SKY-HI インタビュー【前編】〜アルバム『八面六臂』は誠実に音楽に向かい合ってきたことからのギフト

SKY-HI インタビュー【前編】〜アルバム『八面六臂』は誠実に音楽に向かい合ってきたことからのギフト

自身の音楽活動に加え、代表取締役CEOを務めるレーベルBMSGの設立や、ボーイズ・グループ・オーディションのTHE FIRSTプロジェクト発足、そこから誕生したBE:FIRSTのプロデュースと、止まることなく活動を続けるSKY-HIが、3年ぶりのオリジナル・アルバム『八面六臂』をリリースした。その制作についてSKY-HIにインタビューを敢行。制作の肝となった“本質的な部分でつながりを持った人との邂逅”やコロナ禍以降の“友人とのより本質的な会話”とは?

Text:Kanako Iida Photo:Hiroki Obara

“こんな良いアルバム作ってたの?”って驚いた

『八面六臂』の制作はいつから始めたのでしょうか?

SKY-HI アルバムの制作をしようという意識は出来上がる瞬間まで無くて。ベスト・アルバム『SKY-HI’s THE BEST』のリリース以降、やりたい曲をやりたい人とやりたいようにやっていくことを大事にしていたから、オムニバス・アルバムみたいになると思っていました。最後の3、4曲は時間が無くて、スタジオでゼロから作ってできなかったらアルバムが出せない状態で、余計なことを考える余地が無かった結果、自分の作りたいものや感情が込められたものが純度の高い状態で生まれたんです。それがたまたま人生の中でも動きの激しい1年の中で行われたから、まるで日記を綴るようにドキュメンタリーになって、コンセプチュアルなものを作ろうとするときよりもコンセプチュアルに聴こえて。アルバムの最後の方で、序盤にあった鬱屈とした感情を拾い上げて伏線を回収していくさまは爽快ですらありました。タイトルは30秒くらいで決まったし、曲順も感情の時系列として完全に整った状態になったので、マスタリング・チェックで初めて全曲通して聴いて “こんな良いアルバム作ってたの?”って驚いちゃいました(笑)。今回はすべてにおいてそういうものが多かったですね。それは今まで頑張って誠実に音楽に向かい合ってきたことからのギフトであり、この1年人生に対して必死で向き合っていたから、その時々を表すのにふさわしい言葉が出てきて、後から自分を驚かせたんだと思います。BMSGのトレーニー(練習生)やBE:FIRSTにいつも“ライブの本番前まではとにかく考えて考えて、本番は何も考えないでやった方が良い”と言ってきたけど、楽曲制作でも同じことが言えたんだなと衝撃を受けました。

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フィーチャリング曲は解放に向かう瞬間だった

プロデューサーやトラック・メイカーとともに制作する場合には、どのような流れで行うのですか?

SKY-HI SOURCEKEY(編注:SKY-HIとSHIMIによるプロデュース・ユニット)ではデモを作って投げる感じですけど、ビート・メイカーとやるときは、スタジオに行って口を出します。例えば“攻撃的な曲”って言っても、治安の悪そうなトラップ・マナーの曲もディストーション・ギターが鳴っているような曲もあって、全然違うけど今の自分のスタイルだとどっちもあり得るし、齟齬が起こりやすいので、行って作ってもらって、できてきたら歌ってみますね。その一つがSUNNY BOYプロデュースの「Mr.Phycho」。SUNNY BOYのところに行って“こんな感じで作ろうよ”みたいに話して。

 

やり取りはリモートではなく対面で?

SKY-HI 対面じゃないとむしろ面倒くさいことが多いですね。リモートだと“こんな感じ”みたいなバイブスの話はできないので。今回それが通底されていたのが、作品に制作時の温度感が込められた要素かなと思います。コミュニケーションの一環として曲を作って、コミュニケーションの延長として曲を完成させていますね。会話と制作の差があまり無い状態で、今一緒に居たい人と曲を作るから必然的に最後の方は明るい曲が多くなって、それを並べたら、頭の方の孤独感ややるせなさと相まってすごくエモーショナルなものになりました。

 

それは今の世の中の流れがあったからでしょうか?

