プロがあなたの楽曲にコメントやアドバイスをしてくれる、サンレコWeb会員限定企画『Send & Return ラボ』。一流のミュージシャンや音楽クリエイター/エンジニアが会員読者から送られた楽曲を聴き、具体的なコメントやアドバイスなどをお返しいたします。Vol.5では引き続きtofubeatsをゲストに迎え、あなたの楽曲にフィードバックをお戻しします!
今回の応募曲について
- アーティスト名:RABBIT DANCE
- 楽曲タイトル:Ghost Dance
- 補足コメント:日本の音階を使ったテックハウス、並びにフューチャーハウスをテーマに作りました。
- お悩み:ベースやメインリフの音の抜け感が足りず、使っているシンセがベース系ばかりで高域が少ないため楽曲全体のバランスが悪いと感じます。何か軽めのシンセを足したほうがいいのでしょうか? 今のままだと少し曲が重いので何か方法はありませんでしょうか?
- 試聴音源:下記をクリック↓
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※記事におけるアーティスト名や音源については、“非公開”でも対応可能です。
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【tofebeatsからの楽曲コメント】
曲が重く感じられる原因とは……?
さて、早くも本企画も2回目となりました。今回も楽曲をお送りいただいた皆様、ありがとうございます。今回はRABBIT DANCEさんの「Ghost Dance」についてフィードバックさせていただきます。ご本人からのお悩みの件、特に低域の処理についてフィードバックしていきたいと思います。ちなみに、こうした具体的な質問があるとフィードバックがしやすく、楽曲が選ばれる可能性やTipsとして触れる機会も増えるかもしれません。
まず、楽曲の印象はご本人もおっしゃっているように、テックハウス的なジャンルで、ベースでグイグイ引っ張るクラブ向けといった感じです。ウォームアップの時間帯でプレイするようなイメージの楽曲でしょうか。イントロの生ベースっぽいところからビルドアップに入り、1分過ぎにはシンセベースのリフが高い音域に入ってきて一つの展開を見せ、その流れが2回繰り返される楽曲構成かと思います。
RABBIT DANCEさんの言う“曲が重い”という件ですが、自分は音のレイヤー感よりも展開の作り方に起因するものだと思いました。シンセベースが増えたり、フレーズも展開するのですが、低域の抜き差しが無く、印象が変わらないので曲全体における展開の波が小さく感じられ、重さが強調されているように思います。
ベースラインのオン/オフやフィルターで曲の重心を上げる
クラブではDJがEQカットで展開を作るように、ベースラインのオン/オフやフィルターによる変化が楽曲として大きな起伏になります。現在の音源からはフレージングで展開を作ろうとしている印象を受けるのですが、どちらかというと今ある重量感を逆に利用し、軽い部分を作って起伏を作るというのは一つの考え方かなと思いました(フレージングもこれによって生きてきます)。
この起伏、自宅環境で制作していると感じにくいのが難点なのですが……。特に1分付近からのライザー部分ではサブベースを抜いたり、キックにハイパスを入れたり、展開が切り替わるところでサブベースを再び戻すなどしてアクセントを付けてみましょう。それだけで楽曲の重心が自然に上がると思います。ループが飽和してしまって自分的に足すものがなくて困ったとき、ついつい足し算での解決方法を考えてしまいますが、引き算での手法も頭に入れておくと良いかもしれません。
ハイハットや空間系エフェクトで曲の重心を上げる
一方で、RABBIT DANCEのおっしゃる通り、曲の重心を上に持っていくには上モノも重要になるかと思います。ハイハットの音量などは現行のテックハウスと比べると少し控えめかと思いまして、これは前回のフィードバックでも書いたように、メーターなどを使ってお気に入りの楽曲とバランスを比べる作業があると良いのかなと感じました。
今ある素材を生かすとしたら、自分ならハイハットなど中高域のドラム素材を少し前に出し、さらに空間を埋めるためにリバーブなどの空間系エフェクトを差します。あとパーカッション的なもの。今でも若干入ってはいますが“さらに追加する”というのも一つのアイディアではないでしょうか。
シンセを足すというのは一個の解決策ではあるのですが、やはり必然性が無い中で“なんとなく足したシンセ”という感じになってしまう可能性もあり、自分だったらもうちょっとSE的な音や声ネタなどを入れたり前述のベースの抜き差しなどで展開を作るかなぁ……といったように感じました。
“押してダメなら引いてみろ”の精神で
あと、ここは意図的に残していたら申し訳ないのですが、1:13でベースだけが鳴るキメの部分で、それ以前のシンセのディレイ部分が鳴っているのが少しもったいないと思いました。そこをミュートしてベースだけにすると、さらに印象が強まるかと思います。
今回はこのようなフィードバックとさせていただければと思います。よく言う言葉ですが“押してダメなら引いてみろ”というのは、音楽を作りはじめてから身に染みて分かるようになりました。自宅でのクラブミュージック制作では、最終的なサウンドが分かりづらいものですが、ぜひいろいろトライしてみてください。皆様からのご応募も引き続きお待ちしております。