SNS以降の社会的感覚と親和性が高い
好きに表現している無理していない感じの音
何度かの発売延期を経て、ついにアルバム『仮定形に関する注釈』を発表したThe 1975。マリリン・マンソン化していると話題になった「ピープル」や、ザ・ウィークエンドに追従するように1980年代感を漂わせる「イフ・ユーア・トゥー・シャイ(レット・ミー・ノウ)」など先行リリースされたシングルの時点で素晴らしいと思っていました。そんなシングルを収録した本作では、オーケストラによるインタールードや、2ステップ調の打ち込みの曲なども入って、音楽性はさらにとっ散らかった印象です。しかしそこがSNS以降の社会的感覚と親和性が高いなと思いました。この“好きに表現している無理していない感じ”は音にも表れていて、アレンジやミックスなどすべてが“ちょうど良い”温度です。すご過ぎると聴き手に集中力を要しますが、このアルバムはふとかかっているのを聴いて魅力を感じるので良いなと思いました。
カニエ・ウェストに対する気持ちと同じように
最近のトラヴィス・スコットに期待しています
楽曲のヒットはもちろん、スニーカーやゲームとのコラボ、ドキュメンタリーの放送など無双状態のトラヴィス・スコット。彼がキッド・カディをフィーチャーして「ザ・スコッツ」を発表しました。ローファイ・エフェクトがかかった不穏な雰囲気のシンセに始まり、過剰に倍音を強調したボーカルが聴き手の注意を引きます。共同制作者のマイク・ディーンが演奏したと思われる壮大なシンセのアウトロも含めて、意識の高さが圧倒的です。カニエ・ウェストに対する気持ちと同じように、最近のトラヴィス・スコットに期待しています。
D.O.I.
【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している。