SKY-HI 絶対にそうだと思います。去年の曲で歌われている孤独感は、人と会えない状況による局所的なものではなく、もっと根本的な意味で同志、理解者、仲間みたいなものの本質的な不在。自分の音楽を一緒に鳴らしてくれる唯一無二の仲間が居るのは間違い無いんですけど、自分に対しても含めたやるせなさや苛立ち、憤りがあって。その孤独感が、BMSG設立やTHE FIRSTプロジェクト発足以後に本質的な部分でのつながりを持った人との邂逅や、友人とのより本質的な会話の連続によって無くなっていったのはすごいことでした。THE FIRSTに救われたところはほかにもいっぱいあって。自分は15年間アイドルをやっていて、ある程度想像できる範囲の成功はしてきて、それ故に満たされなかった部分がこびりついて一生離れないかもと思っていたんです。でも、過去の自分のような状況の若い才能を導けて、彼らが伸びたり光が見えたり、彼らから愛とか感謝とかリスペクトをもらったときに、間接的に昔の自分にありがとうって言われているようなものだから、それで過去のトラウマが解消されていったのが、信じられないくらい本当に大きくて。アルバム中だと「Dive To World feat. Takuya Yamanaka」「Holy Moly Holy Night」「14th Syndrome feat. RUI, TAIKI, edhiii boi」の3曲は解放に向かう瞬間でした。最後の最後に「One More Day feat. REIKO」を録って聴き返したら冒頭で言っている感情の回収をしているし、アルバムを通して聴いたときに“だから今、昔に比べると心が楽なのか”と。本来なら今の方がはるかにしんどいはずなんですけどね。体もだし、本当に時間は無いし、責任やプレッシャー、やらなきゃいけないこと、不安、悩みはめちゃくちゃ多いですけど、それでも心がとても楽なのは、ずっとあったトラウマが解消されたからだと思うと、気持ちは晴れやかですね。

 

それがサウンドに反映されているのでしょうか?

SKY-HI サウンドと言うより、レコーディング中の空気が曲に反映されていることが大きいような気がします。でも音楽って本来演奏しているところを録るのがレコーディングだもんね。そういった意味でもやっている作業は本質的なレコーディングだったと思います。めちゃくちゃ楽しかったですね。

 

 

インタビュー後編(会員限定)では、 SKY-HIがプログラミングから手掛けたアルバム収録曲「Simplify Yourlife」「Oh s**t!!」のDAWプロジェクト画面やスタジオ写真を公開。Web限定の撮り下ろしカットも掲載しています!

Release

『八面六臂』
SKY-HI
エイベックス:
AVCD-96818(CDのみ)
AVCD-96816/B(CD+DVD)
AVCD-96817/B(CD+ Blu-ray)

Musician:SKY-HI(vo)、SUNNY BOY(vo)、Shingo Suzuki(k、g、prog)、Tak Tanaka(g)、Michael Kaneko(g)、Aile The Shota(vo)、山岸竜之介(g)、山中拓也(vo、g)、ちゃんみな(vo)、RUI(vo)、 TAIKI(vo)、edhiii boi(vo)、DABOYWAY(vo)、Kan Sano(k、cho)、REIKO(vo)
Producer:SKY-HI、Ryosuke “Dr.R” Sakai、SUNNY BOY、Shingo Suzuki、hokuto、KM、☆Taku Takahashi、SOURCEKEY、Matt Cab
Engineer:Ryosuke “Dr.R” Sakai、SHIMI、D.O.I.、yasu2000、神部秀彰、Mitsunori Ikeda、Matt Cab
Studio:THE LAB -OVERTURE-、prime sound studio form、他

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