「AIAIAI TMA-2」製品レビュー:用途に合わせてカスタマイズ可能なモジュラー・システム・ヘッドフォン

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左からTMA-2 HD、TMA-2 DJ、TMA-2 All-Round

 コペンハーゲンに拠点を置く、ヘッドフォン・メーカーのAIAIAI。筆者の周りのDJたちにもユーザーが多いです。今回は同社のユニットやイア・パッド、ヘッド・バンド、ケーブルを自在にカスタマイズできるTMA-2シリーズより、TMA-2 HD(市場予想価格29,800円前後)、TMA-2 DJ(同18,800円前後)、TMA-2 All-Round(同13,800円前後)の3機種をレビューしてみましょう。

解像度の高いサウンドのTMA-2 HD
絶妙な低域のステレオ感を自然に再現

 3機種の仕様において共通なのは、密閉型で再生周波数帯域は20Hz〜20kHz、インピーダンスは32Ωでネオジム磁石採用の40mmドライバーを内蔵し、ケーブルの着脱は半回転させて本体にねじ込むタイプだということ。箱を開封した時点ではユニット、イア・パッド、ヘッド・バンド、ケーブルはばらばらに収められており、ユーザー自身が組み立てます。プラモデル作りにうとい筆者でも、説明書を読まずにそれぞれ約1分弱で完成させることができました。

 

 まずTMA-2 HDは、3機種の中で最上位のモデル。ユニットにはバイオセルロース製ダイアフラムを内蔵するS05を備え、イア・パッドは耳を覆うオーバー・イア・タイプのE08、ヘッド・バンドはマイクロファイバー製のパッドを搭載するH04、ケーブルはステレオ・ミニ端子を備える長さ1.5mのC15という組み合わせです。

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ドライバー・ユニットのS05。40mmのバイオセルロース製ダイアフラムを搭載している

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イア・パッドのE08は、ALCANTARA 製のカバー・リング素材を採用

 試聴してみると、音数の多い楽曲であっても一つ一つのパートがクリアに再現されており、解像度の高いサウンドに度肝を抜かれます。“究極のリスニング体験を実現する”と製品概要に記載されている通り、どの周波数帯域もバランス良く聴くことができました。また、E08はS05の魅力を最大限に引き出しており、ヘッドフォンながらとても広い空間で楽曲が再生されているかのような“音場感”を提供します。

 

 感心したのは、低域の空間再現力。ミキシングにおいて高域のステレオ感は楽曲の世界観や豪華さを演出する上で重要な要素ですが、近年は低域も完全なモノラルではなく少し左右に広げ、ベース・サウンドにオリジナリティを加えている楽曲が増えてきています。TMA-2 HDは、この絶妙な低域のステレオ感を違和感無く、自然に再現しているのです。

 

 また、TMA-2 HDでいろいろな楽曲をあらためてリスニングしてみると、今まで認識していなかった細部のこだわりにも気付くことができます。

 

パワフルな中低域を再現するTMA-2 DJ
バランス良い鳴りのTMA-2 All-Round

 続いてはTMA-2 DJを見てみましょう。ユニットはチタン製ダイアフラムを搭載するS02で、イア・パッドは遮音性の高いオン・イア・タイプのE02、ヘッド・バンドはナイロン製で丈夫なH02、ケーブルはTMA-2 HDと同じくステレオ・ミニ端子を備える長さ1.5mのC02という組み合わせで、3機種の中でも特に堅牢な内容です。ちなみにC02はコイル・ケーブルとなっており、その太さからもDJプレイ中のハードな動きに耐え得る設計となっています。

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ヘッド・バンドのH02。ナイロン製のためしなやかで丈夫な性質を持っている

 TMA-2 DJの音に関してですが、S02とE02を組み合わせることによって100〜200Hz辺りの中低域がパワフルに出力され、DJプレイ時に重要なキックのアタック成分をよりクリアに聴くことができます。モニタリングもしやすくなるため、テンポの同期もスムーズに行えるでしょう。また、パンチのあるTMA-2 DJのサウンドは、ヒップホップやベース・ミュージックなどの低域に特化した音楽ジャンルのリスニングにも最適だと思います。

 

 最後はTMA-2 All-Round。ユニットはPET製ダイアフラムを採用するS01で、イア・パッドはオン・イア・タイプのE01、ヘッド・バンドは軽量なポリカーボネート仕様のH01、長さ1.2mのケーブルC01は、スマートフォンなどの操作用ボタン1つとインライン・マイクも搭載しています。

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C01は長さ1.2mのケーブル。スマートフォンなどの操作用ボタン、インライン・マイクを備えている。iOS/Android/Windowsに対応する

 TMA-2 All-Roundは、初めてヘッドフォンを購入するというような方でも手を出しやすい価格設定。装着して驚いたのは、とても軽いということでした。これなら通勤や通学、オフィスやカフェで作業する際の長時間使用も疲れません。サウンド面に関しては低域から高域まで癖が無く、ステレオ感もきちんと担保しており、どのジャンルの楽曲でもバランス良く聴くことができます。まさに“All-Round”と言えるモデルです。

 

 今回レビューした3機種をあらためて整理すると、TMA-2 HDは音楽制作やリスニング向け、TMA-2 DJはその名の通りDJ向け、TMA-2 All-Roundは普段使いや初心者向けと言えます。各パーツは個別で購入できるため、自由に組み合わせが可能だというのも大きな利点でしょう。筆者のように、楽曲制作やDJプレイでヘッドフォンを常用していると突然壊れてしまうことがありますが、そんなときでも故障したパーツのみ交換すればコストが抑えられるため便利です。

 

 あるいは自分のスタイルに合ったモデルを購入し、そこから徐々にパーツをカスタマイズして“独自のヘッドフォン”を追求するのも、楽しみの一つかもしれません。

 

andrew
【Profile】TREKKIE TRAX発足/運営メンバーの一人。DJとして ULTRA JAPAN 2015などへ出演したり、プロデューサーとしても BBC RADIO1で楽曲がプレイされるなど、国内外での評価を獲得。

 

AIAIAI TMA-2

オープン・プライス

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SPECIFICATIONS
●共通項目 ▪形式:密閉型 ▪再生周波数帯域:20Hz〜20kHz ▪ドライバー:40mm(ネオジム磁石) ▪インピーダンス:32Ω
●TMA-2 HD ▪ダイアフラム素材:バイオセルロース ▪感度:113dB ▪重量:約209g
●TMA-2 DJ ▪ダイアフラム素材:チタニウム・コート ▪感度:117dB ▪重量:約190g
●TMA-2 All-Round ▪ダイアフラム素材:PET ▪感度:117dB ▪重量:約150g

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