レディ・ブラックバード『Black Acid Soul』、V.A.『シング:ネクストステージ - オリジナル・サウンドトラック』 〜小泉由香's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。小泉由香氏の今月のセレクトは、レディ・ブラックバード『Black Acid Soul』、V.A.『シング:ネクストステージ - オリジナル・サウンドトラック』です。

シンプルながらメリハリのある作り

レディ・ブラックバード『Black Acid Soul』

レディ・ブラックバード『Black Acid Soul』

 レディ・ブラックバードは、LAで活動し注目を集めるジャズ・ボーカリストのニューカマー。待望のデビュー・アルバムはプロデューサーにクリス・シーフリードを迎え、録音/ミックス・エンジニアはセス・アトキンス・ホランが担当しています。ティナ・ターナーやチャカ・カーンに影響を受けた彼女の歌声は、少しハスキーで太く芯がある感じ。ドライな歌のエフェクト処理が、センターに鎮座するダブル・ベースや重めのバスドラにも負けない存在感を保っています。オケの主な楽器はダブル・ベースとピアノ。たまにドラム、パーカッション、トランペットが加わるシンプルな構成で、緊張感やほっこり感などメリハリがあって飽きが来ない作りになっています。

楽曲群が奇麗にまとまったサウンドトラック

V.A.『シング:ネクストステージ - オリジナル・サウンドトラック』(ユニバーサル)

V.A.『シング:ネクストステージ - オリジナル・サウンドトラック』(ユニバーサル)

 映画『シング』の続編で、3月公開の『シング:ネクストステージ』のサウンドトラックには、U2の新曲「ユア・ソング・セイヴド・マイ・ライフ」やビリー・アイリッシュのヒット曲「バッド・ガイ」、ファレル・ウィリアムスが参加した楽曲なども収録されています。こういったサウンドトラックで難しいところは、キャストが歌うプリンスやU2の新録楽曲と、既発のオリジナル楽曲(今回はエルトン・ジョンやマーキュリー・レヴなど)が混ざるところ。そのような楽曲は作業上の規制もあるため、流れで聴感レベルや音色感をどう聴かせていくかとても気を使うのです。全体レベルがちょっと大きい気はしますが、1時間超えの大作で曲のジャンルや歌い手もバラバラな楽曲群を上手にまとめたところはさすがです!

小泉由香

【Profile】マスタリング・スタジオ、オレンジ主宰。音楽愛に裏付けられた丁寧な仕事で信頼が厚い、日本を代表するマスタリング・エンジニア