チャイルディッシュ・ガンビーノ『3.15.20』は
派手な印象の音像ながらナチュラルで聴きやすい
先月紹介したザ・ウィークエンドのアルバムは“今年のベストでは”と思える作品でしたが、まさかあの圧倒的なクオリティに匹敵する作品がこんなにすぐ出るとは思いませんでした。チャイルディッシュ・ガンビーノがラスト・アルバムと宣言した『3.15.20』です。もうここ1カ月ぐらいずっと聴いているにもかかわらず、何度も聴いても素晴らしく感じます。まずサウンドが聴いたことの無いレベルで高品質です。音は非常に立体的なのに張り付くような存在感があり、派手な印象の音像ながらナチュラルで聴きやすいです。通常は音を前に出すと奥行きは無くなるし、派手にすると痛い音が増えて聴きやすさは減るので、その相容れない2つの要素が同時に成り立っているのには驚きました。アルバムを通して198 0年代のプリンスの影響を強く感じますが、実は1950年代から1990年代までのさまざまなオマージュが感じられます。アルバムが進むごとにタイム・マシンで過去に連れて行かれるような感じがありました。トラップのようなキャッチーさは無いですが、高い芸術性に圧倒される作品です。
2000年代のポップ・パンクの影響を
カリフォルニアのアフリカ系アメリカ人が受けた珍しい作風
次はジーン・ドーソンのシングル「Power Freaks」。こちらは2000年代のポップ・パンクの影響をカリフォルニアのアフリカ系アメリカ人が受けたという珍しい作風です。幼少期にメキシコで過ごした経歴によるものか、さまざまなカルチャーが入り混じっています。パンクとローファイ・ヒップホップがこの感じで混ざっているのはとても面白いです!
D.O.I.
【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心としながらも、さまざまなプロダクションに参加している。