512 AUDIO Limelight レビュー:ポッドキャストなどの音声収録用にカスタムされたダイナミック・マイク

512 AUDIO Limelight レビュー:ポッドキャストなどの音声収録用にカスタムされたダイナミック・マイク

 自宅やリハスタから行う小規模配信が流行している中、さまざまな配信用の機材が登場し、多くの人が音楽機材に触れるようになってきました。今回紹介するマイク、512 AUDIO Limelightもその一つです。

芯を持ちつつ抜け感もあるサウンド。SNが良く小さな音量でもクリアに音をとらえる

 Limelightは音声やスピーチのためにカスタム・チューニングされたダイナミック・スタジオ・マイクで、ポッドキャストやブロードキャスト、ライブ・ストリーミングなどで卓越した明りょうさを発揮します。焦点を絞ったピックアップ・パターン、内蔵のポップ・シールド、ローカット・フィルターを特徴としており、声のニュアンスをとらえて不要なノイズをカット。放送スタジオのようなクリアで自然な音声を自宅でも得ることができるのです。とは言えポッドキャスト・マイクとしては上記のようなキャッチ・コピーは珍しくないため、“実際にはどうなんだ?”と思われる方も多いでしょう。順番にご説明いたします。

 

 製品の箱を開けるとLimelight本体とマイク・ホルダー(5/8インチ変換ネジ付き)、ソフト・ケース、説明書が入っていて、無駄なものは一切無いシンプルさです。

512 AUDIO Limelightに付属するマイク・ケースとスイベル・マウント

マイク・ケース、スイベル・マウントが付属する。可動範囲の広いスイベル・マウントは、配信環境に合わせた設置が行いやすい

 早速ケーブルを接続し、小型の卓上ミキサーに接続してサウンド・チェックを行いました。まずは私の声で確認をしてみたところ、中低域をしっかりと含めてまとまった音としてとらえられていて、非常に芯のあるサウンドという印象です。また抜け感もしっかりとあり、中低域が強調されるマイクによくあるこもったような音にならず、とても安定している音というイメージ。SN比が良いため、ゲインを上げて小さな音量で話してもクリアに音をとらえてくれるのも好印象です。本体に搭載されている100Hzのローカット・フィルター(ハイパス)も使用してみたところ、しゃべる上で不要な低域成分がカットされたため、ポッドキャストがメイン用途の方は入れっぱなしでも良いくらいだと思いました。

Limelightの底面にあるハローカット・スイッチ

Limelightの底面にあるハローカット・スイッチ。100Hz以下をカットし、不要なノイズを抑えることができる

 声以外に対して使用してみた場合はどうなのだろうか?と、いろいろなソースで試してみました。まずはアコースティック・ギターの場合です。いわゆる宅録を想定し、ギターのホール前、ホールとネックの境目、ネックの12フレット辺りの3カ所にLimelightを向けてチェックしました。これも予想を超えるまとまりのある良い録り音です。楽曲のアプローチ次第でもあるのですが、ホールとネックの境目(少しネック寄り)にマイクを向けることで、アコギ特有のジャカジャカした感じと、ホールから出る温かみある音を見事にキャッチできます。

超指向性で不要な音が入りづらくクラリネットなど管楽器の音も奇麗に収音できる

 次はエレキギターの場合です。ギター・アンプのキャビネット・スピーカーにマイクを当てて録ってみました。マイクのセッティング次第で大きく音の方向性は変わりますが、スピーカーの中心を目がけて斜めに向けた状態で録ると、エレキギター特有の重厚感のあるドライブ・サウンドをとらえることができます。クリーン・サウンドで録った際はあっさりした音の印象。FENDER StratocasterよりもTelecaster系のジャキっとした音の方が相性が良いと思いました。

 

 最後にクラリネットを吹いている知り合いに協力していただきました。ポッドキャスト・マイクを購入する方々の多くはゲーム配信や歌ってみたなどの動画撮影、または宅録用途の方がほとんどだと思います。しかし昨今のコロナ禍により、リモートで練習やレコーディングをする吹奏楽関係の方々も多いのではないでしょうか? そういった需要も考えてLimelightでクラリネットを録ってみた結果、まさに最適であることが分かりました。Limelightが超指向性であるため、目的の音のみをとらえて不要な音を排除してくれることがポイントとなっています。クラリネットのような楽器では、運指の際にキーを押さえることでパカっと小さな音が発生してしまい、コンデンサー・マイクや指向性の広いダイナミック・マイクでは、これらの音もはっきりと収音されてしまいます。超単一指向のマイクであれば、少し距離を取ってマイキングしてあげるだけで奇麗に目的の音だけを収音可能です。

 

 個人的な総評としては文句無しの満点です。まとまりのある音で、かつやせた感じもしない良質な音はLimelightならではだと思います。汎用性を考えても非常にコスト・パフォーマンスに優れたマイクですね。宅録する方は1本持っていて損は無いと思います。また、管楽器をはじめアコースティック系の楽器を演奏されている方には強くお薦めできます。細かなセッティングをせずとも音の厚みが得られ、こもらずクリアな音で録れるので、最初のマイクとして選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

 

柳田将秀
【Profile】音楽制作機材専門店の販売員を経て2021年に“くまさウんド”として独立。楽曲の制作/編曲/ミックスだけでなく、個人の制作環境構築やスタジオ・システムのコンサルタントも担当している。

 

512 AUDIO Limelight

オープン・プライス

(市場予想価格:19,800円前後)

512 AUDIO Limelight

SPECIFICATIONS
▪カプセル・タイプ:ダイナミック ▪カプセル・サイズ:28mm ▪周波数特性:50Hz〜15kHz ▪指向性:超指向 ▪感度:-54dB ▪最大音圧レベル:138dB ▪出力インピーダンス:600Ω ▪外形寸法:60.8(φ)×167.5(H)mm ▪重量:379g(マイク本体)

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