますね。

 そのほか“TRIO”では3本、“CHAMBER”では5本のバイオリンで演奏可能。ソロ・バイオリン音源としてリリースされたBohemian Violinですが、アンサンブル用途のストリングス系ソフト音源としても活用できるようになったということでしょう。

 Bohemian Violin V4は、コードを演奏可能にするMAESTROモードを搭載。キーボードのA1を押すとMAESTROモードがオンとなり、ポリフォニックな演奏にバーチャル・パフォーマーが適用されます。

 サンプルの読み込み方式も変わりました。デフォルトであるSTREAMINGモードは、バックグラウンド・ストリーミング方式となっており、演奏したときに初めてドライブからサンプルをロードして再生する仕組み。このときコンピューターのRAMはほとんど消費されません。筆者はサンプルをSSDに保存しているのですが、この方式だとストレスを感じないで演奏することが可能です。また、ふと良い旋律が浮かんだときも、Bohemian Violin V4を起動した瞬間から音を鳴らせるのは非常に助かります。

 なお、画面右上にある歯車マークをクリックすると設定画面が開きます。FINE CONTROLタブでは、左下にある“LOAD ALL SAMPLES”を選択すると70,000以上もある全サンプルがメモリーにロードされた状態、つまりALL LOADEDモードになるのです(画面③)。膨大な数のレガート・サンプルまですべてメモリーに読み込むので、速いパッセージで演奏する際などは、このモードが有効となるでしょう。

画面③ 設定画面。FINE CONTROLタブで“LOAD ALL SAMPLES”を選択すると70,000以上のサンプルがメモリーにロードされる。速いパッセージで演奏する際などに有効だ

画面③ 設定画面。FINE CONTROLタブで“LOAD ALL SAMPLES”を選択すると70,000以上のサンプルがメモリーにロードされる。速いパッセージで演奏する際などに有効だ

 ARTICULATIONSタブでは、キー・スイッチとして割り当てられたアーティキュレーションの変更が可能です(画面④)。バーチャル・パフォーマーの選択が気に入らない場合も、ここで調整することができます。ちなみに今回のアップデートでは、RICOCHET、COL LEGNO、PONTICELLO、SUL TASTO、HARMONICSといった5つのアーティキュレーションが追加されているので試してみるとよいでしょう。

画面④ 設定画面のARTICULATIONSタブ。キー・スイッチとして割り当てられたアーティキュレーションを自由に変更することができる

画面④ 設定画面のARTICULATIONSタブ。キー・スイッチとして割り当てられたアーティキュレーションを自由に変更することができる

 内蔵リバーブも大きく進化(画面⑤)。HALL、CHAMBER、STUDIOの3種類から選択できるようになり、それぞれALGORITHMICとCONVOLUTIONの設定が用意されています。ALGORITHMICはリバーブ・タイムが短め、CONVOLUTIONは長めになっており、アレンジの際に楽曲に適した響きを素早く付与することが可能です。バイオリンは残響成分とのブレンドで印象がガラッと変わるので、リバーブの選択は作曲段階からとても重要。ここで選択肢が増え、かつ直感的に扱えるのは、クリエイターとして心強い限りです。

画面⑤ 設定画面のREVERB&SPACEタブでは、3種類のリバーブと2種類の設定を選択できる。シンプルで操作しやすい画面レイアウトになっているため、スピーディに作業が行える

画面⑤ 設定画面のREVERB&SPACEタブでは、3種類のリバーブと2種類の設定を選択できる。シンプルで操作しやすい画面レイアウトになっているため、スピーディに作業が行える

 “CRAFTING”も新機能の一つ。これを有効にすると、キー・スイッチで指定したすべてのボウ・タイプ/アーティキュレーションに対してレガートをブレンドすることができるようになります。例えばキー・スイッチでノンビブラートを選んだ状態で演奏すると、通常だと音のつなぎ目でレガートにはなりません。しかしCRAFTINGを有効にすることで、この状態でもレガートで演奏されるようになるのです。これまでのバージョンではそれができなかったので、個人的にうれしい機能です。

 Bohemian Violin V4は今回のアップデートによって、ますます多彩な演奏表現が可能になりました。なんとなく鍵盤を弾いただけでも“ハッ”とするようなインスピレーションを得られ、良いフレーズがどんどん湧いてきます。クリエイターやアレンジャー、劇伴作家の方、ぜひ最新版であるBohemian Violin V4を試してみてください。筆者もこれからどんどん活用していきたいと思います!

 

VIRHARMONIC Bohemian Violin V4

beatcloud価格:32,000円

 Requirements 
■Mac:macOS 10.14.6〜macOS 12(64ビット)
■Windows:Windows 10(64ビット)
■共通:4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)、26GB以上のハードディスク空き容量(インストールには一時的に60GBの空き容量が必要)

 

阿瀬さとし(Cojok/Smash Room)

【Profile】作曲家/マニピュレーター/ギタリスト。Kco(vo、acg)とのアコトロニカ・ユニット=Cojokでギターとプログラミングを担当し、CMソングや劇伴の制作、ライブ・マニピュレーションもこなす。

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