前項の「②プロが徹底検証!AIツールPt.1」と「②AIツールPt.2」では、作編曲家/キーボーディストのおおくぼけいとエンジニアの渡部高士というプロ2名にAIツールをレビューしてもらったが、いかがだっただろうか? 今回は、DTMや作曲といった音楽制作全般に役立つ全12のAIツールを“用途別”にご紹介。これらのツールを使いこなせば、あなたの音楽制作がより豊かなものになること間違いなし! ぜひ自分に合ったAIツールを見つけて、音楽制作の可能性を広げてみてほしい。
EVABEAT MELODY SAUCE 2
#作編曲
約300種類の音楽スタイルに対応する、メロディ生成特化型MIDIジェネレーター
EVABEAT MELODY SAUCE 2は、AI技術を活用したメロディ生成プラグイン。第一線で活躍するプロデューサー/作曲家によるメロディを学習したPhraseBuilderエンジンを採用し、オリジナルメロディを無限に生成することができる。メロディの長さや複雑さ、グルーブ、ムード、オクターブの高さ、キーなどを自由にカスタマイズすることが可能だ。またヒップホップ/トラップ/EDM/ハウス/テクノ/ポップ/レゲトン/R&Bなど300種類以上のスタイルを備え、ピアノ/シンセ/ギター/ベース/マレット/ベル/ストリングスといった100種類近いインストゥルメントを内蔵。リバーブ/ディレイ/コーラスの3種類のエフェクトも搭載している。生成されたメロディは、MIDIデータとしてDAWにエクスポートでき、著作権フリーで利用可能だ。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AU/VST/VST3
Hexachords Orb Producer Suite V3
#作編曲
特定の音楽要素のフレーズ生成に特化した、シンセ内蔵プラグイン4種類のバンドル
Hexachords Orb Producer Suite V3は、ORB CHORDS/ORB MELODY/ORB ARPEGGIOS/ORB BASSという4種類のプラグインを同梱したバンドル。それぞれコード/メロディ/アルペジオ/ベースラインの生成に特化したプラグインとなっており、AIがフレーズを無限に生成する。キーやスケール、ベロシティ、デュレーション、タイミング、フレーズの複雑さなどを調整できるほか、設定したコード進行に基づいたフレーズの生成も可能。フレーズはMIDIノートとしてエクスポートできる。また、フレーズは各プラグインに内蔵のシンセ音源、ORB SYNTHによって再生される。ORB SYNTHはウェーブテーブル方式を採用し、オシレーターとLFOをそれぞれ2基ずつ搭載。またアンプエンベロープ、フィルターに加え、リバーブやディレイ、ドライブなどのエフェクト、モジュレーションマトリクスなども備えている。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AU/VST3
TOONTRACK SUPERIOR DRUMMER 3
#作編曲
高精度なオーディオMIDI変換が可能な、ドラム専用ソフト音源
SUPERIOR DRUMMER 3は、TOONTRACKが開発したドラム専用ソフト音源。世界的エンジニア、ジョージ・マッセンバーグによって録音されたドラムサンプルの容量は約235GBにもおよび、ステレオから最大11chのサラウンドに対応している。また約350種のビンテージ・リズムマシン・サンプルを収録するほか、35種類のミキサーエフェクトも内蔵する。さらに、Tracker機能によってキックやスネア、ハイハット、シンバル、タムといったドラムパーツのサンプルをドラッグ&ドロップするだけで瞬時にMIDIデータへ変換可能。AI技術を駆使することで、ゴーストノートなどの細かいドラムヒットも高精度に検出することができるという。ウィンドウサイズの変更や、タブウィンドウの着脱といったユーザーインターフェース機能も充実している。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AAX/AU/VST、スタンドアローン
W. A. PRODUCTION INSTACOMPOSER 2
#作編曲
メロディ/コード/リズムなどのフレーズを最大6tr生成可能な作曲支援ツール
メロディ/コード進行/リズムパターン/ベースライン/パッドフレーズといった音楽要素を、AIを活用して自動生成できるプラグイン、W. A. PRODUCTION INSTACOMPOSER 2。最大6trまでのフレーズ生成が行え、各トラックでMelody/Rhythm/Bass/Pad/Chord/Riff/Ostinato/Drumsなどのモードを選択できる。また、同一のモードを複数のトラックにおいて選ぶことも可能だ。フレーズはコード進行とスケールに基づいて生成され、繰り返しの確率や半音の使用量、ボイシングの数、コードの複雑さ、フィルインの量などの微調整もできる。完成したフレーズはMIDIデータとして保存するか、直接DAWにドラッグ&ドロップしてエクスポートすることも可能だ。さらに、押すたびにコード進行が生成されるNew Chord Progボタンを搭載するほか、膨大なコード進行プリセットも備えている。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AAX/AU/VST
