こんにちは、みきとPです。連載第3回ということで、今回は僕なりの“セッション・テンプレートの制作”をしてみたいと思います。実は、あれほど効率化や時短をうたっておきながらテンプレートを作っていませんでしたので、これを機にやってみたいと思います。よろしくお願いいたします。
一部のトラックを無効にしておくと読み込みがスムーズ
まずはドラムから。僕は生ドラム系の音源を使うことが多いので、ファースト・チョイスのTOONTRACK Superior Drummer 3に加え、STEVEN SLATE AUDIO SSD5とXLN AUDIO Addictive Drums 2を立ち上げたトラックを作成します。さらに、キックのサンプルを鳴らすためにサンプラー・トラックを2つ作り、頻繁に使うクラッシュ・シンバルのためにオーディオ・トラックを1つ作って、サンプルをプロジェクト上に貼り付けておきます。ポイントは、重めのソフト音源を立ち上げたトラックを無効にしておくこと。そうするとテンプレートの読み込みがスムーズかと思いますので、ここではSSD5とAddictive Drums 2を無効にしておきます。
続いてはベースです。今回は、アンプ・シミュレーター・プラグインのPLUGIN ALLIANCE Ampeg SVTとNEURAL DSPのDarkglass Ultraをそれぞれ挿した2つのオーディオ・トラックを作成します。素の音を混ぜることもあるので、何もインサートしていないドライ・トラックも用意。ほぼ毎回挿すようなEQやコンプなども、あらかじめ挿しておくとよいでしょう。その他、最近よく使用するソフト音源、NATIVE INSTRUMENTS Prime BassやIK MULTIMEDIA Modo Bassも立ち上げ、これらすべてをバスにまとめ、幾つかのトラックを無効にしておきます。バスへのまとめ方は連載第1回を参考に、ショートカット“Command+Shift+G”でサクッとやってください。ドラム、ベースは、どちらもリズム・トラックとしてオレンジにしておきました。
次はギターです。ギターの場合は、マイク録音、実機のアンプ・シミュレーターを使用したライン録音、アンプ・シミュレーター・プラグインを使用したライン録音と、気分によって変わりますので、それぞれのためのトラックを用意しておくことにします。今回ひずみ系のプラグインはNEURAL DSPのArchetype: Cory Wongと、IK MULTIMEDIA Tonexにしました。さらに、エフェクト系の音を録るトラックと、クリーン・チャンネル用のトラックを追加。ギター・アレンジはさまざまで、結局あれこれ差し替えたりしてまうので、今回はひとまずここまでにして、バスにまとめ、緑にしておきました。
コードトラック&コードパッドはアイディア出しにも便利
ここからは、キーボードやシンセなどの鍵盤セクションです。まずは、コード・トラック、コード・パッドを用意します。これらは主にコード・ネームのガイドとして、また、いざというときのコード進行のアイディア出しのために使用します。
コード・トラックは、トラック・リストを右クリックして“コード トラックを追加”を選択して追加可能。トラックの任意の場所を鉛筆ツールを使ってクリックすると、“X”と書かれたボックスが作成されるので、それをダブル・クリックしてエディターを表示させます。そこから目的のコードを選択していくことで、コード進行を入力することが可能です。
コード・トラックにコードを入力できるようになりましたが、このままでは音は鳴らないので、コードを鳴らすための音源を作成する必要があります。トラック・リストを右クリックして、“インストゥルメント トラックを追加”を選択しましょう。今回はTOONTRACK EZ Keys2を使用することにしました。コード・トラックからコードを鳴らすインストゥルメント・トラックを指定できるので、作成したEZ Keys2を選択します。
コードパッドについては、下ゾーン下部にあるタブから選択して表示することができます。パッドをクリックしてコードを演奏することが可能です。そのほかにピアノ音源は、SPECTRASONICS KeyscapeとSYNTHOGY Ivoryを、シンセは、XFER RECORDS Serum、REVEAL SOUND Spire、REFX Nexusといった定番を並べて、すべて紫にしました。
ストリングスや打楽器用のトラックも一応テンプレートに入れておきますが、僕の場合は毎回使うわけではないので、Otherというフォルダーに入れてトラックを無効にしておくことにしました。曲調によって使う音色とあまり使わない音色があるので、上モノをどのくらいテンプレートに入れておくかが悩ましい部分ですね。オーケストラを使う曲をよく作ることがある場合は、それ用のテンプレートを別に作っておくのがよいでしょう。
ガイド・メロにはHALion Sonicを使用〜1つの音源で複数のMIDIを鳴らせる
さて、最後はボーカル・セクションです。まずは、仮歌を録音するためのオーディオ・トラックを3つと、ガイド・メロ用のトラックを4つ作成します。4つのガイド・メロについては、Cubase付属のSTEINBERG HALion Sonicからパラアウトして作成していますので、その方法を簡単に紹介します。
まずは、ラック・インストゥルメントからHALion Sonicを立ち上げましょう。“MIDIトラックを作成しますか?”というダイアログが表示されるので、“作成”をクリックします。
続いて、HALion Sonic内で4トラック分の音源を立ち上げましょう(僕はこれを“Guide Melo”としてプリセットに保存しています)。ミックス・タブより別々のアウトを設定し、本数分の出力を有効にしておきます。
その後、トラックリストを右クリックして“MIDI トラックを追加”を選択し、MIDIトラックを3つ追加して、パラアウトの設定は完了です。もし音が鳴らない場合は、MIDIチャンネルの出力番号が、HALion Sonicの出力番号に合っているかを確認しましょう。最後に、ボカロPらしくVOCALOID for Cubaseも立ち上げます。
まだまだ、FXトラックや挿しておくと便利なプラグインなど、手を加えられるところは多いのですが、今回はこの辺で。大体これで作曲の取っ掛かりになるようなテンプレートになりましたので、次回からの制作ではこのテンプレートを使用しようと思います。あ、言い忘れました。今このテンプレートはフェーダーがすべて0dBになっていますので、一括で−10~−7dBほど下げてから保存してくださいね。それでは次回また! みきとPでした。
みきとP
【Profile】2010年3月より、ネット・ミュージックのシーンにて活動を開始。ボカロPとして、ジャンルの垣根を越えた多様なVOCALOID楽曲を発表する。「いーあるふぁんくらぶ」「サリシノハラ」などのヒットを契機に海外でのイベント興行、本人歌唱でのライブやアルバム制作など、クリエイターとしてマルチに活動の幅を広げてゆく。2018年の「ロキ」や「少女レイ」などのヒットにとどまらず、音楽作家としてもアニメの主題歌やミュージカル、さまざまなアーティストへの楽曲提供を数多く手掛けるなど、幅広く活躍中。
【Recent work】
『NEPPUU〜熱風〜』
みきとP feat.初音ミク
STEINBERG Cubase
LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 12:13,200円前後|Cubase Artist 12:35,200円前後|Cubase Pro 12:62,700円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11以降
▪Windows:Windows 10 Ver.21H2以降(64ビット)
▪共通:INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー、8GBのRAM、35GB以上のディスク空き容量、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)