Lil'Yukichi × Sound's Deli × murozo 〜360 Reality Audioプロダクション・レポート

Lil'Yukichi × Sound's Deli × murozo 〜360 Reality Audioプロダクション・レポート

最後に登場するのはSure Biz所属エンジニアのmurozo氏とビート・メイカーのLil'Yukichi、5人組ヒップホップ・クルーのSound's Deli。彼らが繰り出すバングな楽曲「NOISE」は、洗練されたビートと360°をフルに生かしたガヤが印象的なビート・ミュージックだ。

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Amazon Music Unlimited - Lil’Yukichi & Sound’s Deli 『NOISE』

360 by deezerでもお楽しみいただけます。

【動画】Lil'Yukichi & Sound's Deli × 360 Reality Audio

【動画】murozo × 360 Reality Audio

メンバー5人のガヤをいろいろなところに配置した

 「四方八方から音が聴こえてくる体験は、すごく新鮮で面白いですね」と完成したミックスを聴いてうなずくのは、Sound's DeliのリーダーKaleido。曲についてはこう話す。

 「360 Reality Audioで曲を作ると聞いてまず思ったのは、メンバー5人のガヤをいろんなところに配置して聴かせたら面白いんじゃないかということ。普段よりもガヤを多めに入れているのでラップが聴き取りにくくなるかもしれないと最終ミックスを聴くまで不安でしたが、この360 Reality Audioだと意外にすっきりと聴こえました」

 続けてLil'Yukichiは、ソニー・ミュージックスタジオに設置された13台のスピーカー・システムでの試聴と、ヘッドホンで聴いたときでは、音の距離感や空気感が全く同じ印象でびっくりしたと言う。

 「ヘッドホンでの試聴でもモニター・スピーカーで聴いている感じがして、本当にそこに居るかのような感覚を受けました。自分も立体音場を生かせるよう、今回は効果音……例えば爆発音やパーカッションなどを多めに入れるように意識してビートを作っているんです。あと、バースではあえてドラムだけ絞り、フックでワッとシンセを入れることによって、セクションごとに大きくコントラストを付けています。murozoがそれらを360 WalkMix Creator™でミックスすることによって、より効果的に演出されていると感じました」

 murozo氏は、AVID Pro Tools上のトラック数は全部で68になったと説明する。

 「ボーカルは全部で24trあります。そのうちの2trはAUXトラックで、リバーブなどのボーカル・エフェクト用です。ほかにはドラムの各パーツに16tr、ROLAND TR-808系キック・ベースに3tr、シンセ・リードやコードが3tr、ミサイルや爆発音などの効果音が15tr、ネーム・タグが1tr、そして360 WalkMix Creator™上に配置したオブジェクト用のAUXトラックが6trあります。オブジェクトはフロント/サイド/リア/トップ・フロント/トップ・リア/ボトム・フロントに置き、各パートの音像を補強するために設置しているんです」

クリスタル・サウンドのコントロール・ルーム。360 Reality Audioミックス時のスピーカー構成は5.0.4.2ch仕様で、GENELECのモニターを主に用いている

クリスタル・サウンドのコントロール・ルーム。360 Reality Audioミックス時のスピーカー構成は5.0.4.2ch仕様で、GENELECのモニターを主に用いている

オブジェクト・ベースだと直感的にミックスできる

 murozo氏は一度ステレオ・ミックスし、ステムを360 WalkMix Creator™上にオブジェクトとして配置したそうだ。

 「360 WalkMix Creator™を触って感じたのは、チャンネル・ベースよりオブジェクト・ベースの方が直感的にミックスできるということ。特に今回のようなガヤや効果音に関しては相性が良く、作業もしやすかったです」

 ヒップホップをいかに360 Reality Audioで表現できるのか、ここにmurozo氏は一番注力したという。

 「特にこの曲ではTR-808系キック・ベースの鳴りが重要だと思いました。360 Reality Audioではボトムにもスピーカーがあるので、最初はそこからキック・ベースを鳴らしてみたんですが、どうもピンと来なかったんです。いろいろ試行錯誤してみた結果、キック・ベースをElevationが0の位置、つまりセンターに置いて、フロントとサイドに配置したAUX用オブジェクトに送るとすごく奇麗に鳴りました」

「NOISE」の360 WalkMix Creator™画面

「NOISE」の360 WalkMix Creator™画面。murozo氏は、各楽器のオブジェクトのほかにも、AUX用オブジェクトをフロント/サイド/リア/トップ・フロント/トップ・リア/ボトム・フロントに設置し、各楽器の音像を補強するために使用している

 さらにキック・ベースのトラックを複製し、一方にはハイカットEQを用いてローエンド成分のみを抽出したそうだ。

 「ローエンド成分のみのトラックはボトム・フロントに配置し、リアにも少し送っています。こうすることでキック・ベースとうまく混ざり、センターだけでなく球体全体でキック・ベースが鳴っているような音像を作れました。ハイハットやスネアにおいても同様に、サイドやトップ・フロント、トップ・リアに配置したAUX用オブジェクトに送っています。こうすれば、ドラム全体の音像を大きくすることができるんです。オブジェクトの高さが変わると音色も若干変わったので、ここら辺はEQ処理などでの微調整が必要でしたね」

 プリレンダリングに関して、murozo氏はこう続ける。

 「普通ならキックなどメインのパートをダイナミックに選ぶと思うのですが、自分の場合、サイドに配置したAUX用のオブジェクトを選んでみたところ音像が良くなったので、いろいろ試して見るべきだなと思いました。360 Reality Audioは空間をすごく感じられる音像だということが分かったので、既成概念を壊すような新しいミックスにどんどんチャレンジしていきたいですね!」

 

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