iZotope Neutron 4
#ミックス
複数のモジュールエフェクトから構成された、ミックスのための総合プロセッサー
コンプ/EQ/エキサイター/ゲート/スカルプター/トランジェントシェイパー/アンマスクといった複数のモジュールエフェクトを組み合わせて使用する、ミックスのための総合的なプラグインプロセッサー、iZotope Neutron 4。ワンクリックするだけでAIアシスタントが入力信号の解析を行い、そのトラックに最適なモジュールを組み合わせたプリセットを生成してくれる。最新のバージョン4では、それらのモジュールのパラメーター設定を“画面切り替えなし”で行えるAssistant View画面を新たに採用。この画面は、入力ソースに応じたターゲットプリセットを選択できるTarget Libraryのほか、トーナルバランス/ダイナミクス/サウンドキャラクター/ステレオ幅を直感的に操作できるインテントコントロールを備えている。リファレンス音源を読み込ませれば、そのトーナルバランスカーブに近づけることも可能だ。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AAX/AU/VST3(64ビットのみ)
sonible smart:comp 2
#ミックス
AIが入力信号を分析し、パラメーターを設定してくれるコンプレッサープラグイン
sonible smart:comp 2は、入力信号に沿ったプロファイルを選択してAIに分析させるだけで、AIがコンプレッションにまつわるパラメーターを自動設定してくれるインテリジェントプラグイン。ディープラーニング技術や膨大なデータ、音響心理学的原理などに基づくコンテンツ認識型システム=smart:engineによって、迅速なコンプレッション処理を実現するという。2,000以上ものバンドで動作するスペクトル・コンプレッションに加え、コンプレッションの音色を変化させるColorダイヤル、ひずみ具合を調整するStyleダイヤル、特定の周波数帯域のみコンプレッションを適用することができるスペクトル・リンク機能などを搭載。またフリー・フォーム・トランスファー機能を用いれば、コンプレッサーのダイナミクス特性をより柔軟にコントロール(シェイピング)することができる。出力ゲインの自動調整やM/S処理にも対応する。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AAX/AU/VST
WAVES StudioVerse
#ミックス
オンラインプラットフォームおよびプラグインチェイン&プリセット提案サービス
StudioVerseは、WAVESが開発したコンテンツ認識型AIによるプラグインチェイン&プリセット提案サービス、およびオンラインプラットフォーム。このプラットフォームには数千種類ものプラグインチェインが格納されているだけでなく、世界的プロデューサー/エンジニア/クリエイターのオリジナルチェインがリアルタイムに追加&共有されつづけている。ユーザーは、StudioVerseのScan機能を用いることでAIが入力信号を解析し、StudioVerse上にある最適なプラグインチェインを提案される。気になるチェインが見つかったら、オリジナルチェインを作成できるプラグインWAVES STUDIORACK(無償)にロードすることで使用可能だ。マクロや細かいパラメーターの調整はもちろん、StudioVerse上でプロのチェインを“お気に入り”として管理したり、自身のチェインを共有したりすることもできる。
ご注意:StudioVerseは全ユーザーが利用可能なWebサービスですが、提案されたチェインやプリセットに含まれているプラグインを所有していない場合、それらはデモ版として機能し、一定時間後には利用不可となります。この制限を解消するには、WAVESのサブスクリプションサービスWaves Creative Accessへの加入や、プラグインバンドルWAVES MERCURYの購入を検討することをお勧めします。なお、既に所有しているWAVESプラグインのみを用いた検索結果を表示させることも可能です。
zynaptiq ADAPTIVERB
#ミックス
入力信号のサステインを再合成する技術を備えたリバーブプラグイン
