AIAIAI TMA-2 Studio / Studio XE レビュー:北欧人気ブランドのスタジオ向け密閉型ヘッドフォン

AIAIAI TMA-2 Studio / Studio XE レビュー:北欧人気ブランドのスタジオ向け密閉型ヘッドフォン

TMA-2 Studio(写真左)、TMA-2 Studio XE

 エレクトロニック・ミュージックのシーンを中心に、世界中のDJやアーティスト、プロデューサーに愛されるデンマークのヘッドフォン・ブランドAIAIAI。人気の理由はそのサウンドや北欧らしいデザインのみならず、ユーザーの独創的なカスタマイズを可能にするモジュラー・システムを採用している点にもあるでしょう。このたびTMA-2 Studio(市場予想価格25,800円前後)、TMA-2 Studio XE(同19,800円前後)が発売になりました。過去製品との違いも含めて見ていきましょう。

バイオセルロース採用の新ドライバーを搭載した2タイプ

 まずはモジュラー・システムについてもう少し解説しておきましょう。AIAIAIのヘッドフォンは数種類のスピーカー・ユニット、イア・パッド、ヘッド・バンド、ケーブルの中から好みや用途に合わせてパーツを選び、カスタマイズすることができます。このシステムを生かして、女性テクノDJ最高峰の一人であるシャーロット・デ・ウィットのカスタム・エディションや、トップ・レーベルによるカスタム・モデル“Drumcode Edition”“Ninja Tune Edition”なども発売されています。

 

 初代TMA-1はケーブルとイア・パッドが取り外し可能でしたが、TMA-2ではスピーカー・ユニットとヘッド・パッドも取り外し/交換ができるようになりました。スピーカー・ユニットは、オールマイティなものからDJ向けのパンチがあるもの、解像度や感度の高いものなど全6種類。イア・パッドは耳の上に乗せるオンイア・タイプと耳をすっぽり覆うオーバーイア・タイプの2種類の形状があり、それぞれマイクロファイバーやPUレザーなど素材の違いもあって全部で5種類あります。ヘッド・バンドにも素材やフィット感の違い、Bluetooth対応の可否やマイク機能などの違いで6種類。ケーブルはストレート/カール、素材、長さ、カラーなどの違いで13種類あり、実に2,340通りの組み合わせが可能となります。

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AIAIAIのモジュラー・システム。すべてのパーツがカスタマイズ可能

 TMA-2 Studioのスピーカー・ユニットは、内部損失が高いバイオセルロース素材の振動板を採用したS05MKIIです。明りょうで原音に忠実なサウンドを実現し、なおかつ軽量で耐久性にも優れています。また、イア・パッドは天然スエードのような質感の高級素材、アルカンターラを使用したオーバーイア・タイプのE08。ヘッド・バンドは、肌触りの良いマイクロファイバー製ヘッド・パッド付属で、耐久性に優れたナイロン素材のH04。ケーブルは、両側ともステレオ・ミニ端子で、ねじ込み式のステレオ・フォーン変換プラグが付属した1.5mのカール・タイプC02です。形式としては密閉型ヘッドフォンとなり、インピーダンスは32Ω、感度は113dBです。

 

 また、同時発売されたTMA-2 Studio XEは、スピーカー・ユニットはTMA-2 Studioと同じですが、イア・パッドは合成皮革を使用したオーバーイア・タイプのE04、ヘッド・バンドは軽量でスリムなH01を採用している点が異なり、より軽量なモデルになります。数字の上でのスペックは同じであるものの、イア・パッドの素材の違いは間違いなく装着感や音の違いとして現れるでしょう。各パーツは個々に袋詰めされており、開封して見た目通りに組み立てていくだけです。スピーカー・ユニットは上下左右を気にする必要は無く、どのように挿しても問題ありません。

立体的で中高域の解像度が高いサウンド。装着感は疲れにくい印象

 それではTMA-2 Studioの音を、過去の製品と比較しながら聴いてみましょう。試聴にはロックのダイナミズムとダンス・ミュージックの圧が同居し、音の聴き分けがしやすいイントロがあるBOOM BOOM SATELLITES「Kick it Out」と、筆者が好んでプレイしているクリーンでファットなテクノ・サウンドが特徴のユニット、PIG&DANの「Slave to Rhythm」を選びました。また比較する製品は、TMA-1 Studio、筆者がカスタマイズして使用しているTMA-2、他社製スタジオ・モニター向けヘッドフォンの3つです。筆者カスタマイズのTMA-2は、スピーカー・ユニットがS04、イア・パッドはE02、ヘッド・バンドはH02、ケーブルはC04を採用しています。

 

 まずTMA-1 Studioは、比較的ハイが強くローが控え目な印象でジャキっとした感じ。TMA-2の筆者カスタムは、解像度と派手さを追求したチョイスなので自分の好みなのは間違い無し。他社製品はフラットながらも低音の圧に欠ける。そしてTMA-2 Studioは、全体的に音が遠く感じはするものの、落ち着いてディテールを聴き取れる印象。また、奥で鳴る音と手前で鳴る音の差異がよりくっきりして立体的に感じられました。例えれば、コンプを深めにかけてベッタリ張り付いて聴こえていたものが、コンプを外すとラウドでは無くなるけれど立体感が戻ったという感じに近いでしょうか。中高域の解像度が高いのと同時に、TMA-1 Studioや他社製品には無かった低域の伸びの良さも印象的でした。

 

 また、最も気に入ったのは装着感です。アルカンターラの肌触りと厚みのある形状記憶フォーム、同じく厚みのあるヘッド・パッドのおかげで快適にフィットし、長時間の作業でも耳や頭に痛みを感じることが少ないと思います。外部への遮音性においてはどの製品よりも優れていると思いました。やはり“Studio”という名を冠しているだけに、集中して長時間クリアな音を聴き続けるという用途にふさわしいと感じます。

 

 独自のモジュラー・システムにより、万一故障個所が出てもそのパーツだけ取り替えることで製品寿命が延びることにもなるし、自身の用途に合わせてアップデートすることも可能です。筆者愛用のTMA-2でも、イア・パッドはDJ用(E02)とモニタリング用(E04)の2種類を使い分けていて、イア・パッドを付け替えるだけで同じ製品とは思えないほど全く違う音になります。TMA-2 Studioで言えば、イア・パッドをオン・イア・タイプのE02に付け替えることで、より低音に迫力が出てDJプレイにも使いやすくなると思います。機会のある方にはぜひトライしていただきたいです。

 

Q'HEY
【Profile】国内テクノ・シーンの草創期から活躍し続けるDJ/プロデューサー。1998年からテクノ・イベントのREBOOTを主催し、ヨーロッパやアジア諸国でも数多くのパフォーマンスを行っている。

 

AIAIAI TMA-2 Studio / Studio XE

オープン・プライス

(市場予想価格:25,800円前後/TMA-2 Studio、19,800円前後/TMA-2 Studio XE)

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SPECIFICATIONS
●共通項目:
▪形式:密閉型 ▪ドライバー:40mm径(ネオジム・マグネット) ▪感度:113dB ▪再生周波数帯域:20Hz~20kHz ▪インピーダンス:32Ω ▪ダイアフラム素材:バイオセルロース

●TMA-2 Studio:
▪イア・パッド:E08(アルカンターラ素材) ▪ヘッド・バンド:H04(ナイロン)

●TMA-2 Studio XE:
▪イア・パッド:E04(PUレザー) ▪ヘッド・バンド:H01(PUフォーム)

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