夢ノ結唱 × DÉ DÉ MOUSE 〜DÉ DÉ MOUSEサウンドとSynthesizer V版POPY/ROSEの融合

夢ノ結唱 × DÉ DÉ MOUSE 〜DÉ DÉ MOUSEサウンドとSynthesizer V版POPY/ROSEの融合

あえて2人の歌声を聴かずに曲を作りましたが“これならいけるな”と確信しましたね

作曲家/編曲家/プロデューサー/キーボーディスト/DJとして、自身の作品だけでなく楽曲提供やリミックスも幅広く手掛けるDÉ DÉ MOUSE。今回彼は、POPYのキュートな歌唱が際立つポップス「Little Lazy Princess」と、ROSEが歌う疾走感のあるダンスナンバー「流れ星のDarling」の2曲を制作。“DÉ DÉ MOUSE印”とも言える豊潤な楽曲と、POPY/ROSEの巡り合いに迫っていく。

『Little Lazy Princess』
夢ノ結唱 POPY
(ブシロードミュージック)

『流れ星のDarling』
夢ノ結唱 ROSE
(ブシロードミュージック)

作詞/作曲:DÉ DÉ MOUSE ※両曲とも

“こういう表現もあっていい”と感じてほしい

——「Little Lazy Princess」「流れ星のDarling」の制作はどのようにスタートしましたか?

DÉ DÉ MOUSE(以下DÉ DÉ) 普段作曲のオファーをいただくときは歌手の歌声を聴いてからイメージすることが多いのですが、今回はシンプルに自分の中で納得のいく曲を作って、それがどんな声色だろうが良い曲になるようにしたいという考えが自分の中にありました。だからある程度曲ができるまでPOPYとROSEの声を聴かなかったんです。後から声を聴いたときに、“これならいけるな”と確信しましたね。ちょっと変則的な作り方でした。

——なぜそのような方法を?

DÉ DÉ 僕にオファーが来た意味を考えると、夢ノ結唱やバンドリ!の世界観に寄ってしまうのは意味がないかなと。見せかけだけすり寄ってしまってもリスナーには分かるでしょうし、だったら距離感を持ちつつ、自分が好きなものをきちんと出した方がいいように思いました。特にPOPYの「Little Lazy Princess」は歌が音声合成ソフトどうかではなく、シティポップとして聴ける曲を意識しています。

——両曲ともDÉ DÉ MOUSEさんらしさがありつつ、そこに2人のボーカルがうまく合わさっているように感じます。それぞれの歌声はどのような印象でしたか?

DÉ DÉ POPYは曲に当ててみたら、本当にイメージ通りでしたね。「Little Lazy Princess」は猫目線の曲で、猫とちょっとわがままな女の子を重ねて書きました。猫の甘ったるい感じだけじゃなく、元気な印象もあって子供っぽくなりすぎなかったのが良かったです。「流れ星のDarling」のROSEは思っていたよりロックで、乙女な歌詞と合わせるとちぐはぐな印象になってしまうから、少しバランスを取っていきました。80’sな感じにしたくて、ROSEの力強い表現でよりそれっぽくなったところもあるので、あまり抑えすぎても耳あたりが良すぎて右から左に流れていっちゃうかなと。

——Synthesizer Vは日頃から使っているのですか?

DÉ DÉ 2023年の頭くらいから導入していて、今回も一部はお願いしましたが、基本的には自分で調声しています。仮歌とかはほぼSynthesizer Vで事足ります。知らない人からは“これ誰が歌ったの?”って必ず聞かれるくらい完成度が高いですよ。あとはSynthesizer Vで作った声を加工してサンプル素材にしていたりもします。

——歌を作る際に意識したところはありますか?

DÉ DÉ ボカロPの方が作る曲では人間には歌えない音域のメロディを入れていたりして、僕も好きだしあれこそ正しい使い方だと思います。ただ、今回はPOPYとROSEという“人”に歌ってもらうという大きなイメージがあって。作曲でもリミックスでも、歌が真ん中にあるように作るというのをここ数年意識していて、人間が歌える、出せる音域の中で作ろうというのはこだわりました。音声合成ソフトを使って、いわゆるボカロ曲的な世界だけでなく、“こういう表現もあっていいんだな”と感じてくれたらうれしいですね。

エアーの成分を足して自然な高域を演出

——ボーカル処理はどのように行いましたか?

DÉ DÉ マイクで録音した場合、レンジが広くて伸びのある音になりますよね。それと比べると音声合成ソフトの歌声は高音の伸びが少ないのですが、ただ単純に高域を上げるだけだと耳がキンキンして痛くなってしまう。それを解消するためには結構極端な処理が必要になってくるんです。

——プラグインは何を?

DÉ DÉ 合成音声というのもあって、今回はXfer records OTTをよく使いました。OTTは恐らく今の時代の音になるコンプで、たくさんプラグインを挿すよりもOTT一発の方が前に出ますね。あとはボーカルプロセッサーのLEAPWING UltraVox、Ableton Live付属のReverbなどです。UltraVoxはエアーの成分、つまりマイクで録ったような自然な高域を足せるので重宝しています。サンレコさんで言うような複雑なことは特にしていません(笑)。でも結果として出来上がったものが良ければそれでいいんです。

——オケの方でも、歌が際立つような処理を行っていますか?

DÉ DÉ キックのアタックが前に出すぎないようにするとか、張り付くようなシンセの音にはしていないです。今はあまりそういう処理をする時代でもないかなと思っています。

——調声する上でのポイントはありましたか?

DÉ DÉ 「Little Lazy Princess」に関してはほぼベタ打ちです。「流れ星のDarling」も、ベタ打ちからしゃくりが過剰にかかっていた部分をなくしていったくらいかな。本当に特別なことは何もしていませんよ。MIDIノートを打ち込んで歌詞を入れるだけで、誰でもプロデューサーとして歌わせることができるソフトなんだと思います。

——ベタ打ちとは思えない歌唱力です。

DÉ DÉ あ、でも「Little Lazy Princess」の“I’m Shy Girl”の“Girl”は、英語の発音が良すぎるから直そうかなと思ったけどそのままにしました(笑)。逆に“I’m”の部分は、日本語発音の“あーいむ”になっていて、この方が歌としては自然に聴こえる。イントネーションはいろいろ試せますよ。

「Little Lazy Princess」0:32~の“You Don’t Know I’m Shy Girl”の部分

「Little Lazy Princess」0:32~の“You Don’t Know I’m Shy Girl”の部分。“I’m”を“あーいむ”と歌詞を打ち込むことで、自然な歌唱を演出している

——仮歌から本チャンまで対応して、クリエイターにとってはすごく有用なツールですね。

DÉ DÉ 今は自宅である程度レコーディングの完成形が見えますよね。さらにボーカルも録音する必要がないという域にまでなってきていて、そういった中でバンドリ!のキャラクターの声を使って自由に自分で曲が作れるのはすごいことだと思います。“この歌はROSEだったんだ!”みたいな曲がこれからたくさん増えてくると面白いですね。

Release

『Little Lazy Princess』
夢ノ結唱 POPY
(ブシロードミュージック)

『流れ星のDarling』
夢ノ結唱 ROSE
(ブシロードミュージック)

作詞/作曲:DÉ DÉ MOUSE ※両曲とも

【特集】夢ノ結唱 BanG Dream! × Dreamtonics Synthesizer V

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