“デジタル面とアナログ面、双方の良さを生かしたアプローチ それが、SSLの提案するバーチャル・コンソール・システムです”
林氏には、SSL UF1やUF8、UC1をそれぞれ単独でチェックしていただいた後、各コントローラーを同社のアプリケーション・ソフトSSL 360°で統合し、Virtual SSL Consoleとともに各コントローラーやSSL 360°対応プラグインを使用していただいた。このユニークなバーチャル・コンソール・システムの使い勝手ははたして? 早速伺ってみよう。
最大8個のバス・コンプを一括管理可能
林氏がテストする楽曲は、生楽器を中心としたJポップ。構成はドラム、ベース、エレキギター、ピアノ、オルガン、ストリングス、ボーカル、コーラスといった内容だ。
「全部で50〜60trあるので、各楽器にはバスを作成して簡単にミックスしてみようと思います。SSL 360°を立ち上げると、UF1とUF8、UC1をスムーズに認識してくれました」
次に、林氏はSSL 360°内のVirtual SSL Console画面を開く。そして、AVID Pro Toolsのセッションにある各楽器のバスやドラム・パーツなどにSSLのチャンネル・ストリップ・プラグインを挿入。すると、Virtual SSL Console画面にも即座に反映されていく。
「Channel Strip 2と4K Bの両方を交互に試し、良いと感じた方を採用しました。すべてのドラム・パーツにチャンネル・ストリップ・プラグインを挿したのは、ドラムの音を丁寧に作り込みたかったからです」
林氏は、Channel Strip 2と4K Bについてこう話す。
「Channel Strip 2は、XL9000Kシリーズ・コンソールに搭載されているEQ/コンプをモデリングしているだけあり、全体的に音が奇麗です。そのため高域の伸び感を出したいピアノやストリングスなどの上モノやボーカルに使いました。4K Bと比べて細かい機能が多いので、例えばコンプのFAST ATTACK機能を使いたい楽器にも挿していますね。一方、4 KBは伝説的なコンソールSL4000Bのチャンネル・ストリップをモデリングしているため、良い意味でローファイな質感です。僕はそれが面白いと思ったので、主にドラム周りに使ってみました」
続けて林氏は、マスターにSL4000Gバス・コンプをモデリングしたプラグインBus Compressor 2と、メーター・プラグインのSSL Meterをインサートする。
「これらのプラグインをセッション上のチャンネルに挿すと、Virtual SSL Consoleのマスターにもすぐに反映される点が良くできています。またVirtual SSL Console画面右側にはSSL Meterが表示されるだけでなく、Bus Compressor 2を最大8個まで一括管理できるのが画期的だと感じました」
マウスより両手でミックスする方が合理的
次に林氏は、UF1とUF8、UC1を用いてバランスを取りはじめた。UF1のトップ・パネルに備わる4.3インチの高解像度カラー・ディスプレイを見ながらこう述べる。
「僕はメーターを見ながらミックスすることが多いのですが、手元にメーターがあるのですごく助かります。またディスプレイの解像度が高いため非常に見やすいですね。ボタン一つでメーターの種類を切り替えられるのも良いです」
UF1とUF8に搭載されたフェーダーや各ボタンの操作性については、こう語ってくれた。
「もともとSSLコンソールを使っていたこともあり、フェーダーを直に触ってミックスする方が、マウスでやるよりもはるかに合理的と感じます。レコーディングの際はトランスポートやミュート・ボタンをクリックしたり、パンを調整したり、複数のフェーダーを上げ下げしたりといった作業を頻繁に繰り返します。このとき、マウスだと一つずつクリックすることになるので大変手間ですが、UF1とUF8があれば両手を使って一瞬で終わるので非常に楽です。これがフィジカル・コントローラーを導入することの大きなメリットの一つでしょう。滑り心地のよいフェーダーは長さも十分にあるので、オートメーションを書く際にも重宝します」
続けて、UF8のフォーカス・モードについて説明する。
「例えばあるプラグインを立ち上げ、任意のパラメーターにマウス・カーソルをかざします。この状態でUF8のFOCUSボタンを押すと、その真上にあるCHANNELエンコーダーにアサインすることが可能です。これはどちらかというとサード・パーティ製プラグイン向けの機能だと思いますが、例えばひずみ系プラグインのドライ/ウェット・ノブや、ワンノブ系プラグインに用いると非常に便利だと感じましたね」
林氏は、UF8の可能性についても高く評価している。
「UF8はアサイナブル・ボタンを8つ×5バンク備え、ショートカットを登録できるマクロ機能も搭載しているため、非常にポテンシャルの高いコントローラーだと言えます。レイヤー機能も用意されており、3種類のDAWをワンクリックで切り替えながら同時使用することも可能です。使い方次第では非常に強力なDAWコントローラーになるでしょう」
UC1については、UF1のフェーダー操作と同じ点に注目。
「EQ/コンプの各ノブを両手で調整できる点が、とても効率的です。また、プラグイン画面を見るとどうしても細かい値に意識が向きやすいのですが、UC1上だとそれがないため直感的なミックスが行えます。このことから“耳で判断する”というミックスにおける大切な要素を思い出させられました」
最後に林氏は、こう締めくくる。
「今回レビューしたUF1、UF8、UC1、各SSL 360°対応プラグイン、そしてこれらを統括するSSL 360°アプリケーションから成るSSLのバーチャル・コンソール・システムは、デジタル面とアナログ面におけるアプローチの良いとこ取りができるように思います。ぜひ皆さんも、一度体験してみることをお勧めします!」
◎こちらの記事もチェック:SSLが創り出すバーチャル・コンソール・システム 〜SOLID STATE LOGIC UF1+UF8+UC1 with SSL 360°