第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、Shmu『The Universe Is Inside My Body』、Iglooghost『Sylph Fossil』です。
ジョン・ケージのテープ・ミュージックを思い出させる
おもちゃ箱をひっくり返したような曲
僕の気に入っているレーベルOrange Milk Recordsで探っていたら偶然出くわしたのがShmu。LAを中心に活動するプロデューサーだ。彼の過去作も掘ってみたが、本作だけが突然変異のように良い。
特に気に入ったのが5曲目の 「(Tech,No Human) memories,thoughts & imaginations exist where?」。音形よりもモチーフに沿ってサンプリング音のフレーズを並べていて、どこかジョン・ケージのテープ・ミュージックを思い出させるような切り張り。おもちゃ箱をひっくり返したような曲だ。ほかの曲にも同様の手法が散りばめられていて、全体的には取り留めの無い感じだが、僕自身がインスパイアされるには十分の才能だと思う。
スタッターのかかったようなリズム・パート、
グラニュラーやレゾネーターで形成された不思議な音の空間
お次は、昨年も紹介したイグルーゴーストで、ロンドンを拠点とするエレクトロニック・ミュージック・プロデューサーだ。前回よりもさらにパワー・アップしていて、僕的に今一番注目しているのでどうしても紹介したい。
本作はダークなスロー・テンポの曲で、低い男声のウィスパーが“悪さ”を漂わせる中、時折天使のような女声を絡ませてくる。そこへ前作『Eœ (Disk•Initiate)』と同様、さりげなくバイオリンなどのクラシック楽器が漂っているのが良い。音の処理がしっかりと“最新技術”なのもよく、スタッターのかかったようなリズム・パート、グラニュラーやレゾネーターで形成された不思議な音の空間。サンプルは、一音一音がしっかりとジェネレートされていて変化がある。僕の好きな音作りだ。
Nagie
【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う