AI技術を備えたリバーブプラグインのzynaptiq ADAPTIVERBは、入力信号のサステインを分析し、それを人工的に延長するサステイン再合成技術“人工サステイン・リシンセシス”を搭載。この技術を用いてリバーブテイルを生成し、入力信号のサステインに融合することで継ぎ目のない自然な持続音を実現するという。また、入力信号と調和しない高域の周波数成分をリバーブテイル(残響音)から取り除くことができる機能“ハーモニック・コンター・フィルター”(HCF)を備えるため、入力信号の特性に適応したリバーブ成分を付加することも可能だ。さらに、音源とリスナーを3D空間モデルに配置し、音波の伝播過程を仮想的にシミュレートするレイトレーシングリバーブと、一般的なオールパスフィルターを軸とするリバーブの2種類を採用。ドローンやパッドといったサウンドを作成するFREEZE機能も備えている。
対応OS:Mac/Windows
プラグイン形式:AAX/AU/RTAS/VST2.4/VST3
LANDR
#マスタリング
オンラインマスタリングを中心に、音楽制作/配信をサポートするWebサービス
LANDRは、サンプル/プラグインのダウンロード販売、クリエイター間のコラボレーション機能、オンラインマスタリング、音楽ディストリビューションなど、制作から配信までの全過程を包括したWebサービス。中でもAIを活用したオンラインマスタリングはLANDRの中心的な役割を担っており、ユーザーが楽曲をアップロードするだけで、プロフェッショナル品質のマスタリングを自動的に行ってくれるという。内蔵AIエンジンは、数千曲のデータを参照しながら楽曲を解析し、音圧/EQ/ステレオ幅/ダイナミクスなどを最適化。ユーザーはラウドネスレベルやスタイルを3段階から選ぶことができ、マスタリング前後の音源比較なども行える。すべての操作はブラウザー上で完結し、書き出しファイル形式はMP3/WAV/HD-WAVに対応。マスタリング後の楽曲を、直接配信プラットフォームにアップロードすることも可能だ。
Kits.ai
#音声変換
AIモデルによる音声変換やテキスト読み上げが可能なオンラインプラットフォーム
AIを活用した音声変換やテキスト読み上げ(Text to Speech)など、多様な音声プロセッシングを実現するオンラインプラットフォーム、kits.ai。ユーザーは自身の音声データをアップロードし、AIによってトレーニングされた音声モデル(著作権フリー)を選択することで、自身の代わりに歌唱やスピーチをさせることが可能だ。音声モデルの種類は幅広く、性別はもちろん、ロック/パンク/R&B/ポップ/ローファイ/ジャズといった音楽ジャンル、歌/ラップ/スピーチといったスタイルなど数多くのオプションを用意。また、音声をドラム/ギター/ベース/サックス/チェロといった楽器に変換する機能も搭載している。さらに、好きなボーカリストやナレーターの音声をAIに学習させることで、独自の音声モデルを作成することも可能だ。なお、AI変換された音声はWAVデータとしてダウンロードすることができる。
LALAL.AI
#ステム抽出
2ミックス音源からボーカル/楽器のステムを抽出できるオンラインツール
LALAL.AIは、楽曲からボーカルや楽器などを抽出することに特化したオンラインツール。ユーザーがアップロードした2ミックスの音源からボーカル/ドラム/ベース/ピアノ/エレキ/アコギなどのステムへと分離することができる。操作はシンプルで、音源データをドラッグ&ドロップでWebブラウザーにアップロードし、抽出したい楽器名を選択するだけ。ニューラルネットワークアルゴリズムを用いて、AIが音質を損なうことなく指定したステムを自動抽出してくれるという。抽出されたステムは、WAV/MP3/FLAC/AIFFファイルといったさまざまなフォーマットでダウンロード可能。分離前後の音源を比較試聴できるプレビュー機能も備えている。また、すべての操作はWebブラウザー上で完結するためアプリやソフトのインストールは不要だ。リミックスやカラオケトラックの作成など、幅広い用途に活用できるだろう。
wavtool
#音楽制作(DAW)
ブラウザー上で動作し、AIチャット機能を通じてあらゆる作業を行えるDAW
ブラウザー上で動作するAIチャット機能搭載型DAW、wavtool。ユーザーは、“Conductor Chat”というAIチャット機能(日本語にも対応)を通じて、ドラムパターン/ベースライン/メロディ/コード進行といったMIDIデータや内蔵音源によるオーディオファイル生成のほか、サイドチェイン・エフェクトの設定、バスの作成、オーディオファイルからのステム抽出、指定したオーディオファイルのMIDI変換、MIDIクリップのヒューマナイズ、コード解析、レイテンシーの計測&補正など、あらゆることが行える。また、フレーズやコード進行などをConductor Chatを通じてAIに提案してもらうことも可能だ。提案されたフレーズやコード進行は、MIDIクリップとしてプロジェクトにドラッグ&ドロップですぐに反映させることができる。また、プロジェクトはクラウド上に自動保存されるほか、WAV/MP3ファイルとして書き出すことも可能だ。