AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+ レビュー:独自のワイアレス伝送で低遅延を実現した密閉型ヘッドフォン

AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+ レビュー:独自のワイアレス伝送で低遅延を実現した密閉型ヘッドフォン

 ダンス・ミュージックのDJなどを中心に、多くのクリエイターに愛されているデンマークのヘッドフォン・メーカーAIAIAIが、独自の新技術“W+Link”を搭載したワイアレスの密閉型ヘッドフォンTMA-2 Studio Wireless+をリリース。ケーブル接続やBluetooth接続もできるが、独自開発のワイアレス・システムW+Linkを使用することで“超低遅延”で聴けるとのこと。今回はさまざまな使用方法で聴き比べ、どのようなシーンにマッチするか、紐解いていく。

3つのボタンで再生/停止を操作できる

 TMA-2シリーズの最大の特徴はAIAIAI独自のモジュラー・システムで、カスタマイズが可能なところ。TMA-2 Studio Wireless+は、スピーカー・ユニットS05MKII、イア・パッドE08、ヘッド・バンドH10、ケーブルC05、トランスミッターX01のセットだ。パーツごとの販売もされており、用途に合わせて一部変更などもできるのはありがたい。

ヘッド・バンドH10。L側にあるイア・パッドと接続するケーブルの上には、BluetoothとW+Linkを切り替える小さなスイッチを装備する。ライトが青く点灯するとBluetooth、白いとW+Linkで視覚的に確認が可能。R側には充電用のUSB Type-C端子を装備している

ヘッド・バンドH10。L側にあるイア・パッドと接続するケーブルの上には、BluetoothとW+Linkを切り替える小さなスイッチを装備する。ライトが青く点灯するとBluetooth、白いとW+Linkで視覚的に確認が可能。R側には充電用のUSB Type-C端子を装備している

トランスミッターX01。充電用のUSB Type-C端子を装備。緑色のケーブル(ステレオ・ミニ)を再生機器に接続して、ヘッド・バンド側で接続モードを切り替えることでW+Linkを使用できる

トランスミッターX01。充電用のUSB Type-C端子を装備。緑色のケーブル(ステレオ・ミニ)を再生機器に接続して、ヘッド・バンド側で接続モードを切り替えることでW+Linkを使用できる

 これはどのモデルにも共通していることだが、シンプルでミニマルなデザインは魅力的なポイント。重量もほかのヘッドフォンと大差が無く平均的、もしくはやや軽めな印象で、長時間のリスニング作業に向いていると思う。個人的なお気に入りは、アルカンターラ素材のイア・パッドE08と、頭にフィットするヘッド・バンドH10。触り心地がソフトで着け心地が最高だ。また、H10には内蔵マイクと3つのボタンも装備。ボタンでは、電源のオン/オフ、再生/一時停止、音量コントロールを行える。スピーカー・ユニットS05MKIIにはNAC AUDIOのバイオ・セルロースを使った振動板を搭載し、原音忠実な音を聴くことができるという。

中央のボタンで再生/一時停止、長押しで電源のオン/オフが可能。上/下のボタンでボリュームの変更、長押しでBluetooth接続ができる。W+Linkの場合は、上/下のボタン長押しとX01側の電源ボタンを2度押すことでリンクを完了させる

中央のボタンで再生/一時停止、長押しで電源のオン/オフが可能。上/下のボタンでボリュームの変更、長押しでBluetooth接続ができる。W+Linkの場合は、上/下のボタン長押しとX01側の電源ボタンを2度押すことでリンクを完了させる

 そしてAIAIAI独自の新技術W+Linkは、世界的テクノ・プロデューサーのリッチー・ホウティンと3年の歳月をかけて共同開発したシステムとのこと。従来のBluetooth接続は、圧縮音声かつレイテンシーが大きいが、W+Linkはロスレスで遅延の少ないワイアレス伝送を実現している。使用には専用トランスミッターを再生機器に接続する必要がある。フル充電での再生時間は、Bluetooth接続で最長80時間、W+Linkモードで15時間の再生が可能。また、ケーブル接続も可能なため、音楽制作からDJプレイ、リスニングなど、さまざまな用途や環境に合わせて使える。

ワイアレスでも問題なくDJプレイが可能

 このヘッドフォンは、楽曲制作とDJプレイの使用用途が一番多いと思うので、今回は各種接続モードでそれらの用途を想定して聴き比べてみた。まずは、楽曲制作で使う。Bluetooth接続でプレイバックしながら120BPMのビートを打ち込んでみると、2拍くらい安定して遅延していた。これは他社のBluetoothヘッドフォンと同様で、瞬発的なアイディアを形にするのは難しい。そこでW+Linkに変更して、先ほどと同様にビートの打ち込みをしながら再生すると、問題無く使用できた。キーボード演奏でも全く違和感が無い。コンピューターから離れた位置の楽器を演奏しながら、DAWで楽曲制作も行いたいシーンなどで、非常に優位に働くだろう。

 

 次にPIONEER DJのCDJとDJミキサーを使い、DJプレイで検証してみた。まず有線でモニターした際に、ケーブルをヘッド・バンドのLにもRにも接続できる点が魅力的だと感じた。ではW+Linkではどうだろう? こちらもケーブル接続と大差の無い遅延量で問題無くモニタリングできた。DJは2つの曲のテンポを合わせてミックスするので、遅延があっては調整できない。W+Linkを使えば、DJミキサーを操作する手など視覚的な情報とギャップが無いため一切不便さを感じない。ただ、モニター・ボリュームを上げ過ぎると、若干音がつぶれる傾向にあったので、ボリュームを大きめに設定したい方にはケーブル接続での使用をお勧めする。

 

 音質はどの接続でも中高域辺りがとてもクリアで聴きやすく感じた。イア・パッドの耳へのフィット感が素晴らしいので、音の奥行きも感じやすい。

 

 最後に、DJプレイでワイアレス・ヘッドフォンを使用するメリットは、ヘッドフォン・ケーブルが邪魔にならないことだ。現場によってDJブースの機材レイアウトは異なっており、私も次に操作したい機器が高い位置にあったりすると、ケーブルが邪魔だと思うことが何度かあった。そんなときにW+Linkは、ストレスフリーなプレイに一役買ってくれるだろう。またW+Linkからケーブル接続に素早く切り替えもできたので、ヘッドフォンの充電をし忘れて接続が切れてしまっても、ケーブルさえ準備しておけばシームレスに切り替えられる。Bluetooth接続で普段使いができ、DJ現場では有線、もしくはW+Linkでケーブルにとらわれず縦横無尽に動きながらプレイが可能と、さまざまな聴き方に寄り添うAIAIAIのヘッドフォン。今後の進化にも、目が離せない。

 

Sakiko Osawa
【Profile】DJ/クリエイター。日本大学芸術学部音楽学科卒。2014年、7 Stars Musicから「Tokyo Disco Beat」で世界配信デビュー。2018年には1stアルバム『Sakiko Osawa』をリリース。

 

AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+

オープン・プライス

(市場予想価格:39,800円前後)

AIAIAI TMA-2 Studio Wireless+

SPECIFICATIONS
▪ドライバー:40mm ▪インピーダンス:32Ω ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪ダイアフラム:バイオ・セルロース ▪マグネット:ネオジム ▪感度:97dB ▪定格出力:40mW ▪最大出力:100mW ▪重量:277g(ヘッドフォンのみ、実測値)