ブラック・ミディ『Cavalcade』、Still Woozy『Rocky』 〜エンジニアNagie's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、ブラック・ミディ『Cavalcade』、Still Woozy『Rocky』です。

曲のいろいろなところにギミックがあり
大団円のエンディングかと思いきや……意外な展開が最高

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ブラック・ミディ『Cavalcade』(ビート)

 ブラック・ミディはロンドンを拠点とするロック・バンド。名前の由来は日本のMIDIアートに由来するらしい。さらにボアダムスなど日本のミュージシャンとの親交も深い。今回紹介する曲はポストロック・オルタナ系と呼べるだろうか? つぶれたしょぼい音で、ミックスやサウンド・メイキングというスペック的な格好良さから離れている。しかし音がしょぼい分、本質的な創造性がより際立つのかもしれない。

 冒頭から1970年代かというぐらい古臭くてぐしゃった音。不穏なギター・リフが格好良く、さらに打ち込みのような得体の知れない低音が絡む。なぜか生音であろうストリングスやピアノの音、単純なロック・バンドの編成ではない。曲のいろいろなところにギミックがある。途中のブレイクでポリリズムになるところは“ああ〜カッコいい”と3回ぐらい叫んで絶頂感を味わった。さらに大団円のエンディングかと思いきや……意外な展開が最高でした。

 

ローファイでほろほろと崩れそうな柔らかな音質
メロディもキャッチーでどこか懐かしい雰囲気

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Still Woozy『Rocky』

 次のスティル・ウージーはカリフォルニア出身のシンガー・ソングライター。ローファイでポップなファンク・ロックと呼ぶべきか。刺さった部分は、今までよりもローファイでほろほろと崩れそうな柔らかな音質であること。そこに絡んでくるアナログ・シンセのパッド・コードが、まるで子供のころから使っている毛布ぐらいふにゃふにゃと耳に絡んできて気持ち良いのだ。メロディもキャッチーでどこか懐かしい雰囲気がする。ブラック・ミディの箸休めとして、交互に聴いた。

 

Nagie

【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う